南国の植物といえば、ヤシの木をイメージする方も多いのではないでしょうか。たしかにヤシの木は南国の代表的な植物ではありますが、ほかにも有名な植物はいくつも存在します。そのひとつが、ヤシの木によく似た「ソテツ」です。
ソテツは、日本では九州南部や沖縄の海岸や岩場で見かける植物です。巨大なソテツの木が風に揺れる様子を見ていると、本当に南国にいるような気分になります。自分でも育てることができるため、ご家庭でも南国気分を味わうことができるかもしれませんよ。
そこで今回は、そしてソテツの剪定方法や歴史、育て方などを解説していきます。初心者でも比較的育てるのが簡単な植物ですので、初めて観葉植物を育てたいという方にもおすすめです。
目次
太古から存在する生きた化石!?ソテツはどういう植物?
ソテツは九州から沖縄にかけての温暖な地方に多く、自生する植物です。海岸沿いやロータリーなどの真ん中にヤシのような木が植えられていることがありますが、それらは実はソテツであることも多いです。
もともと日本原産であるソテツは、昔からお金持ちの象徴として認識されてきました。財力のある大名の家ではソテツを庭に植えることがステータスになっていた、という話もあります。その歴史は非常に古く、樹齢1,000年を超えて天然記念物に指定されている古木も存在するくらいです。
ソテツは生長の遅い植物で、花は約十年に一度しか開花しないとされています。開花の瞬間を見るまでに非常に長い時間がかかりますが、自分の手でソテツを開花させたときの達成感は、生長にかけた時間も相まってかなりのものとなるはずです。
ソテツの名前の由来
「蘇鉄(ソテツ)」という名前の由来は、漢字の通り「鉄で蘇る」と信じられていたからだという説があります。いい伝えによれば、昔はソテツが弱ってきたときの対策として、幹に釘を打ち込んだり根本に鉄粉を埋め込んだりしていたそうです。
しかし、そのいい伝えを実行して本当に効果があったかは定かではありません。なので、ソテツの元気がないからといって本当に釘を打ち込んだりしないようにしましょう。
逆にいえば、ソテツはそういった伝承が残るほど長い間愛されてきた植物ということでもあります。ソテツの剪定がちょっと変わっていたり扱いに注意点もあったりしますが、適切に育てれば健やかに育ってくれるでしょう。
ソテツは食用として親しまれた歴史も
ソテツは10月頃に赤い実をつけますが、この実からでんぷんを採取できます。そのことから、沖縄では観賞用だけでなく食材としても大切にされてきた植物です。また、食べることができるのは実だけではなく、葉っぱや幹の芯の部分を使った料理も存在しています。
たとえば、ソテツの実や幹から採れたデンプンを雑穀やイモなどと混ぜたおかゆが、日常的に食べられてきたそうです。また、鹿児島県の奄美大島や沖縄県の粟国島などでは、ソテツの実を使った「蘇鉄味噌」が調味料として愛されてきたという話もあります。
じつはソテツには毒がある
ソテツは実や幹が食料になるため、飢饉の際には飢えを凌ぐ助けとなった一方で、ソテツは強力な毒をもつ植物としても有名です。毒抜きしないままソテツを食べて中毒症状に陥ってしまい、命を落とした方も少なくなかったという記録もあります。
事実、散歩中の犬がソテツの実を食べて中毒症状を起こす事例も多く報告されています。そして、ソテツの毒抜きは専門的な技術が必要になる困難な作業です。ですので、基本的にはソテツを食べることはできないという認識でいてください。
ソテツを剪定した直後などは、幹の部分がむき出しになっていることも多いです。ソテツは実だけでなく茎などにも毒が含まれています。ですので、小さいお子さんやペットが誤って食べたり舐めたりしてしまわないよう、注意を怠らないでください。
ソテツを剪定するときのポイント
ソテツも植物である以上、定期的に剪定をおこなう必要があるでしょう。もし剪定をしないと、病気にかかるリスクが発生するからです。この項目では、ソテツはいつ剪定するべきか、そしてどこに気をつけながら剪定をすればいいのかについて解説していきます。
ソテツの剪定時期
ソテツの剪定時期に明確な決まりはありませんが、新芽が成長してくる時期がもっとも適しているとされています。ソテツの新芽は幹の上にしか存在しないので、芽吹いているかどうか判断しやすいはずです。剪定の際には、水平より垂れている枯れた葉を切るようにしましょう。
ソテツの剪定方法
ソテツを剪定するときのポイントは「葉の付け根付近を切り落とす」ことです。ソテツの葉は枝からでなく、太い幹から直接伸びています。葉の途中から切断してしまうと、切った部分が変色して見た目が悪くなるので、できるだけ根元から切り落とすのがポイントです。
