テレビの映りが悪いときに確認したい。原因は放送の仕組みにある?

2023.11.17

テレビの映りが悪いときに確認したい。原因は放送の仕組みにある?

テレビの映りが悪い理由はさまざま。しかし私たち自身で解決できる部分もあるといわれています。じつはテレビの映りが悪い理由としては

・不安定な受信レベルである

デジタル放送に完全移行した現在、これがほとんどの要因を占めます。デジタル放送ではノイズ対策がおこなわれており、一定の受信レベルを切らなければ受信できることが多いことが理由。受信アンテナの向きがずれている、ブースターや分配器の数・配置・設定などに問題がある、設備の老朽化など、受信レベルの不安定さの原因となるものはさまざま。原因をひとつひとつ探っていきましょう。

楽しみにしていたテレビ番組、しかしいざ見ようとテレビを点けてみたらとても見られるような状態ではなかった。そんな経験はありませんか。テレビの映りが悪いことでイライラしてしまわないよう、あらかじめ問題が起こったら解決しておくことが肝心です。

ところで、なぜテレビの映りは悪くなるのでしょう。今回は現在のデジタル放送が映る仕組みに触れながら、その原因を深掘りしていきたいと思います。

意外と知らない。デジタル放送が映るまでの仕組み

2000年にBS、2003年に三大都市圏で地上波放送が始まったのを皮切りに放送のデジタル化が進み、2012年までに日本全国でデジタル放送に一本化されました。そして2018年には新たなBS放送・BS4K/8K放送が始まっています。しかし意外と、どうやってテレビに映像が映っているか知らない方もおおいのではないでしょうか。

そこでまずは「デジタル放送が映るまでの仕組み」をご紹介していきましょう。映りが悪い原因のヒントが見つかるかもしれません。

放送局から電波として発信されるまで

放送局で1つの番組としてまとめられた映像は「マスター」と呼ばれるところから、実際に電波を発信する「放送所」に向けて送られます。放送所から電波として送信されるわけですが、このとき映像はそのままの形ではなく「データ」として圧縮されることがポイントです。

映像は赤・緑・青それぞれの変化によって表すことができます。そのためアナログ放送のときは映像を直接信号の強さに変換し、電波に載せていました。しかし一度に載せられる容量には限りがあり、しかも何らかの要因で信号が変化してしまうと「ノイズ」として現れやすくなっていたのです。ビルによる反射で電波が二重に受信される「ゴーストノイズ」などが代表的な例といえるでしょう。

デジタル放送では一度データとして圧縮することで従来のアナログ放送より高品質化を実現させました。加えて「誤り訂正符号」というものが一緒に送信されているなど、ノイズにも強くなっています。

ただ電波は「強く出しすぎると周辺の機器障害・電波障害を起こすおそれがある」ことから、放送所で発信する電波の強さ、そして受信範囲には限りがあります。また電波など「波」には回り込みをする性質があるものの、山影などではどうしても満足な強さを得られないことも。そのため「小高い山」など受信しやすいところに中継局を設置、そこで受信した電波を「再送信」することでテレビを見られるようにしている地域も多いのです。

なお、放送所や中継局からはUHF帯と呼ばれる電波の一部(470~710MHz)を利用して電波が発信されています。アナログ放送のときはVHF帯の一部(90~108MHz・170~222MHz)や、UHFの710~770MHz帯も利用されていました。

一方BS放送の場合は東京・渋谷にある「アップリンクセンター」というところからパラボラアンテナを利用して東経110度の赤道上にある放送衛星へと送り、放送衛星から日本周辺に向けて電波を発信しています。この際の周波数は11.7~12.2GHz(SHF帯・マイクロ波の一部)と高いものです。

アンテナで受信してテレビにたどり着くまで

こうして発信された電波はアンテナを通して各家庭で受信されます。その電波はアンテナ線を「電気信号」として送られ、受信したいテレビへとたどり着くのです。ただ複数の部屋でテレビを見られるようにするため、分配器で配線を分けていくことが一般的になっています。一方で信号が弱くなってしまうことから、ブースター(増幅器)で信号を強くすることも。実際、地上波アンテナと一緒にブースターが設置されている場合も少なくありません。

