みなさんは殺人ダニという言葉を聞いたことがありますか。そのことばの響きだけでもおそろしさを感じる方はいるでしょう。ダニには家の中にいるダニと外で活動するダニがいますが、もし家の中のダニに殺人ダニが発生したら恐いですよね。
そこで今回は殺人ダニとはどのようなダニなのか、噛まれるとどのような感染症になる危険性があるかという殺人ダニの基本的な情報とともに、殺人ダニによる過去の事例や殺人ダニに遭遇しないための方法などをご紹介していきます。
「殺人ダニ」の正体は? -なぜ殺人ダニと呼ばれているのか
殺人ダニと聞くとかなり恐い印象ですが、なぜ殺人ダニと呼ばれているか、正体は何なのか解明していきましょう。
殺人ダニと呼ばれているのはダニの仲間であるマダニです。ほとんどのダニは肉眼では見えませんがマダニは2~3mmほどの大きさなので肉眼で確認することができます。屋外に生息し山の中の茂みや草むら、畑、河川近辺に生息します。都市部でも草陰に潜んでいることがあります。
ではマダニが殺人ダニと呼ばれる理由は何でしょうか。その答えはマダニが媒介する感染症にあります。
マダニは日本で発症した場合の致死率が約20%といわれる「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」など、さまざまな感染症の媒介者となります。ただしSFTSウイルスでも0~数%の保有率であり、マダニに噛まれたからといって必ず感染症に発症するというわけではありません。
マダニはハーラー器官という感覚器をもち、哺乳類の二酸化炭素のにおい・体温・体臭などを検知して、人やペットに寄生します。マダニは皮膚が薄い部分を探して吸血し、唾液から麻酔のようなものを出すので噛まれてもすぐには痛みやかゆみは感じません。しかも1週間以上吸血し続け、そうなるとマダニの体重は100倍以上、体長は1㎝をこえるほど大きくなります。

殺人ダニによるおそろしい感染症
殺人ダニが媒介する感染症にはどのようなものがあるのでしょうか。多くの感染症になる恐れがありますが、その中でも重症化しやすいのが重症熱性血小板減少症候群です。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は6日~2週間の潜伏期間を経て発熱・食欲低下・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛・筋肉痛・意識障害・皮下出血などの症状を発症し、重症化すると死亡することもあるおそろしい感染症です。SFTSには今のところ対症的な方法しかないことも影響しています。
この他にもマダニが媒介する感染症は下記のようにたくさんあります。
・日本紅斑熱
・Q熱
・ライム病
・回帰熱
・ダニ媒介性脳炎
これらの感染症はマダニに噛まれて感染する場合と感染した人の体液に触れて感染する場合がありますのでどちらも注意が必要です。
殺人ダニに関する死亡事故も…
殺人ダニに直接噛まれなくても感染症を発症して死亡してしまう事例が日本で発生しました。
この事件は私たちの身近な動物から感染症を発症したため世間にも衝撃がはしりました。
これは西日本に在住の女性が野良猫に噛まれて、マダニが媒介する感染症により死亡してしまった事件です。女性がマダニに噛まれた跡はありませんでしたが、体調不良の野良猫に噛まれたことでSFTSを発症したと考えられています。
またSFTSに感染した飼い犬が体調をくずし、その体液を経由して看病をしていた男性がSFTSを発症した事例もあります。マダニからだけではなく身近な動物からも感染する場合がありますので、動物を触ったあとは手洗いをする、手袋などをつけて触る、など感染予防を心がけましょう。

殺人ダニに遭遇しないためには
これまで殺人ダニにかまれて過去5年(2018年1月時点)で60人が死亡しています。SFTSを発症した人は西日本を中心としていますが、マダニ自体は全国に生息し、東日本のマダニでもSTFSウイルスなどを保有していることが確認されているのです。では、殺人ダニに遭遇しないためにどのようなことに注意したらよいのでしょうか。
マダニは草や木の多い場所に多く潜んでいます。そのため、野山に立ち入らないことが1番です。しかし、どうしても野山に入らないといけない場合にはいくつか対策できることがあります。まず服装は肌を露出しないように長袖・長ズボンを着用し、シャツの裾はズボンへ、ズボンの裾は長靴の中に入れるようにしてマダニが入り込む隙間をなくすことが重要です。
草むらなどでつい座ったり寝そべったりしたくなりますが、草むらに座るときはシートを敷くなどして直接肌と接しないように気をつけ、あらかじめ防虫スプレーをしておくのも有効です。さらに野山に入った後は入浴をしてマダニがついていないか確認をしましょう。
もしマダニに噛まれてしまったら次のことに気をつけましょう。マダニは突起物を体に差し込み唾液で固定して吸血しますので、無理に引き抜くとマダニの頭部や突起物が体内に残ってしまい感染症になることがあります。また、マダニをつかむとマダニの体液が逆流して体に入ってしまうので危険です。マダニに噛まれていることがわかったらすぐに医療機関に相談しましょう。
まとめ
マダニが殺人ダニといわれている理由はマダニに噛まれることで発症する感染症のなかで致死率が高いものがあるためでした。特にSFTSは治療法がないのでとても恐い感染症のイメージが強いでしょう。
ウイルスをもったマダニは様々な感染症を媒介します。ウイルスをもったマダニに吸血されることで感染症を発症する危険性があるため日ごろからマダニに遭遇しないようにすることが重要です。
マダニに遭遇しないためには野山に立ち入らないのが1番ですが、もし入る場合は服装などに気をつけてマダニに噛まれないようにすることが大切です。
しかし、ご家庭で駆除や予防をする場合、やり方があっているのかわからないときもありますよね。ダニの被害に困ってしまうときは一度、プロに相談をしてみることで解決に向かうかもしれません。
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