
女王バチ1匹で活動を始めるスズメバチ・アシナガバチの巣は最初こそ小さいものの、働きバチの増加とともに急激な成長をとげます。そのため「小さな巣」と思っていても、少し目を離しただけで手が付けられないほど大きくなっていることは意外と多いはずです。
ところで、皆さんの身の回りではどのようなハチが巣を作ることが多いのでしょうか。凶暴な性格を持つスズメバチの印象がどうしても強くなりがちですが、実は意外と少ないのかもしれません。
そこで今回は2015年6月から2019年5月までの4年間を対象に、生活110番やハチ110番に寄せられた相談を市区町村別・事例別にまとめ、分析をおこないました。するとハチの巣が作られる傾向や近年の動向が見えてきたのです。

目次
ハチの駆除の相談が多い地域
最初は、ハチ駆除の相談が多い地域の傾向を探ってみることにしましょう。
スズメバチやアシナガバチ・ミツバチは日本全国に広く分布していますが、駆除の相談件数は住民が巣を見つけやすい都市部に集中する傾向があります。そこで市区町村ごとに1,000世帯当たりの相談件数を集計・計算し、比較をおこないました。
次の表1では全国から寄せられたハチ駆除の相談件数トップ10を一覧にしています。また参考として三大都市である東京23区・大阪市24区・名古屋市16区のうち、最も多い区の件数も表2にまとめました。すると山梨県や長野県の市町村がトップ10の多くを占める結果となったのです。
表1・市区町村別駆除相談件数トップ10
市区町村 | 都道府県 | 1,000世帯あたりの相談件数 |
---|---|---|
南都留郡山中湖村 | 山梨県 | 38.3件 |
北佐久郡軽井沢町 | 長野県 | 33.1件 |
南都留郡鳴沢村 | 山梨県 | 21.2件 |
南巨摩郡早川町 | 山梨県 | 20.9件 |
南佐久郡南牧村 | 長野県 | 19.3件 |
北杜市 | 山梨県 | 14.2件 |
吾妻郡嬬恋村 | 群馬県 | 13.9件 |
足柄下郡箱根町 | 神奈川県 | 13.6件 |
南都留郡道志村 | 山梨県 | 13.5件 |
諏訪郡原村 | 長野県 | 13.5件 |
表2・三大都市のうち駆除件数がトップの地域
地域 | 市区町村 | 1,000世帯あたりの相談件数 |
---|---|---|
名古屋市内 | 名古屋市緑区 | 4.3件 |
東京23区 | 目黒区 | 1.7件 |
大阪市内 | 大阪市住之江区 | 0.9件 |
(表1・表2とも相談時に市区町村の申告があった125,780件に基づくデータ。世帯数は2015年国勢調査を参照)
トップ10に入る市町村はいずれも1,000世帯当たり13件以上と高い数字を示しています。三大都市のなかでも駆除依頼が多い「名古屋市緑区」(4.3件)と比較しても3倍以上の件数となっており、その多さが目立つところでしょう。とくに山中湖村は名古屋市緑区の約8.9倍、38.3件です。
ハチの駆除依頼が多い地域の特徴は
先ほど確認した通り、表1では山梨県・長野県の市町村がトップ10の多くを占めています。そこで地域に共通性がないか調査を進めてみると、これらのハチが発生しやすい地域は高原野菜の生産地など、いずれも「避暑地」に集中する傾向が見られました。
とくに1位の山中湖村は村の統計によると別荘が約3,800軒あり、山中湖村に住民票を置いている世帯数2,372軒を上回っています。2位の軽井沢町も同様で、町の統計では約15,900軒の別荘が立地しており、住民票上の総世帯数8,479世帯を大きく上回ります。
また地域の特徴について詳しく調べてみると、「富士山麓」(山中湖村・鳴沢村)・「軽井沢」(軽井沢町)・「八ヶ岳山麓」(南牧村・北杜市・原村)・「箱根」(箱根町)といった別荘地が上位10市町村に含まれることも明らかになったのです。
ではなぜ「避暑地」「別荘地」にハチの駆除相談が集まるのでしょうか。その理由には「別荘」の使い方に特徴があると考えられます。
別荘は夏の暑い時期など一時的に滞在に使われることが多く、1年の大部分はほぼ無人の状態です。それゆえに手入れが行き届きにくく、所有者に見つかることなく巣を大きくできる傾向にあると考えられます。
実際シェアテクに寄せられた相談事例を確認してみると、1位の山中湖村では少なくとも3件、2位の軽井沢町では4件、50cmほどの巨大な巣が発見されています。このことからも、別荘地や避暑地はハチが巣を作りやすい最適な環境といえるのではないでしょうか。
アシナガバチは山間部よりも都市に多い傾向が!
