鍵屋でなければ持てないピッキングツール!その秘密と正体に迫る

2023.9.12

鍵屋でなければ持てないピッキングツール!その秘密と正体に迫る

念には念を入れていても、鍵を失くしてしまうというのは意外とよくあることです。また突然鍵の調子が悪くなった、なんてことも。そんなとき、頼りになるのが鍵屋でしょう。

鍵屋はピッキングツールやそのほかさまざまな道具を組み合わせ、開かなくなった錠の鍵開けに挑みます。一体どんなツールを使っているのか、少し気になりませんか。今回はピッキングツールを中心に、鍵屋の持つ道具の秘密と正体を解き明かしていきます。

目次

鍵屋の七つ道具、ピッキングツールとは

鍵屋はさまざまな道具を使って鍵開けに挑みますが、その中でも独特であり、かつ中心となるのが「ピッキングツール」と呼ばれるセットです。

鍵の性質を利用し、鍵を使わず錠前を開ける道具

通常、錠前(鍵穴)を開けるためにはそれに対応した鍵を使います。簡単にいうと、錠と鍵が1対1で対応しているというわけです(利便性を高めるため、実際には複数の錠に対応した鍵・複数の鍵に対応した錠もあります)。そのため本来、鍵がなければその錠を開けられません。

一方で、ほとんどの錠前には電源がありません。じつは機械的に鍵と錠前を合わせており、一致したときに鍵穴が回る仕組みになっているのです。ピンシリンダーがその代表例。錠前に差し込んだ鍵の形をピンによって読み取り、あらかじめ設定された形に合うことで鍵穴が回り、ロックが外れる仕組みになっています。

すると理論的には「錠前の対応部分を押さえることで、鍵穴が回る」ということ。それを実現させるのがピッキングツールというわけです。

鍵の特性ごとに複数のツールを使い分ける

とはいっても簡単に開けられるようであれば鍵の意味を成しません。そのため鍵の内部はメーカーや品番ごとに異なるほか、簡単には開けられない工夫がされています。この工夫を克服するため、ピッキングツールは先端の形が異なる複数のものを使い分けるのです。また鍵穴のピン配置を知り、合鍵を作るためにも必要な不可欠な道具。鍵の構造をどれだけ知っているかの技術面も必要になってくるでしょう。

ピックとテンションの組み合わせが重要

シリンダー錠をはじめとする近年の鍵は角度こそさまざまですが、開錠には「鍵穴を回転」させることが必要です。そのため鍵穴に合わせた「ピック」だけでは開錠できず、回すための器具を一緒に使う必要があります。この「回す」役目を果たすのがピンセット状の「テンション」というツールです。

また車のドアには雨が浸入しないよう、鍵穴に「シャッター」という覆いが取り付けられています。テンションはこのシャッターを固定する役割を果たすことが多いです。

ピッキングに使われる道具にはどのようなものがあるの?

鍵の特性とピッキングツール

鍵にはメーカーや種類ごとにそれぞれ特徴があり、ピッキングツールを使い分けていく必要があります。とくに種類ごとの特性とはいったいどのようなものでしょうか。まずはピンシリンダーから確認してみましょう。

ピンシリンダーの特徴

錠前の内部にはピンと呼ばれる、鍵の形状に合わせて上下する部品が多く組み込まれています。このピンは外側からばねによって内側に押し付けられており、鍵が入ることによって形状に合わせて上下します。一方でピンには切れ目があり、一致する鍵であればその長さが内側の筒部分と同じになるのです。

こうしてすべてのピンの長さと鍵の形状が一致し、内側の筒と外側を固定するピンがなくなると鍵穴が回ります。逆に、その長さにピンを押さえてしまえば鍵は開錠できるということ。ピッキングツールはこうしたピン合わせをするために使われます。

ピンの方向を組み合わせることで鍵以外での開錠を困難に

ピンシリンダ―錠と呼ばれる鍵ではピンは片側しかついておらず、ピッキングツールを使わなくても針金などを使えば開錠できてしまいました。しかし、

・ピン自体を増やす(鍵の形状を複雑にするなど)
・ピンの方向を増やす(鍵のギザギザ(山)を両側に付けるなど)
・ピンの方向を工夫する(鍵のギザギザを立体的にする、表面に付けるなど)

