伐採する過程で、「間伐」は最も重要な作業のひとつです。森林は生き物なので管理が必要であり、間伐を実施しなければ、良質な木材を得るうえでさまざまな問題が発生するからです。
「間伐とは何か?」「どのような問題が発生するのか?」について具体的に説明するとともに、日本で間伐を取り巻く現状やこれからの間伐の在り方についてご紹介します。
目次
間伐ってなに?人工林の育成サイクルとともに考える
林業における伐採には、いくつかの種類(主伐・間伐・除伐・皆伐・択伐)があります。その中のひとつである「間伐」とは、森林の樹木の生育を促すために間引くための伐採のことを指します。その詳細について、以下でご説明します。
間伐はいつ実施する?
間伐をおこなう周期は、その森林の状況や樹木の種類によってさまざまです。平均すると15~35年の期間で間伐をおこなう回数が決められることが多いようです。
一般的に間伐が実施される季節は、晩秋から冬になっています。夏は樹木も水分をたくさん含んで活発になっているので、切り倒すのには適していません。秋になると、樹木は水をあげなくなるので切り倒しやすくなるのです。
また、夏はスズメバチや蛇などに襲われる危険もあります。冬であれば、森林に入ったとしてもそういった危険を軽減することができます。
さらに、秋以降は草が枯れて足元が見やすくなります。この観点からもやはり晩秋から冬は間伐をするのに適した季節であるということができます。
植林した木の一生
植林した木の一生は長く、大きく7段階あります。
1.地ごしらえ
まず、最初に木を植えるためにはそのための地面が必要になります。木を植えるのは山地になるので、木を植えるのに邪魔な木や草が生えています。それらを除去するのが地ごしらえです。
2.新植
次に、地面が整ったら苗を植えます。1本1本手掘りで植え、多いときには何千本もの苗を植えるので体力が必要な工程になります。この工程は新植といわれています。ここまでが1年目におこなう工程になります。
3.下刈り
苗を植えたらその成長を見守らなければなりません。苗の成長を邪魔する草やツルが生えてくるのでそれらを下刈りという工程で除去して苗を木へと成長させます。これをおこなうのが7年目くらいまでです。
4.除伐
木が大きくなってくると今度は周りの木が成長を邪魔することがあります。これを除去するのが除伐になります。ただその中にも役に立つ木があれば、あえて残すこともあるそうです。これをおこなうのが8~15年目くらいです。
5.枝打ち・すそ枝払い
木は必ずしもまっすぐきれいな木材になるように育つとは限りません。なので、木の成長が止まる秋から冬にかけて木の地面から1.5メートル以上の枝を伐ります。これは8~30年くらいほかの工程と並行しておこないます。
6.間伐
15年目くらいからは、木が生い茂って森になってくると全体に日光が行き届かなくなり成長が遅れてしまったり枯れてしまったりします。そのため、曲がった木や枯れてしまった木を間引いてバランスを取るために間伐が必要になります。
7.伐採
そして、苗を植えてから50~60年くらい経つと、ついに成長しきった木を伐採します。人力で伐採することもあります。また、最近では木を伐り、枝を払い、皮をむいて木材として使用できる段階まで自動的におこなう機械もあります。
こうしてみると、一本の木を伐採するのにも多大な労力と時間がかかることがわかります。それは世代を超えるほどのものです。
なぜ間伐を実施する?
「森林は生き物である」とよくいわれていますが、それが本当ならば、ときに人の助けが必要なこともあります。とくに、人工林は人の手が加わらなければまともに成長しないでしょう。
では、間伐をおこなっていない森林はどうなるのでしょうか?自然のままに放って置くと樹木の密度が高くなり続けます。そうすると、樹木同士が生育を邪魔しあって樹木がまっすぐ育たなかったり、日影が増えて土の栄養がなくなったり生育が遅くなったりしてしまうこともあります。曲がった樹木ややせ細った樹木は風雪に弱くなり、良質な木材にはなりません。
しかし、適度に間伐がおこなわれた森林では、日光が適度に差し込むことで樹木の生育が良くなり樹木がまっすぐ育ちます。
樹木の密度が高すぎないことで土に栄養が蓄えられ、樹木の幹も太くなり、風雪に強くなります。このようにまっすぐにかつ幹が太く育った樹木は加工しやすく、良質な木材として利益をもたらします。
よって、人がより多くの利益を森林から得るだけでなく、森林そのものの成長を助けるためにも間伐の実施が必要不可欠だといえます。
除伐とは何が違う?