スズメバチよりおとなしい性格ではあるものの、壁や草むらなど手の届きやすい位置に巣を作ることも多いアシナガバチ。このアシナガバチの駆除依頼が目立つのは、どの地域なのでしょうか。
この疑問を調べるため、まずは各都道府県の「スズメバチ駆除相談件数」「アシナガバチ駆除相談件数」をそれぞれ集計しました。ここから「スズメバチ駆除相談1件に対するアシナガバチ駆除相談の件数」を比率にすると、この比率は各都道府県の「人口集中地区(DID)」面積の割合とも似た傾向を示していたのです。
図1・スズメバチ・アシナガバチ駆除相談比率と人口集中地区比率
(都道府県・ハチ種類の申告があった駆除相談82,729件の分析による。人口集中地区比率は2015年国勢調査に基づく数値)
ちなみに駆除相談の比率の全国平均は「0.57」となっており、全国的にはアシナガバチ1件の相談に対し、スズメバチが2件近くの相談を受け付けている傾向が確認できます。しかし東京都・神奈川県・埼玉県・愛知県・大阪府といった「人口集中地区比率の高い都府県」はこの比率が1以上、つまりスズメバチの駆除相談よりアシナガバチの駆除相談の方が多い数値を示しました。
この駆除相談の傾向に大きく影響を与えていると考えられるのが、アシナガバチが巣を作る位置です。
スズメバチは、自然の残る地域では「高い木の上」もしくは「木の根に近い地下」のいずれかに巣を作ります。このうちキイロスズメバチなど「高い木の上」に巣を作る種が軒下に巣の場所を移し、住宅街に進出する傾向にあるのです。一方で木の根部分に巣を作るオオスズメバチは都市部への進出が難しく、キイロスズメバチやアシナガバチにとって天敵不在の環境が形成されつつあります。
一方アシナガバチは草むらや木の枝など、自然のなかでも比較的低い場所に巣を作る種です。そのため住宅街にも巣を作れる場所が多く、都市部でも多くみられることが駆除依頼の傾向にあらわれているのではないでしょうか。
2018年はスズメバチの駆除依頼が激減!?
2018年は各地で猛暑となり、埼玉県熊谷市では日本の観測史上1位となる41.1度を記録しました。その猛暑とともに警戒が呼びかけられたのが「スズメバチの大量発生」です。
しかし実際のところ、例年よりスズメバチは少なかったのでは?と感じた方もいるのではないでしょうか。そこでハチの種類別に、4年間の駆除相談の動向を調査してみました。
図2・種類別駆除相談件数推移
(ハチ種の申告があった83,975件の集計)
2015年から2017年シーズンまでは例年8月をピークにスズメバチの駆除相談が目立ちます。しかし2018年シーズンはスズメバチの駆除件数が大きく減少し、アシナガバチの駆除件数を下回る結果となったのです。
この減少の原因として考えられるのも、各都道府県のデータから「猛暑」ではないかと考えられます。じつはおよそ北緯37度よりも北側、北海道・東北・新潟といった地域では例年通りか、むしろ例年より多い相談件数となっているのです。
図3・北海道・東北および新潟における種類別ハチ駆除相談推移
(北海道・東北・新潟の各道県における2017年1月~2018年12月のデータ・計5,791件の分析による)
図3のグラフに見られるように、この地域におけるスズメバチの駆除相談件数は2017年と比べて各月ともおおむね増加していることがわかるでしょうか。
確かに2018年は猛暑ではあったものの、東北の中心地・宮城県仙台市では最高気温が30度まで届きませんでした。その点も含め、関東以西と比べると暑さは控えめだったといえます。つまり北海道・東北では、スズメバチが比較的過ごしやすい環境だったと考えられるのです。
一方で関東以西では猛暑の影響で寄生虫が増加するなど、スズメバチの巣作りに支障が出たといえるのではないでしょうか。
このように2018年は全国的に見ると、過去4年のなかでスズメバチ駆除相談が一番少なかった年だということは確かです。しかし今年2019年も同じように減少するとは限らず、スズメバチの巣作りにはより一層警戒するようにしてください。
地域特徴によってハチの巣サイズにも大きな差