なお、ソテツが元気に育っていると、幹から「不定芽」という芽が出てくることがあります。見栄えが悪くなるようでしたら、こちらは切除しても問題ありません。なお、不定芽がこぶし大の大きさになったときに切除して鉢に植えると、鉢植えとして新たに育てることができます。
剪定はおもに木の形を整えるためにおこなうものですが、剪定を強めにしすぎてしまうとソテツが元気に育たなくなることも。
自分で剪定をするのに不安を持たれる人は剪定のプロに依頼して剪定を依頼してみてくださいね。
ソテツを育てるときの注意点
もちろん、ソテツを育てるうえで重要なのは剪定だけではありません。育てる環境がソテツに適していないと、うまく育つどころか枯れてしまってもおかしくないでしょう。ですので、ソテツが健やかに育ってくれる環境を作っておくのが大切となります。
ソテツがよく育つ環境
ソテツは強い植物なので、やせた土地であっても生長することができます。しかし、ほかの植物と同様、環境次第では丈夫に育ってくれません。以下のような要素に気を配れば、ソテツは雄々しく育つことでしょう。
気温
温暖な地域で育つソテツは寒さに弱く、気温が5℃以上の環境で育てる必要があります。そのため、寒い地域では防寒対策をしないと冬を越えられません。もし寒い環境でソテツを育てるなら、環境を整えた室内にて鉢植えで育てるのをおすすめします。
日光
ソテツは日光が不足してしまうと丈夫に育ちません。そのため、暖かくなってくる春の頃には屋外に出して、日光に十分当ててあげましょう。
水やり
ソテツは乾燥に強いため、鉢植えであっても水やりは少ない頻度で十分です。完全に土が乾いたと判断したときにだけ水やりをしてあげましょう。とくに冬の時期になると吸水力が弱くなるので、過度な水やりは禁物。土が乾燥してから2,3日後に水やりをするのがよいでしょう。
植え替え
鉢植えでソテツを育てる場合は、3~5年の周期で植え替えをするようにしましょう。暖かい時期に一回り大きい鉢に植え替えれば、ソテツを弱らせることはないはずです。
ソテツを苦しめる害虫
基本的に、ソテツは害虫には強い植物です。ですが、だからといって一切害虫の心配をしなくていいわけではありません。場合によっては、ソテツであっても害虫の被害を受けたりする危険性があるのです。ソテツを苦しめる害虫は、代表的なものでは以下のようなものがあります。
カイガラムシ
カイガラムシは植物の栄養を吸いながら成長する害虫です。繁殖力の強い害虫であり、気づいたら枝にびっしりカイガラムシが寄生していた、なんてことも少なくありません。種類によっては固い殻で殺虫剤から身を守っているので、駆除するのも困難となっています。
もし葉の表面などがカイガラムシに寄生されているのを発見したら、使わなくなった歯ブラシでこすり取るのが有効です。また、5~7月頃だとまだカイガラムシは卵や幼虫の段階なので、カイガラムシ用の防除薬を散布しておくのが効果的となるでしょう。
クロマダラソテツシジミ
東南アジアや南アジアに分布するクロマダラソテツシジミは、近年西日本や関東の各地で発見されるようになりました。この蝶はソテツに卵を産みつけるのですが、ふ化した幼虫は葉を食害してしまいます。産みつける卵の量は多いときで300個を超えることもあるそうです。
クロマダラソテツシジミによる被害はまだ少ないですが、関西地方では毎年被害が発生しているという報告もあります。もし外に出しているソテツの葉にこの蝶がとまっているのを見かけたら、すぐに捕らえて駆除するようにしてください。
また、ソテツは病気にも強いですが、油断しているとペスタロチア病をはじめとする病気にかかる危険性があります。そうしたリスクを回避するためにも、ソテツの剪定は大切なのです。
まとめ
力強い印象のソテツはインテリアとしても人気がありますが、小さな苗のときは部屋のワンポイントとして飾るのもよいでしょう。風通しが良く日当たりが十分確保するなど、環境を整えてあげることが大切ですが、比較的初心者でも育てやすい植物です。
ソテツを剪定する際は、葉の根元から切り落とす点や、時期に注意しましょう。剪定のポイントをおさえることで、ソテツを美しく育てることができるはずです。
なお、ソテツの剪定は一般的な植物の剪定とはかなり異なります。ソテツのときと同じような感覚で庭木の剪定をおこなってしまうと、逆に木を弱らせてしまいかねません。もし庭木の剪定をおこなう際には、剪定業者に剪定を依頼するのも手段です。
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