林業における伐採の中には「除伐」というものがありますが、これも樹木を間引く作業のことをいいます。では、間伐と除伐の明確な違いは何でしょうか?
それを知るためには、間伐と除伐のそれぞれの目的について熟知する必要があります。
まず、間伐の目的は、森林が成長していく過程で、森林の密度を高めすぎないように間引くことによって健全な森林へと導くことにあります。
間伐の目的には、このようにそれぞれの樹木へ日光が届くようにして森林の育成を促すだけでなく、下草の生育も促して土砂災害を防ぐことも目的としています。
それに対して、除伐の目的は、森林の育成のためではなく森林の管理のために樹木を切り倒すことです。これはいわば除草作業と同列の行為でしかありません。
そのため、切り倒す樹木の種類は目的の樹種以外の樹木や形の悪い樹木であることが多いです。
間伐の種類について
間伐には大きく5種類あります。木は樹形によって、優勢木、準優勢木、介在木、劣勢木に分類されます。
- 優勢木 樹林が高く、日にあっていて、成長している
- 準優勢木 優勢木には劣っているが、樹林は高く、やや日に当たっていない。
- 介在木 優勢木、準優勢木と同じ高さだが、幹が細い。
- 劣勢木 樹林の高さが低く、日差しも十分に当たっておらず、成長していない。
一番おこないやすい間伐のことを下層間伐(普通間伐)といい、間伐せずとも枯れていく樹木を切る作業になります。木を選別するのに時間がかかりません。
広葉樹の用材生産施業における間伐のことは上層間伐(樹冠間伐)といい、良質な木材になることが期待される樹木の成長を妨げる木を切る作業になります。優勢木の中から、成長するにつれて悪い影響を与える恐れのある木、または品質が悪い木を見極めて間伐するので時間がかかります。
このほかに、優勢木間伐というものもあります。優勢木の中にも形の悪いものがあるので、それらを間引くために優勢木間伐を実施します。全体的に年輪が均一にできるので良質な木を生産することができます。
そして、「下層間伐(普通間伐)」「上層間伐(樹冠間伐)」「優勢木間伐」という3つの間伐を組み合わせたものを自由間伐といいます。
場合によっては上記の間伐以外にも、木の種類に関係なく1本おきに切るというような機械的間伐も作業効率がいいです。
ただし、機械的間伐は良質な木材を生産するうえでは欠点があるので、状況によって使い分ける必要があります。
形態の違いによっても間伐には種類がある
間伐は形態の違いによっても種類があります。
定性間伐
木の品質を保つためにおこなれます。勢いのある木は残しておき、弱っている木や曲がっている木を間伐します。
定量間伐
木の品質は関係なく、残す木の量を決めてから間伐をおこないます。木の密度を重視するので、質のよい木と質の悪い木の両方が残ります。木の選別に時間がかからないのがメリットです。
列状間伐
1列切って、2列残すといった一直線に木を切る間伐です。定量間伐と同様に木の選別に時間はかかりませんが、質の良い木、質の悪い木の両方が残るため、木材の品質を重視する場合は不向きです。
間伐をおこなうことによって人工林全体が良質に!