ハチの巣は大きくなるほど中で生活する働きバチの数も増え、巣の危険性が高くなっていきます。そこで駆除依頼の多い「避暑地」を代表する長野県・山梨県と、三大都市圏を代表する4都府県で、駆除相談の受けた巣の大きさを比較してみました。
図4・都市部と森林の多い地域の巣の大きさ
(都道府県・巣の大きさの申告があった74,434件の分析による)
20cm以上の巣に成長しやすい地域は
都市部4都府県と避暑地2県を比較すると、20cm未満の巣の相談割合は都市部で高く、避暑地2県では20cm以上の巣の割合が高いことがわかります(長野県50.8%・山梨県48.0%)。
しかし相談件数を見てみると全国の50cm以上の巣の相談件数合計1,690件のうち、神奈川県が最多の94件・東京都でも67件と、都市部でも巨大な巣が発見されていることがわかります。
表3・50cm以上の巣に関する問い合わせ件数
都道府県 | 相談件数 |
---|---|
東京都 | 67件 |
神奈川県 | 94件 |
愛知県 | 77件 |
大阪府 | 30件 |
山梨県 | 34件 |
長野県 | 83件 |
全国 | 1,690件 |
巨大な巣の発見は避暑地などで多いとはいえ、都市部でも発見されることは少なくありません。巣が成長する前に発見したい理由は次の相談件数にもあらわれています。
1.6mのハチの巣も発見されている
生活110番やハチ110番では次の表4に見られるように、1m以上に成長した巣の駆除相談も受けています。ハチの巣は放置すればこの大きさまで成長するおそれがあることの証拠ともいえ、駆除が必要な理由といえるでしょう。
表4・巣のサイズと駆除相談件数
およその巣のサイズ(直径) | 相談件数 |
---|---|
50cm | 1,283件 |
60cm | 305件 |
70cm | 60件 |
80cm | 36件 |
90cm | 2件 |
100cm | 2件 |
150cm | 1件 |
160cm | 1件 |
(図4・表3・表4とも相談時に大きさの申告があった74,434件に基づくデータ)
巣が大きくなる前の早めの対策が肝心
では危険なハチの巣が成長するのを防ぐにはどのようなことを考えればいいのでしょうか。
女王バチが1匹のときに早めの駆除を!
アシナガバチやスズメバチは、1年を周期として巣を作り直す種類のハチです。通常4月から5月の時期に女王バチは目覚め、1匹だけで巣を作り始めます。この時期の巣の大きさは女王バチの管理できる10cm未満であることがほとんどで、働きバチが飛び回る前の段階のため駆除の難易度・危険度はそれほど高くありません。
しかし、巣の大きさが20cm以上にまで成長した段階では働きバチも活発に活動しており、自分で駆除するのは危険です。一方で放置しておくと表3や表4にも見られるように、巨大な巣に成長するおそれも高まります。そのためにも、早めに巣の駆除が必要とされるのです。
成長した巣はプロへ駆除依頼を
成長した巣は被害を防止するうえでも駆除が必要ですが、その際に集団でハチが反撃してくるおそれも高いといえるでしょう。そのため巣が大きい場合は、ハチ駆除業者に安全な方法で駆除してもらうことを考えてみてください。費用は、巣のある場所や大きさ・地域などの要因で駆除料金は変わってくるため、見積もりをしっかりと確認し希望に合った最適な業者を選ぶようにしましょう。
なおハチの生態や駆除については過去コラム「スズメバチの生態とは?その一生や種類、対策までわかりやすく解説!」でも解説しています。こちらも一度読んでみてください。
まとめ
ハチは日本全国に分布していますが、地域によってハチの巣が作られやすいかどうかは変わってきます。今回の調査では避暑地、とくに別荘地に巣が作られやすい傾向が見られたものの、都市部でも多くの巣が発見されています。そのため、都市部であってもハチの巣作りに対する警戒は怠らないようにしましょう。
一方で、ハチの巣が大きくなってしまうと自分での駆除は困難になります。自身や周辺に被害が及ばないようにするためにも無理をせず、ハチ駆除のプロに依頼するようにしてください。
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