なおBS放送の場合は10GHz以上と送信される電波の周波数が高く、そのままアンテナ線を通してしまうと急激に劣化してしまいます。このことから「コンバーター」で地上波より少し高い帯域まで(BSデジタル放送は1,022~1,522MHzへ)周波数を落とすのです。変換するには電力が必要なため、BS受信にはアンテナの電源をテレビから送る必要があります。

テレビでの処理

放送所から「データ」として送られてきた信号は、そのままでは映像として映すことができません。そのため一度テレビで信号を変換(展開)して、映像に戻すという処理をしています。この「圧縮→展開」という処理の都合から、デジタル放送にはタイムラグがあるという性質を持っているのです。

また日本国外での視聴制限および著作権保護のため、有料放送だけでなく無料放送も暗号化して放送をおこなっています。暗号化を解くカギが納められているのがB-CASカード(BS4K8K放送対応テレビ・チューナーは内蔵されているACASチップ)なのです。

このことを踏まえ、テレビの映りが悪い原因を探ってみましょう。

いきなりテレビの映りが悪い!まずは基本を見直そう

映りが悪い原因①:テレビの映りは天候で左右される?

電波は周波数が高くなるほど多くの情報を載せることができますが、一方で大気などに吸収されて弱くなりやすい、回り込みにくくなるという性質を持っています。とくにBS放送のマイクロ波は天候の影響を受けやすいといわれており、「空気中に電波を吸収する水が多く浮かんでいる」大雨の際などには受信できなくなることもあるのです。比較的周波数が低い地デジでも影響を受ける可能性は否定できません。

じつはBS放送の場合、アップリンクセンターと呼ばれる地上→放送衛星の設備も悪天候に備えて埼玉県久喜市に副局が、積乱雲発達によるゲリラ豪雨など、関東地方に悪天候が発生しやすい「夏」に運用される緊急局が千葉県君津市に置かれています。

ただしよほどの悪天候でない限り、多少の強い雨ではテレビの映りに影響が出にくいともいわれています。雨でテレビが見られなくなるような状況の場合、アンテナの受信している電波が弱いのかもしれません。次の章で取り上げるアンテナ調整や、受信精度の高い1回り大きなアンテナへの交換を検討してみてください。

映りが悪い原因②:実はアンテナの方向が間違っている?

テレビの受信に使われていることの多い骨状の「八木アンテナ」・円盤状の「パラボラアンテナ」はどちらも指向性の高いアンテナです。簡単にいうと「方向が合っていれば弱い電波でも受信できる」が、「方向がずれると途端に受信しにくくなる」という性質を持っています。そのためテレビの映りが悪いときにはアンテナの方向調整をすることも考えたいところ。

それとともに電波を有効利用するための「偏波」とアンテナの関係も頭に入れておく必要があるかもしれません。

電波を有効利用する「偏波」とアンテナの関係

波というのは方向があります。たとえば地震波では押し引きによる「P波」と横にずれる「S波」の2種類が知られています。この2つは別々の要因で生まれますが、干渉することなくそれぞれが「揺れ」として伝わってくるのです。

【水平偏波と垂直偏波】

地上波放送(地デジ)では左右方向の波(水平偏波)が多く利用されています。しかし一部では上下方向の波(垂直偏波)の利用も進んでいるのです。

中継局では基本的に「一度放送所の電波を受信し、再発信する」という性質上、そのまま電波を送りなおすことができません。そのため別の周波数に変換されることが多く、テレビ用の周波数が実際の利用に比べて多く取られている要因でもあります。ただ「左右の波」と「上下の波」は干渉しにくいことから、上下の波(垂直偏波)に変換し、同じ周波数で発信する中継局も増えてきているのです。

ただし八木アンテナの指向性は波の方向にも影響しています。このため垂直偏波を受信する場合、アンテナの骨部分を縦に向ける必要が出てくるのです。また中継局に向けて角度を付けることも多く、一般的なアンテナのイメージとは異なるかもしれません。

【BS放送の旋円偏波】

BS放送も「電波」である以上、方向性を持った電波であることには変わりがありません。ただしその波は「円を描いて回るもの」。これを「旋円偏波」といいます。旋円偏波には右回り(右旋円偏波)、左回り(左旋円偏波)の2種類があり、これは水平・垂直と同様「同じ周波数を2回使える」ということ。実際にBSの物理チャンネル(周波数によって分けられたチャンネル)は奇数チャンネルが右回り・偶数チャンネルが左回りに割り当てられ、交互に重なるように周波数が割り当てられています。

