
急にエアコンが効かなくなった経験、ありませんか?とくに気になるのが「風は出ているのに、十分に冷えた/暖まった空気が出てこない」という症状。こうした症状など、エアコンに異常を感じたときに疑われるのがエアコンのガス漏れです。
エアコン内部で循環するガス(冷媒ガス)は温度の調整において大切な役割を果たしており、ガス漏れはさらなる故障につながる原因ともなりかねません。今回はガス漏れの症状について詳しく知り、早めの対策へとつなげていきましょう。
目次
エアコンの冷媒ガスが漏れてしまう原因って?
エアコンや冷蔵庫にはかつてフロンと呼ばれる冷媒ガスが使われていました。しかしフロンが大気中のオゾンを破壊することが知られてからは規制が進められ、極力漏れ出さないように構造が工夫されています。またガス自体もフロンから害の小さいものへと置き換えられていっています。
こうした工夫が進められているのにも関わらず、エアコンのガス漏れが起こる原因とはいったい何なのでしょうか。
取り付けミス
エアコンは本体(室内側)と室外機が一体になって動くように設計されており、この2つの間には2本の配管が通されています。後ほど詳しく説明しますが、この配管を使ってエアコンのガスは本体と室外機の間を行き来するのです。
しかしエアコンの寿命は建物よりもずっと短く、取替可能な構造になっていることが大半です。そのためエアコンにはいくつか接続部分が設けられています。
・エアコン本体の右下、もしくは左下
・室外機の横
・配管の途中(エアコンと室外機の間に距離がある場合)
もちろんこうした部分から漏れ出さないようフレアナットによる接続部が設けられているほか、エアコンの設置工事でも十分に気を付けて作業がおこなわれています。しかし接続にミスがあった場合、冷媒のガスが漏れ出してしまっているおそれもあるのです。
劣化による破損・腐食
エアコンの配管の多くは金属製です。もちろんガスの成分や外気による影響を受けにくい材質が使われているものの、長年の使用で劣化しサビによる腐食や破断が起こることも否定できません。
とくに運転中、配管内部と外気の温度差は大きくなりがちです。対策として断熱性のあるカバーが取り付けられ、通常その外側にビニールテープを巻き付けることで耐久性を持たせています。しかしこのカバーも長年使用していると劣化を引き起こし、外れてしまうことも少なくありません。
カバーがなくなると配管が直接温度差のある外気に触れることになり、劣化も進みやすくなってしまいます。
また自動車のエアコンの場合、その多くはエンジンの力も利用してガスを循環させています。そのため配管に振動が伝わりやすく、そのショックで破断する可能性もあるでしょう。
室外機の無理な移動
室外機の下を掃除しようとして、無理やり移動させたことはありませんか。室外機の配管にはある程度余裕を持たせて設置していることが多いものの、金属製の配管のため無理やり力を加えて動かすと破損するおそれがあります。とくに劣化が進んでいた場合、それがきっかけに配管の破断や穴の発生をもたらす可能性も否定できません。
その他初期不良など
エアコンにはその仕組み上、細い管が集まっている部分があります。万が一製造不良などで小さな穴が開いていると、そこからエアコンのガス漏れが引き起こされる例も少なくありません。
エアコンの冷媒ガスはどういった役割をしているの?