こういった工夫をすることで専用の鍵以外では開錠できない、ピッキングツールでの開錠にも時間がかかる鍵が生まれてきたのです。その1つがディンプルキーと呼ばれる、鍵の表面に小さな凹凸のついた鍵です。

ディンプルキーのピッキングツールは開発されている

ディンプルキーはピッキングが困難といわれていますが、それは不可能、というわけではないことに注意しておきましょう。現にディンプルキー用のピッキングツールは開発されており、鍵開けに対応した業者も出てきています。

ただディンプルキーは専用のピッキングツールを使用しても専門的な知識と技術が必要で、鍵開けに時間もかかります。たとえ鍵屋であっても、ディンプルキーは鍵穴以外から開錠を試みるケースが多いのです。

つまり空き巣にとってディンプルキーは鍵開けが困難かつ時間がかかる鍵で、狙いにくいということ。防犯性が高い鍵であることに変わりはありません。

タンブラー錠の特徴

同じ鍵の形状を読み取る部品でも、棒状のもの以外は一般的に「タンブラー」と呼ばれます。とくに鍵を差し込む穴が開いているものは「ディスクタンブラー」と呼ばれることも多いです。

内部構造が単純なディスクシリンダー錠

ディスクシリンダー錠は鍵の形状に合わせてタンブラー部分が上下するようになっており、正しい鍵を差し込むとすべてのタンブラーが内側に収まって鍵穴が回る仕組みとなっています。ただ「出っ張っているか」「引っ込んでいるか」の2パターンになってしまうため、ピッキングで開いてしまいやすいという特徴も。結果空き巣に狙われる鍵となってしまい、今では販売終了しているメーカーがほとんどです。

鍵の形状を鍵穴から読みとりにくいロータリータンブラー錠

ディスクシリンダーの弱点を克服するため、鍵穴から開錠の動きを見えにくくしたのがロータリータンブラー錠です。ピンのようにずれる大きさを鍵のギザギザとして付けることができるため、ピッキングしにくい鍵へと生まれ変わったといえるでしょう。

なおこちらもピッキングツールでのピッキング自体は不可能ではないものの、鍵のギザギザの深さを読み取る必要があるため時間がかかります。そのため空き巣によるピッキング対策としては強い鍵です。

ピッキングツールで対応できない鍵

ピッキングツールは鍵穴に合わせてピンやタンブラーを動かすことで、鍵なしでの開錠をおこなう道具です。その特性上、ピッキングツールでは開錠できない鍵も存在します。たとえば次のような鍵があげられるでしょう。

磁力を使用した鍵

鍵に磁石を組み込み、鍵が回転する途中に磁力でロック部分を操作するものがあります。ピッキングツールで鍵の形状を合わせることはできるものの、ロックが外せないため開錠も困難です。

電磁錠

厚手の金属板と電磁石の組み合わせで鍵が構成されているほか、開錠もICカードリーダや番号入力などで照合し、成功したときはじめて電気信号が送られることで実現します。鍵穴自体がないことも多く、ピッキングという概念が成り立たないといえるでしょう。

鍵開けに使われるそのほかのツールって?

鍵屋の鍵開けではピッキングツール以外にもさまざまな道具を活用しています。これらのツールも簡単にご紹介します。

ファイバースコープ

鍵開けはピッキングツールの手触りで手がかりをつかむことが多いですが、ときには錠の内部自体を直接確認することも。このとき使用されるのがファイバースコープと呼ばれる、鍵穴に差し込める小さなカメラです。近年はスマートフォンなどで映像を確認できるものも増えているようです。

ピックガン

ピンシリンダーのなかには、ピンへ同時に衝撃を与えることで鍵開けができるとされるタイプがあります。この衝撃を与えるために使うのがピックガンです。

ウェッジ・プライヤー・オープナー

鍵穴からの開錠が困難な場合、内側のサムターンを回して鍵開けをすることがあります。このとき、ドアの隙間を広げるのが「ウェッジ」とよばれる器具です。

とくに多くの集合住宅ではドアを開ける前に相手を確認できるよう、ドアスコープが設けられています。このドアスコープを外すための器具が「プライヤー」と呼ばれるもの。ウェッジやプライヤーで作った入り口からマジックハンドのように「オープナー」を伸ばし、サムターンを回します。