これまでのBS放送では右回りの電波のみを利用していました。しかしそのままでは4K8K放送のための十分な領域を確保できず、もともと韓国・北朝鮮に割り当てられていたものの利用されていなかった「左回り」の電波を活用することになったのです。しかし従来のBSアンテナでは左回りの電波受信を考慮していないため、「トランスポーダー」が対応していません。またアンテナ線は電気信号、つまり「偏波」を付けられないことから右回りの電波と混ざってしまいます。そのため「左回りの偏波用にトランスポーダー」を追加したのが「4K8K放送用アンテナ」です。

ただしこの変換の都合上、新たな電波干渉(ノイズ)の問題が生まれてきました。この問題については次の章で解説します。

地デジ化でアンテナを向ける方向が変わっているかも

もうひとつ見直しておきたいのが「地デジ化のときにアンテナ方向が変わっていないか」ということ。とくに「地デジ化でテレビを買い替えたとき、自分で設置した」という方は注意が必要かもしれません。

テレビ受信の仕組みで見たように、デジタル放送ではノイズに強い仕組み、つまり多少受信強度が低くてもある程度受信できる仕組みが作られています。

一方で一時期アナログ放送とデジタル放送が共存していた期間があり、アンテナ設置場所の関係から放送所や中継局が別の場所に設けられた例も少なくないのです。このことで「一見受信できているように見えても、実は調整が不十分」な例も見られます。

【首都圏の例:東京スカイツリーへの移行】

首都圏(関東広域圏)での地上デジタル放送は当初、東京タワーの250~270m地点に設置されたアンテナから送信されていました。しかし東京で高層ビルが林立するにしたがって電波が届きにくい地域が生まれてきたため、2013年5月からは高さ634m・東京スカイツリーからの送信に切り替えられています。このことで東京都内を中心に、UHFアンテナを向ける方向が大きく変わりました。

【中京圏の例:地デジで瀬戸デジタルタワーに】

中京圏の場合、これまでのアナログ放送を送信していた「名古屋テレビ塔(VHF5波)」「中京テレビ鉄塔(UHF2波)」ともスペースや設置のための強度に余裕がありませんでした。そのため新規に「瀬戸デジタルタワー」を建設し、新たな送信所として活用しています。

なお当時はアナログ放送が並行しておこなわれており、方向が大きく変わるエリアでは新規にUHFアンテナを設置することも多かったといわれています。

それ以外にも中継局によっては「アナログ放送とは別に中継局を設置した」「カバーできる範囲が広がったため一部中継局を廃止した」という例があります。これらのことから、「実は向けるべきアンテナの方向が変わっていた」ということが少なくないのです。

しかし地デジはノイズに強い性質から、放送所からある程度近い地域を中心に「アンテナ方向が真逆でも映ってしまう」ことも。ただ安定した受信とはいいきれず、チャンネルによっては映らないなど問題を抱えていることも少なくありません。

そのため一度家庭のアンテナで向けている方向が「実際に電波が来る方向か」を確認してみてください。とくに八木アンテナの指向性を高めた「パラスタックアンテナ」を利用している方は注意が必要になってくるでしょう。

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映りが悪い原因③:実は性能不足?アンテナ配線を見直してみよう

アンテナやアンテナ配線に関わる機器についても技術開発が進められており、性能が向上してきています。一度アンテナの配線回りを見直してみて、最適な受信状態になるよう交換してみましょう。

BSアンテナやブースターに電源が供給されているかを確認

電波を受信するだけのアンテナ設備に電源は必要ないように思えますが、BSアンテナでは周波数の変換、そのほかの場合でもブースターで一度電波を増幅させていることがほとんどです。そのためこれらの機器に電源が供給されているか、確認してみましょう。

【BSアンテナの電源はテレビから供給】

BSアンテナの電源供給の仕組みは少し特殊です。じつはアンテナ線を通じてテレビから15Vの電気を供給するようにできているのです。テレビ側の設定項目も「オン(常に供給する・テレビをつけているときだけ供給)」「オート(テレビをつけているときだけ供給・BS放送を見ているときだけ供給)」「オフ(供給しない)」と意味合いが変わることも多く、設定には注意が必要です。

