ヒアリと間違えられやすい「キイロシリアゲアリ」その特徴と危険性

2021.11.16

ヒアリと間違えられやすい「キイロシリアゲアリ」その特徴と危険性

日本にはさまざまなアリが生息しており、その見た目は「黒」とは限りません。地中からほぼ出てこないアリを中心に、赤や黄色の見た目をした種類も多く見かけられます。

しかしその見た目から、毒針を持つ特定外来生物として警戒されている「ヒアリ」と間違えられる種類も少なくありません。キイロシリアゲアリもその一種で、「ヒアリと間違えられやすいアリ」として上位に上がるほどです。

今回はそんな不遇ともいえる「キイロシリアゲアリ」の特徴や、ヒアリと見分けるポイントなどを詳しく解説していきます。

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キイロシリアゲアリの特徴

キイロシリアゲアリはその名の通り「黄色」をしたアリの仲間です。フタフシアリ亜科シリアゲアリ属に属しており、体長は2~3mmとやや小型のアリに分類されます。

姿の特徴

シリアゲアリの仲間を識別する一番の特徴は「腹部の付き方」です。

大半のアリは胸部(正確には腹部前部)と腹部(の後部)の間にくびれがあります。この2つをつなぐのが「腹柄」と呼ばれる部分で、日本ではここに複数の「ふし」を持つ種類が多いです。

シリアゲアリで特徴的なのが、その「腹柄」と「腹部」の接続部分です。通常のアリは下側にあり「下に向かってカーブする形」を描くのに対し、シリアゲアリは背中側に付きます。そのため、「上に向かってカーブする形」を示すのです。

見た目も腹部を持ち上げているように見えることから、「シリアゲアリ」という名前の由来となっています。とくに外敵への威嚇の際などは大きく上へ持ち上げ、ギ酸などの化学物質を飛ばして相手をひるませることも少なくありません。

またシリアゲアリの腹部は、後ろに向かって細く尖った形になっているのもその特徴です。とくにシリアゲアリは先端が上に持ち上がっており、ほかのアリと見分ける箇所のひとつとなるでしょう。

巣の特徴や食性

キイロシリアゲアリは石の下や土の中などに巣を作ります。また巣の中に複数の女王アリがいることが特徴です。

なお食性はアリとして一般的な雑食性です。ただし固体を消化するのは難しく、幼虫に与えて分泌物を得ることが大半。蜜なども一度「社会胃(そのう)」に貯め込み、仲間や女王アリへと分け与えることが多いです。

羽アリの時期

キイロシリアゲアリの巣からは9月から10月ごろの夕方、女王アリなどの羽アリが飛び立ちます。夜に飛ぶため光へと集まることが多く、後ほど解説しますが家の明かりなどを目指して侵入してくることも少なくありません。

シリアゲアリ

(写真はシリアゲアリの一種(ハシブトシリアゲアリ))

なぜヒアリと間違えられるの?

ではなぜ、キイロシリアゲアリはヒアリと間違えられてしまうのでしょうか。

特徴的な色

キイロシリアゲアリは明るい色が特徴のひとつです。一方ヒアリは実際には赤褐色をしているものの、「赤い蟻」というイメージを強く持っている人が少なくありません。そして光の加減で赤く見えることも多いキイロシリアゲアリが、ヒアリと誤解される例が後を絶たないのです。

また光沢を持った表面もヒアリと共通しているため、間違えられる要因になっていると考えられます。

女王アリがよく似ている

女王アリは毎日のように卵を産み働きアリ(ワーカー)を量産するためほかのアリより大型で、かつ腹部が非常に膨れた形をしています。この特徴はキイロシリアゲアリ・ヒアリにも共通しており、非常によく似た姿を見せるのです。

また女王アリは働きアリ(ワーカー)よりも濃いめの色を示すことが多く、この点もヒアリと勘違いさせる要因になっているといえるでしょう。

同じフタフシアリ亜科

日本に生息する種類の半分以上を占めるフタフシアリ亜科。腹柄の部分が2つのふしに分かれているのが特徴として挙げられます。そしてシリアゲアリ・ヒアリ(トフシアリ属)ともこの亜科に属し、この特徴を持っているのです。

一方、ヒアリとほかのアリを見分けるポイントとしてこの「腹柄」の部分を見ることが推奨されています。そのため、この部分のみから「腹柄が2つに分かれる=ヒアリ」と感じてしまう方が多いのかもしれません。

ただしヒアリの腹柄は背中側に高さを持った山状になっているのに対し、キイロシリアゲアリはほぼ平らという違いを持っています。

キイロシリアゲアリは人に害を与えるの?