エクストラクター

鍵が途中で折れたなどのトラブルに対応するときにはまず、途中で詰まっている鍵の破片を取り除く必要があります。この取り除くための専用器具が「エクストラクター」です。

オートダイヤラー

ダイヤル式金庫の開錠風景として、金庫に耳を当ててわずかな音を聞き分けるイメージを持っている方は多いでしょう。しかしこれは鍵開けのプロでも熟練のみのなせる技で、誰しもができるわけではありません。代わりに真正面から、つまり番号総当たりでおこなうことも多く、その作業を自動化してくれるのがこの器具です。時間こそかかりますが、金庫への負担を最小限にできることからその後も使い続けることができることでしょう。

ドリル

どうしても鍵が開かない場合、交換が可能な錠部分を直接破壊して開錠を試みることがあります。そのため、金属用のドリルを鍵屋が準備していることも多いです。

キーマシンとブランクキー

鍵を失くしたときの鍵開けの場合、開錠に成功した後は鍵穴に合わせた鍵を作成する必要があります。そのカギを作る機械がキーマシン、鍵のギザギザ(山)や凹凸を付ける前の状態の鍵が「ブランクキー」と呼ばれるものです。

「正当な理由がない」ピッキング道具の所持は違法!

ただし鍵屋以外のピッキングツール所持は違法!

道具箱に付けている南京錠の鍵を中に閉じ込めてしまったなど、鍵開けが必要だが鍵屋に依頼するまでは……と思ってしまうことは意外と少なくありません。ピッキングツールなど、鍵屋が使う道具が手に入れば自分で開錠できるので楽、と思っている方もいるのではないでしょうか。

しかし鍵屋以外のピッキングツール所持は法律で禁じられています。その根拠となるのが「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(通称:ピッキング防止法)」です。

ピッキング防止法とは

本来は紛失の鍵開けなど、善意で使われるよう発展してきたのがピッキングの技術であり、ピッキングツールです。しかしその技術が空き巣など悪意目的に利用され、私たちの生活に被害を与えるようになってきました。この状況を是正するため、ピッキング技術を適切に管理し悪用されないよう定められたのがピッキング防止法です。

通称の「ピッキング防止法」という名前を聞くと誤解しがちですが、これはピッキングという鍵開け行為自体を規制するものではありません。しかし近年の鍵、とくに玄関鍵はピッキングツールなしでは開けることが難しい構造となっており、ツールの規制および防犯性の高い鍵への交換を進めれば空き巣などによるピッキング被害を抑えることができます。またピッキング行為自体を規制してしまうと「必要な鍵開け」と技術開発ができなくなるという側面も大きいでしょう。

業務など正当な理由以外でのピッキング用具など所持禁止(第3条)

ピッキングツールと関わるピッキング防止法の重要な条文が第3条と第4条です。このうち第3条では次のものを「特殊開錠用具」として、業務など正当な理由以外で所持することを禁じられています。逆にいえば、業務として鍵開けをおこなう鍵屋は所持することが認められています。

【ピッキング用具】
ピッキングツールをはじめとした、ピッキングのために開発された道具です。

【ホールソー(板に穴をあける道具)のシリンダー用軸】
シリンダーを破壊(破錠)するためのドリルです。とくにシリンダーは内部構造が複雑なほか、耐久性を持つよう作られていることから特殊な軸が使われます。

【破壊用シリンダー回し】
鍵穴に差し込み、無理やりシリンダーを回して鍵を開ける道具です。手早く開けることを目的とする空き巣ならではの道具といえるでしょう。

【サムターン回し用器具】
ドアに開けた穴から入れ、内側のつまみを回すための器具です。先ほど取り上げた道具のうち「オープナー」に該当します。

所持した場合、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金

これらの特殊開錠用具を業務などの理由以外で所持した場合、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金という罰則が定められています。また正当な理由を持たない人への「販売」にも罰則が設けられているため、ピッキングツールの販売店では身分証の確認、必要に応じて開業届などの確認などがおこなわれているのです。

ピッキングツール以外で鍵開けはできるの?

