日本は地震が多いため、家屋が損傷を受けてしまうこともしばしばあるでしょう。そこまで大きな被害でなくとも、地震後に壁にひび割れを見つけたという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのひび割れは放置していては危険なひび割れかもしれません。この記事ではひび割れが発生する原因からその対処法までご紹介します。
目次
外壁のひび割れのおもな種類
壁がひび割れをおこす原因は複数ありますが、外壁と内壁でもそれぞれ違います。まずは外壁から確認していきましょう。
ひび割れが発生しやすい場所
外壁のひび割れは、窓枠のまわりやシーリング、壁の中心などが発生しやすい場所です。この辺りを定期的にチェックしてみてください。
窓枠のまわりは、窓の開閉時の振動や地震の揺れなどの負担がかかりやすいためにおこります。また、雨水が入りやすいので、小さなひびからどんどん侵食して広がってしまうのです。
シーリングはコーキングともよばれます。ゴムのような見た目で、外壁の部材の間を穴埋めしてつなげる役割があります。このシーリングは外壁よりも劣化が早いので注意するとよいでしょう。
壁の中心のひび割れは、窓がない面など、面積が広い場所におこりやすい傾向があるようです。また、増改築などをしていた場合、壁の継ぎ足しなどをしているとその箇所もひび割れがおこりやすくなります。
構造クラック
0.3mm以上で深さ5mm以上のひび割れですと、構造クラックである可能性があります。構造クラックとは建物の構造に影響が出てくるひび割れです。地震で建物が大きく揺れてしまったときに、負担がかかっておこりやすくなります。
ヘアークラック
0.3mm以下の細さで、髪の毛のような見た目から名前がつけられたひび割れがヘアークラックです。雨風や紫外線にさらされて外壁の塗膜が劣化することがおもな原因となります。
乾燥クラック
外壁が湿式工法だとおこりやすいのが乾燥クラックです。湿式工法とは、現場で水を加えて作った材料を使って施工する方法のことです。
この乾燥クラックは、セメントに水と砂を混ぜたモルタルでおこりやすいでしょう。湿式工法は施工の際に水を加えることで、そのあと乾燥が必要になりますが、そのときに収縮をおこしひび割れにつながります。そのため新築してからひび割れが発生するのが比較的早いです。完全に乾燥するとひび割れは止まります。
縁切れクラック
こちらもモルタルなどの湿式工法でおこりやすいです。本来の施工は壁一面を一気に作業してしまわないといけないところを、なにかしらの理由により中断してしまったことでおこります。中断してしまうと、中断前と中断後に塗ったところに時間差が発生してしまい、継ぎ目がでこぼことしてしまいひび割れにつながってしまうのです。
内壁のひび割れのおもな種類
次は内壁のひび割れ原因についてご説明します。外壁とおなじように歪みや振動、乾燥や劣化などが原因のようです。
構造クラック
外壁とおなじく地震による揺れや地盤沈下による建物の歪みなどが原因となります。また、コンクリートの劣化でひび割れすることもあります。コンクリート下地のひびは放置するとはがれ落ちることがあり、とくに天井の場合は沈んでいる可能性もあるので注意が必要です。
開閉クラック
窓やドアの周辺に発生しやすいのが開閉クラックです。開け閉めするときの振動や衝撃などが原因となります。また、窓やドアがあるぶん壁の面強度が低いので、ひび割れをおこしやいのです。建物の構造に影響はなく、修繕するのなら下地の補強材を入れて、壁紙を貼り直すだけでよいでしょう。
ヘアークラック
外壁と同様、0.3mm以下の小さなひび割れです。下地の乾燥による収縮や変形、劣化などによりおこります。建物の構造には影響ありませんが、水回りで発生するとクロスにカビが発生しやすくなります。
壁にひび割れを見つけたときの対処法
壁にひび割れを見つけたとき、そのまま放置するのは危険かもしれません。対処法とあわせてご紹介します。
ひび割れに対処しないと起こる問題
外壁のひび割れは放置してしまうと、そこから雨水が外壁内に侵入し、内部が腐食してしまうのです。そうなると建物の強度が下がり倒壊につながったり、シロアリが発生したりする原因にもなります。また雨が室内まで侵入してくる雨漏りにもつながりかねません。さらに、ひび割れが発生した箇所が基礎の部分だと、地盤沈下などのサインということも考えられます。
外壁の対処法
ヘアークラックのような0.3mm以下のひび割れはすぐに修繕する必要はないでしょう。しかし悪化するおそれもあるため、ひび割れが大きくなっていないか、増えていないかなどを定期的にチェックするとよいでしょう。
