一軒家は寒い?ウワサの真偽と寒さを撃退する断熱のススメ

2021.4.30

一軒家は寒い?ウワサの真偽と寒さを撃退する断熱のススメ

「夢のマイホーム」という言葉をあまり耳にしなくなった昨今でも、一軒家に住むことを目標として日夜仕事に励んでいる方は多いかと思います。集合住宅のようにお隣に気兼ねすることのない、一国一城の主という実感は何物にも代えがたい充足感があります。

しかし、待望の一軒家を購入して、いざ住んでみるとなんだか寒い……マンションやアパートに比べて冷え込みが厳しい、そういったお悩みはありませんか?一軒家は寒いとよく言われますが、原因は一体どこにあるのでしょうか。
集合住宅と比較した場合の一軒家の冷え方にどんな差があり、どのような対策が可能なのか、本コラムではまとめてご解説いたします!

一軒家は本当に寒いのか?

まずは大前提として、『一軒家は寒い』という風潮は実際のところ合っているのでしょうか?
結論から言いますと、現代の一軒家は極端に寒いというわけではないとされています。建築技術の発展にともなって、家屋の気密性や断熱性は年々高まってきています。採光窓の向きや壁の厚さもしっかりと設計されていて、ある程度の日照条件があれば、室温を十分保つことができると言われています。

ただし、『マンションやアパートと比較して』という言葉が前に来ると少し事情が変わります。一軒家であっても快適に生活するのに十分な暖かさを得ることができますが、それ以上にマンションやアパートといった集合住宅は冷えにくい構造をしています。集合住宅の部屋は周囲を他の部屋に囲まれているためです。

寒風吹きすさぶ外の空気に、壁の触れる面積が少なければ少ないほど室内の熱は逃げにくくなります。仮に左右隣と上階下階の部屋に囲まれた一室の場合、外気に触れる部分は窓のある壁一面だけとなるため、熱が逃げていく場所はそこしかありません。一軒家の場合は逆に四方八方が開けた空間になっているため、あらゆる場所から熱が逃げていきます。
加えて集合住宅の場合は他の部屋で焚いた暖房の熱が壁を通して伝わってくることもあるため、より暖かさを得やすいということになります。

以上のことから、『一軒家は(集合住宅に比べたら)寒い』という主張は間違ってはいないと言えます。集合住宅から一軒家に移り住んだときに感じる寒さはこれが原因というわけです。
      一軒家は本当に寒いのか?

暖かい空気は上に冷たい空気は下に

一軒家が寒いとされる理由にはもう一つ、「家の中の温度差」による影響があります。
基本的に空気は暖かいと上昇し、冷たくなると下降する性質があります。温度が高くなって膨張した空気は密度が下がって軽くなるため、暖かい空気が冷たい空気の上に『浮いた』状態になるわけです。沸かしたお風呂を放っておくと底の方から冷めていくのも同じ理由です。

この性質がどう影響するかと言うと、一軒家の場合二階建てであることが多いかと思われます。その場合、階段や吹き抜けを通じて暖かい空気は上階に、冷たい空気は下階にと、同じ家の上下階で温度差が生まれてしまいます。生活の中でとくに過ごす時間の多い下階のリビングを暖房で温めても、暖かい空気は上階へ行ってしまい、代わりに冷たい空気が降りてくることになるため、寒いと感じる機会が多くなるわけです。

集合住宅はワンルームであったり、上下階に分かれていないことが多いため、温度差の影響が少ないとされています。こう考えると、一軒家は『寒い』というより『暖めにくい』と言った方が適切なのかもしれません。
       暖かい空気は上に冷たい空気は下に

一軒家が寒いのは断熱性能の違い?

一軒家が寒い原因を語るうえで外せないのが『断熱性能』です。先ほどご説明したとおり、集合住宅は一軒家に比べて熱が外へ逃げにくい構造をしています。これはすなわち、「集合住宅は断熱性能が高い」と言い換えることもできます。断熱性能は外から伝わってくる冷気をどれだけシャットアウトできるかを表す言葉です。

たとえば集合住宅であれば、もともと冷気を通しにくい鉄筋コンクリート造りの壁が多いことに加え、両隣や上下の部屋そのものが断熱材の役割を持っています。一戸建ては周囲に何もないので、壁一枚分の断熱性能で寒さに立ち向かわなくてはいけません。

そのため、一軒家が寒いかどうかは建材の持っている断熱性能にダイレクトに影響を受けます。とくに築年数の古い家屋が寒くなるのは、建材の断熱性能が現代の家屋に比べて低いものが多いためです。
      一軒家が寒いのは断熱性能の違い?