ところでエアコン本体と室外機の間を循環している冷媒ガスにはどのような役割があるのでしょうか。
エアコンは熱を移動させている
暑い夏、家の前で打ち水をした経験はないでしょうか。もしくは商店街などで細かい霧状にした水滴(ドライミスト)が噴射されている様子を見る機会も多いでしょう。これらは水が水蒸気へ変わるとき、空気中の熱エネルギーを取り込む現象(気化熱)を利用しています。
じつはエアコンも基本は同じ仕組みです。エアコンの配管を通るガスも気体になるときに周囲の熱を奪い、液体になるとき熱を放出する性質があります。一方、物質は圧力をかけて密度を小さくすると液体に、圧力を小さくして密度を大きくすると気体になるという性質を併せ持っています。
これらの性質を利用し、室外機(コンプレッサー)でガスを圧縮して液体にすれば熱を取り出すことができるのです。
この液体になったガスを、圧力はかけたままエアコン本体に運び「熱交換器」でかかる圧力を小さくします。熱交換器には細い配管が張り巡らされており、その間をエアコン本体が取り込んだ空気が通り抜けていく仕組み。この通り抜けの際に空気から熱交換器、そしてエアコン内部のガスへと熱が受け渡されていくのです。
じつは冷蔵庫も同じような仕組みで内部を冷やしており、この仕組みを「ヒートポンプ」といいます。簡単にいえばガスを通じ、室内の熱が室外へと出ていくという流れ。「冷媒ガス」と呼ばれる理由もここにあります。
逆に冬はガスを逆方向に循環させ、室外機で圧力を弱めて気化させることで熱を吸収します。本体の熱交換器周辺で圧力を加えることで液体に変え、室内の空気を暖める仕組みとなっているのです。
このように冷媒ガスはエアコンの仕組みにおいて重要な役割を果たしています。このガスが漏れ出してしまうと圧力が弱まって熱のやり取りがうまくいかず、故障の原因につながってしまうのです。
こういったエアコンの症状があれば要点検!
エアコンのガス漏れは本来起こるべきことではありません。そのためエアコンに異常がないか点検をおこなってみましょう。
室外機などの配管接続部分に霜が付いている
先ほど説明した通り、エアコンのガスは圧力の強弱をコントロールすることで熱を移動させています。逆に漏れ出した場合、急激に圧力から解放されることになり、その部分が急速に冷やされるのです。
エアコンの冷房運転では空気が冷やされることにより結露しますが、ガスが漏れ出した周辺の空気も冷やされ結露、場合によっては凍結し霜が付くことも少なくありません。そのため配管の途中に霜がついているような箇所があった場合、ガス漏れを疑う必要があります。
なお近年では熱交換部を凍結するまで冷却し、自動で汚れを落とすエアコンも登場してきています。熱交換部に霜が付いている場合、この機能の影響ではないかもチェックしておきましょう。
エアコンが十分に冷えない
ガス漏れによってガスにかかる圧力が不足し、熱の移動が十分におこなえないことが考えられます。そのまま使い続けると十分に機能を果たせないどころか、故障の原因になることも考えられるため一度点検してみましょう。エアコンの吸気口の温度、吹き出し口の温度を同時に測り、その温度差が十分かをチェックするのが確実です。
なお冬の暖房運転の場合、気温が低いと室外機に霜が降りることがあります。この場合ガスへの熱の吸収がおこなえなくなるため、エアコンは除霜運転に切り替わることも少なくありません。この運転の間は逆に本体から冷たい風が出るなど、十分に暖房効果を得られないので運転モードにも注意が必要でしょう。
エアコンのガス補充は意外と難しい!
エアコンがガス漏れを起こすと冷暖房の能力が大きく落ちるため、その対策として自分でガス補充することを考える方も多いです。しかしガス補充を考える前に、一度次の点について考えてみませんか。
漏れ出している箇所はちゃんとふさがれている?