もし自分で修繕してみようという人は、ホームセンターなどで材料を購入できます。販売されているのは刷り込むタイプのセメントチョークや、吹きかけて使うスプレーセメントなどです。しかしうまく修繕できない可能性もあるため、確実に直したい場合は業者に依頼することをおすすめします。
また、0.3mmより大きいひび割れは建物の構造に影響してくる場合があるので、業者に連絡して直してもらいましょう。建物の歪みなどが原因となると自分で直すのは難しいです。
内壁の対処法
開閉クラックやヘアークラックなどでしたら、基本的に建物の構造への影響はないと考えられるため、様子見でよいでしょう。ただ家のなかだとよく目につくでしょうから、見た目が悪く気になってしまうかもしれません。
もし気になるようで自分で修繕したいということでしたら、壁紙に近い色のコーキング剤を使ってひびを埋めるという方法が比較的簡単にできるでしょう。しかし放置して大きくなったときや自分で修繕したのに再発したときは、柱やはりに影響が出ている可能性もあります。そのような場合も、ひび割れを修理できる業者に依頼することをおすすめします。
ひび割れの修復だけでなく地震対策もしよう
壁のひび割れを修復しても、再び地震でひび割れるかもしれません。そうならないためにも地震に備えることが大切です。
ひび割れの原因は家の耐震性能が低いせいかも
地震によってひび割れを起こしたといっても、その理由が振動や衝撃といったものだけとは限りません。もしかしたら、既に家の耐震性が弱まっていたという可能性があります。
特に築年数が長い家や、過去に災害があった家は、比較的に耐震性が低めだといえるでしょう。
耐震性に不安のある方は、「築年数」「建物の形状」「災害に遭ったことがあるか」などのポイントを意識して、ご自分の家をチェックしてみてください。ただし、ご自身で家のチェックをするには限界があるので、より細かく見たい方は耐震診断をおこなうことをおすすめします。
まずは耐震診断を受けてみよう
耐震診断とは、既存の建物の耐震性を調査するものです。耐震基準を満たしていない建物については、耐震工事をすることが勧められています。
とくに1981年5月以前に建築された建物は古い耐震基準で設計されているため、現在の耐震基準を満たしていない可能性が高いです。それらの建物は震度6~7の地震が発生した際に、倒壊する可能性があり危険です。
建物が倒壊すれば、なかにいた人はおしつぶされてしまうこともあり、命にかかわります。いつくるかわからない地震に備えて、早めに耐震診断を受け、耐震補強をおこなうなどの工事をすることをおすすめします。
耐震診断の相場と費用を抑える方法をチェック
耐震性能が低いことから壁がひび割れた可能性があるなら、耐震診断を受けてみるとよいでしょう。しかしそのとき気になるのがどれくらい費用がかかるのかですよね。こちらでは相場と費用を抑える方法をご紹介します。
耐震診断の相場
耐震診断には約10万前後の一般診断と、約20万前後の精密診断があります。どちらも建築技術者がおこなうことに変わりありませんが、診断内容に違いがあるようです。
一般診断では建物はそのままに、目視で確認できる範囲から評価します。建物の外観や内観、天井裏や床下など入れるところがあればそこも確認します。
一方、精密検査は、場合によっては壁などを壊して、内部まで調査し評価するのです。柱や壁1つ1つ評価をつけるので、診断結果が詳細になります。
耐震診断の費用を抑える方法
各自治体で、耐震診断の補助金制度が設けられている場合があります。そのため耐震診断を利用したい方は、補助金制度を利用することをおすすめします。
ただしこの補助金制度は、条件つきであることがほとんどです。特に、古い耐震基準で作られた物件であるかどうか、という点は条件にされることが多いでしょう。
耐震診断を考えている方は、一度お住いの自治体のホームページから補助金制度の条件を確認することをおすすめします。
まとめ
壁のひび割れが発生する原因としては地震や地盤沈下、経年劣化や乾燥などが考えられます。ヘアークラックとよばれる小さなひび割れですと、基本的には、建物の構造に影響はないとされております。すぐに修繕する必要はありませんが、大きなひび割れに発展する可能性もあるので、定期的にチェックをおこないましょう。
構造クラックなどの大きなひび割れは、放置すると雨水による建物内部の腐食や倒壊につながりかねません。ここまでのひび割れとなると自分で修繕するのは難しいので、業者に依頼しましょう。
ただ、ひび割れを修繕したら一安心ではありません。耐震性能が低い建物だと、地震の際に再びひび割れをおこす可能性があります。またひび割れだけで済めばよいですが、大きい地震で倒壊することも考えられます。いつ起こるかわからない地震に備えて、一度耐震診断を受けてみましょう。
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