寒さ対策をすることで暖房費の節約に

前項では集合住宅と一軒家の断熱性能の違いについてご説明しましたが、逆に言えば、家の断熱性能を高めることで、一軒家は温めやすく冷えにくい環境をつくることができるということでもあります。

一軒家が寒いと感じる場合は、建材の断熱性能を見直して寒さ対策をしてみましょう。理想的な断熱が保たれていれば、一度暖めた室温が長く維持されるため、暖房に使われる光熱費を抑えることにもつながります。冬に限らず夏場においても、断熱性能が高ければ外の熱を家の中に通しにくく、冷房費用の削減になります。

一軒家の寒いを解決する部分別のポイント

一軒家の「寒い!」を解決するために、家の各所で部分ごとにとれる対策を挙げていきます。

窓でできる対策

家の中でもとくに熱の逃げやすい、つまり断熱性能の低い部分が窓です。厚さ数ミリの薄いガラスは熱伝導率が高いうえに外気に直接触れる場所であるため、夏でもひんやりと冷たくなっています。リビングや和室などに設置されている人の出入りが可能な大型窓は『掃出し窓』と呼ばれ、室内の熱の実に50%近くがこの窓から逃げていくとされています。冬場に窓に大量の水滴が付着しているのは、窓がとくに冷えていて、結露が発生しやすいためです。
窓の断熱性能を高めるには二つの方法があります。
  

窓と空気を直接触れないようにする方法

雨戸やシャッターは外気と窓を遮断してくれますし、カーテンは窓と部屋の空気とを遮断してくれます。分厚い布地のカーテンはとくに断熱に有効で、窓ガラスが露出しないようにしっかりと覆えば、窓から伝わる冷気をカーテン内に押しとどめてくれる効果があります。

窓ガラス自体の断熱性能を高める方法

ガラス部分がとくに熱を奪いやすいため、市販の断熱フィルムを窓に張り付けることで熱を通しにくくすることができます。光を取り入れる小窓など、透明性を重視しない箇所であれば、梱包材に使われているエアーキャップ(いわゆるプチプチ)を窓一面に張り付けることでも冷気を遮断する効果を見込めます。

また、窓ガラスの中には二枚のガラスで中空層を挟み込んだ『複層ガラス』といった特殊な断熱ガラスがあり、これを使用することでも断熱性能を引き上げることができます。窓ガラスの交換には工事が必要となるため費用はかかってしまいますが、非常に高い断熱性能と透明性を両立する断熱ガラスは冬の寒さにてきめんな効果をもたらします。窓交換のイニシャルコストと、削減できる光熱費などのランニングコストを天秤にかけて、工事を検討してみる価値は十分にあるでしょう。
      一軒家の寒いを解決する部分別のポイント

床でできる対策

床も室内の熱を奪いやすい部位です。畳は優秀な断熱素材ですが、一般的な家屋に多く使われているフローリングや板張りの床は床下からの冷気を室内に通しやすいとされています。

床からの冷えを防ぐには、絨毯を敷くなどの対策が有効です。カーテンにも言えることですが、とくにウール製の布は内部に空気を含むため断熱性能が高いのが特徴です。フローリングに絨毯や薄手のマットを敷いて、床下から昇ってくる冷気をシャットアウトしましょう。

床下でできる対策

床が冷えるのは、床下から冷気が昇ってくるためです。つまり、床下に断熱対策を施すことで冷気の元を断ち、冷えにくい床にすることができるということです。床下は日光が差さず、冷えた地面からやはり冷気が立ち上ってきます。これを遮断するには、床下に断熱材を仕込む方法が有効とされています。

断熱材はロックウールやグラスウールと呼ばれる繊維の束を押し固めたものが一般的で、繊維間に空気を溜め込んでいるため熱を通しにくい性質があります。床下断熱は、この断熱材を床下の地面に敷き詰めて、地面の冷気を押しとどめる施工です。専用の断熱材を使用するほか、発泡スチロールや発泡ウレタンといった熱を通しにくい素材を敷き詰める工法もあります。
      一軒家の寒いを解決する部分別のポイント