前述したとおり、森林は生き物であり放置しておいても成長しますが、必ずしも良質な木材を得るために適した森林に成長するとは限りません。
自然林ならともかく、人の手が加わった人工林ならなおさら人の助けを経て成長させなければ、さまざまな弊害をもたらすことさえあります。
土砂崩れしにくい森林にする
森林全体が整うことによって見栄えがよくなります。森林の中の樹木は周りの樹木と競争しながら成長していますが、大きくなりすぎるとお互いの枝や葉が重なり合うことによって日光が届きにくくなり不健康な樹木に成長してしまいます。間伐をすることで、日当たり、風通しがよくなり、木が育ちやすい環境をつくることができます。
不健康な樹木では木の根がしっかりと土をつかむことができないので土砂崩れを起こすことがあります。それを防ぐためにも、不健康な樹木を間引く間伐が必要になります。
緑のダムとしての機能を高める
間伐によって良質な樹木が育った森林は緑のダムとしての役割を果たします。
緑のダムとは森林がダムのように雨水を貯蓄したりゆっくり川に流したりすることをあらわし、洪水や渇水を緩和する効果があるのです。
この緑のダムは人工的なダムとは違い、川の流れを遮ることがない点で、自然環境にやさしいダムであるということがいえるでしょう。
生態系を豊かに
森林が間伐によって樹木の成長しやすい環境になると、ほかの植物にとっても生育しやすい環境ができます。
そうすると、草花を食べる昆虫や動物も森林に住み着くようになるので、間伐で間接的に生態系を守ることもできるのです。
光合成の効率を高め、二酸化炭素をよりよく吸収
樹木が成長すればするほど、光合成は活発になります。光合成によって光のエネルギーを使って二酸化炭素と水から酸素と炭水化物が生成されます。
一説によると、この光合成の働きで地球温暖化を防ぐことができるといわれています。
しかし、植物が光のエネルギーを吸収できなかったり枯れたりしてしまうと二酸化炭素を放出してしまうので、人の手が加わっていない天然林では長期的に酸素と二酸化炭素のバランスが変わることはほとんどありません。
つまり、間伐をおこなって光合成をより効率的にできる環境をつくることが、地球温暖化を防ぐことにもつながるということです。
メリットが大きいはずなのに、なぜ間伐ができない?
間伐をおこなうことには大きなメリットがありますが、実行されていないこともしばしばあります。「なぜ間伐ができないのか?」といわれれば、つまるところは経済的な問題になりますが、その詳細については以下でご説明します。
木材価格の低下で採算が取れない
一本の木を育てるのに必要な期間は30~50年になりますが、それに対し木材の価格の相場は1㎡あたり4,000~7,000円、酷い場合はそれ以下の価格になることさえあるというくらい割に合いません。
成長した主伐材ですらこの価格なので、間伐材では利益を生むことが困難になっています。最近では、安価で輸入される外材との競争のおかげで、適正な利益さえ付けられないこともあります。
このように木材価格の低下で大赤字が生まれることが、間伐をおこなわないことの一因となっています。
森林所有者の不在、不明確
日本の森林所有者の所有林の面積は5ha以下のものが約75%を占めています。そのため、小規模の森林所有者がバラバラに行動し、非効率的な動きをしているのが現状です。
これでは、労働力と資本の集約ができず、間伐が疎かにされてしまうことも珍しくありません。
機械化が進んでおらず、人手が必要
従来の間伐方法では機械化が難しく、人の手でおこなうことがほとんどです。そして、間伐をおこなう際の作業者の負担は大きいため、このことも間伐ができない一因となっています。
行政から補助が出るけども……
間伐をおこなう際は、国や県、市町村などの行政から補助金が出ることがあります。
その金額は、条件によって異なりますが、間伐にかかる経費の70~80%にもなります。
しかし、これほど多くの補助金が出ても間伐は赤字になることが少なくないので、やはり間伐を実施しない森林所有者はいまだに多く存在するのです。
間伐した木の行き先は?間伐材の今昔
間伐によって得られる木材(間伐材)はそのまま捨ててしまうともったいないので、再利用されるように見直しがなされています。
しかし、それは根の深い問題であり、国内の林業を守るために、私たちは間伐材の在り方を考えなければなりません。
かつては割りばしなどに利用