また分配器やブースターには「1つの端子だけ電源供給ができる」タイプがあります。迷ったら「全端子通電型」を選ぶのが無難といえるでしょう。

S-4CFB・S-5CFBといったケーブルを使用しよう

アンテナから受信した電波は、アンテナ線を通る間に少しずつ小さくなっていってしまいます。これはアンテナ線にも少なからず「電気抵抗」があるためで、あまりにも小さくなってしまうとテレビの映りが悪いなど、受信が不安定になる要因のひとつになるのです。

アンテナ線の性能を決めるのがケーブルにかかれた「5C」などの数値。先ほど紹介した通り周波数が高いほど電波は吸収されやすいものです。これはアンテナ線でも例外ではなく、高い周波数帯を利用するBS放送を受信したい時にはそれに見合ったケーブルが必要になります。

家庭ではS-4CFB・S-5CFBといったケーブルが適しているといわれています。とくに古い住宅の場合はどのようなアンテナ線を使用しているか、一度確認してみたいところでしょう。ただし壁の内側の配線の場合、確認は困難であることも。

ノイズが入りにくい接続方法に交換しよう

地上波のみが放送されていた時代は周波数も低く、壁のアンテナ端子には導線をねじ止めする「直付け端子」や平型の「フィーダー端子」が利用されていました。しかしこれらの端子はBS放送の周波数に対応しておらず、ノイズも入りやすい構造になっています。こうした端子を使っている場合はアンテナ配線工事を検討する必要があるかもしれません。

またBS4K8K放送で使用される左旋円偏波がアンテナ線を通るときに変換される帯域(2,220~2,470MHz)には電子レンジやWi-Fiなど多くの家庭用無線機器が利用する2.4GHz帯が含まれています。テレビ配線がWi-Fi機器などに影響を与える可能性・電子レンジやWi-Fi機器がテレビの受信に干渉する可能性も考えられるのです。このため分配器の空き端子にはターミネーターと呼ばれる終端抵抗を取り付けるなど、ノイズの出入り口をふさぐ対策が不可欠です。

ブースターの数を見直してみよう

ブルーレイレコーダーやパソコンに接続するテレビチューナーなども増え、分配器の先に分配器をつなぐといったことも多くなってきました。そのため1つ当たりの電波が弱くなってしまい、ブースターを設置する必要が出てくることもあるのです。

ブースターはノイズの影響を小さくするため「できるだけアンテナに近づける」のが基本です。できればアンテナ近くのブースターを調整し、それでも不足するのであれば壁のアンテナ端子の次にブースターを接続するようにしましょう。また不要なブースターや分配器を介していないかも確認してみてください。

映りが悪い原因④:アンテナ設備が老朽化している?

アンテナやアンテナ配線・ブースターなどの機器は経年劣化により性能が落ちていきます。10年以上アンテナ関係の工事をおこなっていない、配線をいじっていないという方はとくに劣化を疑ってみましょう。

とくに八木アンテナ自体には電源部がないため、劣化を感じることは少ないかもしれません。しかし取り付け部が劣化してアンテナ自体が傾いたり、直後のブースターの劣化により電波の増幅が不十分になっている可能性も考えられるのです。とくにアンテナ直後のブースターはアンテナに直接取り付けられている、屋根裏に設置されているなど手の届きにくい場所にあることも多いです。アンテナ工事のプロに依頼して点検してもらうことも考えてみてください。

その他テレビが映らない原因と対処法については、こちらの記事を参考にしてみてください。

テレビの映りが悪い見直したいこと―ケーブル編2

まとめ

テレビの映りが悪い理由はさまざまですが、テレビがどうやって映るかを知っておくと解決方法についても見えてくることは少なくありません。一度家のアンテナ設備を点検して、今の受信状況に適しているか、より改善することはできないかを検討してみることが大切になってくるでしょう。

しかし高所にあるアンテナ、場所によってはブースターなどの周辺機器も点検には困難を伴います。一度アンテナ工事のプロに相談し、受信設備の問題解決につなげていくのも検討してみてください。

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