換気でできる対策

熱を外に逃がさない対策以外にも、お部屋の寒さを防ぐ方法があります。前項で解説したとおり空気は暖かいと上昇し、冷たいと下降して、家の中に温度差が生まれます。それならば、お風呂のお湯をかき混ぜて湯温を均一にするように、空気も撹拌すれば温度差を均すことができます。

専用の送風機やサーキュレーターを使うほか、扇風機を首振りモードで壁に向けて運転させることで、壁に当たった風が上下に分かれて空気の流れを生み出し、家の中の空気を上へ下へとかき回します。温めた空気を家全体で循環させ、冷たい空気が滞留しないようにしましょう。

暖房でできる対策

暖房器具の使い方にちょっとした工夫を加えることでも、お家を効率よく暖めて寒さを防ぐことができます。

エアコンやファンヒーターを使って室内を暖める場合、最初にしっかりと室温を設定温度まで上げてから、それを維持するように運転させると消費電力を抑えつつ快適さを保つことができます。温度管理で重要になるのは暖め続けることよりも、暖めた室温を維持することです。先に挙げた断熱の工夫と併用して、暖めた室温が逃げないようにしましょう。

大型の放熱板から輻射熱を放って部屋を暖めるパネルヒーターは、置く場所を工夫することで高い効果を見込めます。窓の傍、カーテンの真下あたりに設置することで、カーテンの隙間から流れ込んでくる冷気を受け止めて暖めなおします。普通に使用するよりも部屋が冷えにくくなるとされています。
      一軒家の寒いを解決する部分別のポイント

寒いときは足元を暖めよう

これはお家の断熱とは少し離れた内容になりますが、一軒家で寒いと感じるときは自分自身の保温を重視したほうがよい場合もあります。部屋を暖めるより自分を暖めた方がよりダイレクトに寒さを和らげることができるのは言うまでもないことですが、ここにも工夫の余地があります。

冷たい空気は下の方に流れていきます。ということは、身体の中でとくに寒さを感じる部分は足元です。足先の冷え症にお悩みの方も多いのではないでしょうか。足元をしっかりと暖めることで、収縮した血管で滞っていた血液の循環が活発になり、身体全体がぽかぽかとしてきます。

室内における足元の寒さ対策で一番効果が高いのは、室内履きのスリッパを用意することです。フローリングは床下からの冷気で冷たくなっているので、直接足が触れているとどんどん体温が奪われていってしまいます。家の中が寒いときはもこもこのスリッパを履くなどしてフローリングの冷気を遮断しましょう。保温性の高い靴下を履くことも効果が高いです。
      寒いときは足元を暖めよう

まとめ

一軒家が寒いと言われる理由とその対策についてここまでご紹介してきました。要点をまとめますと下記の通りになります。

・一軒家は集合住宅と比較すれば冷えやすい傾向にある。部屋の周囲に何もなく、熱が外に逃げやすいため。

・暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降する性質があるため、一軒家では一階と二階で温度差が生まれやすい。

・鉄筋コンクリートや周囲の部屋が断熱材としてはたらく集合住宅と違い、一軒家は建材の断熱性能が寒さに直結する。

・家の断熱性能を高めることで、暖房費用だけでなく夏場の冷房費用も抑えやすくなる。

・家の中には冷気の入って来やすい場所がいくつもある。とくに窓や床は断熱対策を施すことで、熱を逃がさず部屋を暖めやすくする効果が高い。

・断熱対策だけでなく、空気をかき混ぜて温度差を均一にしたり、暖房器具の使い方を工夫することでも家の寒さを改善することができる。

・家が寒いときは自分自身の体温を逃がさない工夫をした方が有効な場合もある。とくに足元は冷えを感じやすいため、スリッパや靴下などで保温をするのがおすすめ。

本コラムでは自分で出来る断熱対策を重点的にご紹介してきました。根本的に家の断熱性能を向上させるには、壁や天井にも断熱材を入れる断熱工事が有効な場合があります。寒さは快適性を損なうだけでなく、ヒートショックや脳卒中など健康を損なうリスクもある重要な要素です。断熱工事のプロに施工を依頼して、安全で快適な生活を手に入れましょう!

断熱工事を依頼できる業者や料金

依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「断熱工事」をご覧ください。

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