間伐材は、かつて土木建築用の杭や割りばしなどとして再利用されることが多くありました。とくに割りばしは外食産業からの需要が高く、間伐材の再利用として適しているものでしたが、時代の変化とともにその状況は変わっていったのです。
まず、1970年代以降日本経済が急速に発展したことにより、割りばしの需要が激増し国内産の間伐材だけでは生産が追い付かなくなってしまいました。
それにともなって、外材の輸入制限が緩和され海外の樹木が切られるようになりました。これにより、国内の間伐材では採算が取れなくもなってしまい、国内の林業が衰退していったのです。
このように、間伐材の再利用が結果として資源としての循環も環境としての循環もできなくなる原因を作り出してしまいました。
現在では間伐した木を放置する例も
国内の間伐材では採算が取れなくなってしまったため、最近では間伐材をその場に放置することも珍しくありません。
このようにその場に放置された間伐材のことを林地残材といいます。林地残材は長い時間をかけて分解され、土にかえるといわれています。
こうすることで、間伐材を運搬したり加工したりする費用や労力を削減でき、環境を保護することができるのかもしれません。
間伐した木を放置すると……。森林に与える悪影響
しかし、森林に放置された林地残材は山腹の水流をせき止めたり足場を悪くしたりと悪影響を及ぼすことがあります。とくに、以下のような悪影響には注意しなければなりません。
穿孔虫の温床に!間伐木の放置は木の育成に影響
穿孔虫は主に倒木や伐採木、枯れ木などすでに活力を失っている木に潜り込み繁殖する昆虫です。間伐材を放置した場合は、この穿孔虫が急激に増殖し、健康な樹木にまで害をもたらすことがあります。
「巻き枯らし」にはとくに注意が必要
とくに、巻き枯らしは穿孔虫の発生の温床になります。巻き枯らしとは、鉈を使って樹皮と形成層の部分を環状に削ぎ落として枯らせる方法のことです。穿孔虫の発生を妨げるためには、薬剤を使用したり処理時期を調整したりという工夫を考えなければなりません。
間伐材を活用したい!間伐材の新しい利用法
間伐材だからといって質が悪い木材であるとは限りません。間伐材の中には30~50年近くかけて作られたものもあるからです。そのため、最近では間伐材の再利用についても改めて見直しがなされてきており、さまざまな用途が編み出されてきています。
間伐材を利用した住宅
スギやヒノキなどの間伐材を利用した住宅は耐久力に優れています。間伐材ひとつひとつは小さくても、一般住宅よりも多くの材木を使っているため、その分耐久力が増すのです。
このような間伐材を使った住宅は前例が少ないため、まだ研究の余地がありますが、100年を超える耐久性を持つ可能性もあるそうです。
金属の代わりに利用。紙製飲料缶
飲料に使う缶を紙で作る紙製飲料缶(カート缶とも呼ばれます)の利用も見直されてきています。金属製の缶ではなく紙製の缶であれば間伐材を原料に使うことができます。
また、「紙を使うことで森が育つ」ともいわれています。これは紙の原料である木材の使用が増えれば、林業への経費もその分確保されることになるからです。
古紙に間伐材を混ぜた再生紙
間伐材を原料とした再生紙の利用も森を育てるためには有効です。最近では、間伐材の配合量を調整したさまざまな種類のものが増えてきており、中には間伐材の色の温かみを生かした紙もあります。
間伐材をバイオマス発電に利用
間伐材をバイオマス発電に利用することで採算を取り戻そうとする動きもあります。ここでいうバイオマス発電とは間伐材を燃焼させた熱で蒸気を作り、その蒸気の圧力でタービンを回して電気を得ることです。
電力の固定価格買い取り制度で、バイオマス発電で作られた電力を買い取ることが実現できれば、放置された間伐材も宝の山と化すかもしれません。
まとめ
間伐は、森林の成長を促進させて良質な木材を得るためだけでなく、土砂災害や洪水、地球温暖化などを防ぎ、生態系を守るための重要な役割を果たします。
現在の日本では、このようにさまざまなメリットがある間伐も、主に経済的な理由で実施されていないことが少なくありません。それでは、日本の林業は廃れていく一方で、環境問題も解決できないかもしれません。
現状を一気に打開することは困難ですが、間伐材の利用方法の見直しや森林組合などの労働力の集約など、多くの手法を凝らして現状を改善させることはできるでしょう。少しずつでいいので、間伐の在り方を見直していきましょう。
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