配管の接続ミスなどで漏れ出した場合はともかく、ガスが漏れ出した箇所が確実にふさがれていなければいずれ再発してしまいます。また1か所だと思っていたガス漏れ箇所が、じつは複数に及んでいたというケースも考えられるでしょう。
また配管の腐食や破損が原因の場合、ほかの箇所も同様に経年劣化が進んでいるおそれがあります。エアコンのガス漏れがすぐに再発するような状況であれば、配管やエアコン自体の交換をおこなった方がいいかもしれません。
エアコン修理のプロは専用の検知器を利用してガス漏れ箇所を見つけることも多いですが、私たちが検知器まで導入してガス漏れ箇所を見つけることは難しいでしょう。
一度ガスを抜き切らなければならない
エアコンのガスはエアコンの根幹部分であり、残っている不純物が性能に影響を及ぼさないようあらかじめ取り除いておく必要があります。これが「真空引き」といわれる作業で、配管内の空気やガスを一度取り除いたうえでガスを補充するのです。
当然真空にするには専用の機械が必要になるほか、環境への悪影響も考えられるエアコンのガスは残らず回収しなければならないという点にも注意しなければなりません。
ガスの量を調整する必要がある
ガスを補充する際にも、どれだけの量を入れているか確認しながら作業する必要があります。またエアコンによって使うガスの種類が異なる場合があるほか、とくに古いエアコンの場合指定されたガスが手に入らないこともあるでしょう。この場合別の種類で代替していいのか、専門知識がなければ判断できません。
このように、エアコンのガス補充は素人では意外と難しい作業です。不安な点があるときは無理せず、エアコン修理のプロへと依頼するようにしてください。
エアコンのガス漏れに関わる料金
エアコンがガス漏れを起こした際の修理やガス補充の料金目安は次の通りです。
症状・作業内容 | 料金相場 |
---|---|
ガス漏れ箇所特定・修理 | 10,000円~ |
配管交換 | 3,000円/m~ |
ガス補充 | 8,000円~ |
ガス入れ替え | 15,000円~ |
その他の作業 | |
移設作業 | 5,000円~ |
なお使用するガスの安全上不純物が混ざるのを防ぐため、新しい機種ではガス入れ替えのみによる対応になる場合がほとんどです。一方古い機種では残っているガスに追加する「ガス補充」による対応がおこなわれることもあります。
ガス漏れを予防・早期発見するためのチェックポイント
最後に、エアコンのガス漏れを予防・早期発見するためのチェックポイントをご紹介します。
エアコンの性能低下
エアコンのガス漏れの症状は熱輸送能力の低下として現れます。エアコンはフル稼働しているのに涼しくならない、暖かくならないということがあれば一度エアコン周辺の点検をおこなってみましょう。
エアコン内部の掃除も極力業者へ
エアコンの前面や上面に取り付けられているフィルターは頻繁に掃除する必要があることから、取り外しも容易です。しかしその奥は熱交換器やシロッコファンなどは細かい部品が集まる箇所であるほか、水の流れる傾斜なども計算して取り付けがおこなわれています。下手に掃除すると故障の原因になることから、各メーカーが清掃ロボット機能を付けていることも多いでしょう。
このようにエアコン内部はデリケートな部分。自分で無理に掃除してしまうと、熱交換器や接続部分に穴が開きガス漏れすることも考えられます。そのためエアコンクリーニングのプロに依頼し、安全に掃除してもらうようにしてください。
シーズン前に試験運転を
運転していない間にもエアコンの配管などに劣化が進んでいるおそれが考えられます。いざ付けてみたらガス漏れで使えなかった、というのは困りもの。あらかじめ問題がないか、冷暖房シーズン前に確認しておきましょう。
ガス漏れを起こさずエアコンを移設するために
引越しなどでエアコンを新居に移動する際は、きちんと手順を守るようにしてください。
エアコンの配管を一度外すときにはガスを室外機のなかに回収・閉じ込める必要があります。これをポンプダウンといい、ガスの適正量を維持するために必要な措置のひとつになります。また移設先ではガス補充時と同じく「真空引き」をする必要があるなど、意外とデリケートなのです。
加えて配管工事が伴うことも多いため、できればエアコン修理のプロに依頼して作業をおこなってもらいましょう。また移設のタイミングも室外機下のコンクリートを打ち終わった後など、なるべく設置後の移動をおこなわなくて済むタイミングに合わせたいものです。
エアコンで使われるガスは空気よりも重い性質があります。万が一ガスが部屋の中へ大量に漏れ出してしまうと酸素濃度が薄くなり、酸欠を起こしてしまうおそれも。エアコンの異常には敏感になっておくことが重要です。
まとめ
ガスはエアコンの仕組み上、大切な役割を果たしています。そのためガス漏れなどで失われると、エアコンの性能低下や故障へと結びつきやすいのです。シーズン前には一度エアコンがガス漏れを起こしていないか点検し、使用できる状態を保つようにしましょう。
なおエアコンのガス補充は意外と大変です。環境に有害な物質の回収も義務付けられているため無理をせず、エアコンの修理業者に依頼することを検討してみてください。
エアコン修理を依頼できる業者や料金
依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「エアコン修理」をご覧ください。
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