キイロシリアゲアリとヒアリ(アカカミアリ)を見分けるポイント

一方、キイロシリアゲアリとヒアリには異なる点も多くあります。

大きさとその多様性

キイロシリアゲアリはヒアリと比べるとやや小型で、働きアリ(ワーカー)の大きさもほぼ一定です。一方、ヒアリは同じ巣内でも働きアリの大きさに差があり、2mmから6mmの間で多様に変化することが特徴とされています。

腹部の付き方

シリアゲアリは背中側に腹柄との接続部分があり、上へ持ち上げて威嚇することができます。一方ヒアリは通常のアリと同じく下に向かって下がる形で、接続部分も地面側にあります。

背中部分の突起

シリアゲアリをはじめとする多くのアリには足が生えている胸部、その背中部分後ろの両側に小さな突起(前伸腹節刺・この部分は正確には腹部)があります。キイロシリアゲアリはとくにこの突起が細く尖っており、ほかのシリアゲアリと区別するための判別部分になります。

一方、ヒアリにはこの部分の突起がありません。

触覚のふしの数

アリの触覚は「くの字」型になっており、場所によってふしの長さが異なるのが特徴です。また多くの種類では先端が少し太く「こん棒状」になっています。

キイロシリアゲアリの触覚は「11節」で出来ています。一方ヒアリは「10節」(女王アリは11節)で構成されており、数が異なることが見分けるポイントです。

なお先端の太くなっている部分はキイロシリアゲアリ・ヒアリともに「2節分」で共通しているため注意しましょう。

なお、ヒアリによく似た姿を持つアリとして「アカカミアリ」が挙げられます。ヒアリと同じ「トフシアリ属」ということで見た目や色も非常によく似ているのです。現に、これらのアリに刺される被害の多いアメリカでは、ヒアリと区別せず「Fire Ant」と呼んでいます。

しかしアカカミアリも「特定外来生物」に指定されており、日本本土に定着させないよう厳重な警戒が続けられています。港湾などでの水際対策も「ヒアリ類」として扱われることが多く、ヒアリとアカカミアリを区別して対策する必要はないといえます。

ヒアリとキイロシリアゲアリ

不快害虫としてのキイロシリアゲアリの側面

キイロシリアゲアリは外敵に対して威嚇こそするものの、毒針を持たずほぼ無害といえます。一方で光に集まる羽アリの性質から「不快害虫」として扱われることがあるのです。

夜に飛び、光に集まる羽アリ

次世代の女王アリは生まれた巣を飛び立つとつがいとなるオスアリを見つけます。その後は地面に降り、自分のはねをむしり取って新たな巣を作り始めるのです。この一連の飛行を「結婚飛行」と呼ぶことが多く、地面を生きるアリにとっては空を飛ぶ短い期間です。

この結婚飛行はアリによって「昼間飛び立つ種類」「夕方飛び立つ種類」に分かれます。キイロシリアゲアリは後者に分類され、夕方飛び立つと明るい光に集まり、つがいとなるオスを探します。見つけて交尾した後も、しばらくは光に集まって飛ぶことが多いようです。

しかしこの「夜、光に集まる」という性質が不快害虫としての側面で影響を与えています。部屋の照明に向かって飛行し、家の中へと侵入してくることがあるのです。そのため人間に直接害を及ぼすわけではないものの、「不快害虫」として分類されることがあります。

キイロシリアゲアリの侵入防止対策は?

ではキイロシリアゲアリの侵入を防止するにはどのように対策すればいいのでしょうか。

網戸のすき間や網目の大きさを確認しよう

キイロシリアゲアリは女王アリが6~8mm前後と大きいものの、オスは通常のキイロシリアゲアリと同じく2mm前後です。そのため小さなオスの羽アリが網戸などのすき間から侵入する例が後を絶ちません。

キイロシリアゲアリを防ぐには、この網戸の対策を強化するのが基本です。網戸の目の細かさは「メッシュ」という単位で決まっており、これは1インチ角(約2.5cm)に何個の網目があるかを表した数値です。通常は18から22メッシュのものが使われることが多いため、キイロシリアゲアリが気になる場合はメッシュの数値が大きいものへ張替えを検討しましょう。

なお網戸の「メッシュ」については次の記事でも詳しくご紹介しています。こちらもぜひご参照ください。

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まとめ

キイロシリアゲアリは人間にとってほとんど害をもたらしませんが、近年ではヒアリと間違えられることも増えています。明るい色に惑わされず、まずはその特徴をよく観察してみることが大切です。

ただし羽アリが部屋の照明に集まってしまうなど、不快害虫としての側面が否定できないのも事実です。網戸などの対策を強化すると同時に、性質を熟知したアリ駆除のプロと相談することも必要になってくるでしょう。生活110番でも地域のプロをご紹介していますので、ぜひ一度ご確認ください。

この記事の監修者 ナカザワ氏について

NPC 総合害虫駆除
この記事の監修者
ナカザワ氏 NPC 総合害虫駆除
監修ジャンル:害獣 害虫
神奈川県・東京都を中心とした総合害虫駆除サービスを運営。防除作業監督者(防第14721号)の国家資格を有し、アリ、ゴキブリ、ダニ、ハエ、トコジラミ、ハチやコウモリなど幅広い害虫や害獣にも対応。

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