では、ピッキングツールなど「特殊開錠用具」以外を使った鍵開けはできるのでしょうか。

実際のところ、簡易的な錠に限られる

鍵は機械的な組み合わせが多く、また針金やヘヤピンなどを曲げて鍵開け用の道具として使うこと自体は規制されていません。そのため理論上からいえば「不可能ではない」といえるでしょう。

しかし近年の鍵、とくに玄関などに使われる鍵は防犯性を高めているため、簡易的な道具で開けることは非常に困難といえます。一方簡易的なもの、スーツケースやジュエリーボックス・南京錠の鍵などは鍵のパターンが限られていることもあり、針金などで自分で開けることも無理なことではありません。

とはいっても自分の持ち物以外の鍵を開けるのはさまざまな問題を生む原因となります。また無理やり開けることで鍵を壊してしまい、かえって開かなくなることも。あくまで非常時、最悪の場合壊してでも開ける、という覚悟を持っておく必要があるでしょう。

ここまでご説明したように、鍵を使わない鍵開けは難しく、素人が簡単にできる作業ではありません。お困りの際は、ぜひ生活110番までお問い合わせください。全国24時間365日【受付】対応可能です。いつでもお気軽にお問い合わせしていただけます。

ピッキングが難しい鍵はどういうもの?

要注意!携帯してはいけない工具もある

ピッキング防止法ではピッキングツールなど「所持自体が禁止された道具」のほかに、隠し持つことを禁じた工具もあります。工具の一部には空き巣による鍵開けに使われることもあるため、それらも規制対象とされているのです。

「指定侵入工具」を隠して携帯するのも禁止(第4条)

ピッキング防止法の第4条では「指定侵入工具」として指定したものを隠し持ち、携帯することを禁止しています。この「指定侵入工具」として指定されているものは次の3つです。

【マイナスドライバー】
鍵の破壊や、窓ガラスを割って侵入口を作るなどの行為に使われやすいことから規制の対象です。対象となるのは「長さ15cm以上」「先端が平らで幅5mm以上」の「いずれか」を満たすものとなるので注意しましょう。

【バール】
シャッターやドアのこじ開けなど、こちらも侵入口を作るのに使われやすい道具であることから規制対象です。バールの作用する幅の部分が2cm以上あるもので、かつ長さ24cm以上あるものが対象となります。

【ドリル】
サムターン回し用の穴を開けるために使われることから規制対象となっています。空き巣が使える状態で持ち運ぶことを想定しており、直径1cm以上の刃が付いた状態のみということに注意しておいてください。

業務上の理由があれば認められる

当然ながらこれら工具は鍵開け以外の用途にも使われます。住宅の建築に関わる大工にとっては仕事道具ですし、火災や地震の揺れで閉じ込められた場合の救出にも活躍するでしょう。そのためこちらも業務上の理由があれば携帯が認められます。

鍵開けは鍵屋に依頼することが大切

このようにピッキングツールの所持は法律により厳しく規制されています。あくまで鍵開けは鍵屋に任せるもの、と考えておきましょう。鍵開けの値段も業者によって異なることが多いため、複数の業者を比較してみるのもよいかもしれません。

鍵開け時の氏名・住所確認が必須!

ひとつ気にしておいてほしいのが、鍵開け時には鍵屋から「氏名」「住所」の確認を求められる点です。これは第3者が鍵屋を悪用しないよう、ピッキング防止法第10条で義務付けられた行為です。面倒と感じるかもしれませんが鍵屋にとっては法律上の規制のため、確認できない場合は鍵開けを引き受けてもらえない可能性も高まるのです。そのため依頼する前には免許証や健康保険証などの用意、中に閉じ込めたなど開錠前に提示できない場合も速やかに提示するようこころがけましょう。

条件が厳しい鍵開けはできないことも

鍵開けは専門性の高い技術です。とくにディンプルキーの鍵開けは防犯性が高いぶん、高い技術と時間を要します。また内部がさび付いているなど状態の悪さもあり、鍵によっては「鍵開けが不可能」といわれることも少なくありません。

鍵開けが不可能な場合、鍵部分を壊す「破錠」などピッキング以外の手段で鍵開けを試みることになります。とくに特殊な鍵を使用している場合は極力鍵を失くさないように対策するとともに、鍵開けできない場合の対応策まで頭に入れておきましょう。

まとめ

ピッキングツールは鍵屋に取って七つ道具ともいえるほど必要不可欠なものですが、悪用されると私たちの生活を脅かすおそれの高いものです。そのため法律上鍵屋以外が持つことを禁じているほか、鍵屋にしてもしっかりとした管理が求められます。

このように鍵屋は専門性を持った職業です。開かない鍵があるなどの困った際には鍵開けのプロである鍵屋に依頼し、速やかに解決へとつなげたいもの。できれば料金以外の開錠技術なども見つつ、自分に合った業者を見つけましょう。

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