攻撃性が高く、しかも毒針を持っていて死亡事例もあると聞けばヒアリに対する警戒は高まります。日本では2017年、神戸港に荷下ろしされたコンテナからヒアリが初めて確認されました。そして2019年10月、東京港の青海ふ頭で飛行前の女王を含むヒアリの群が相次いで確認されました。
しかし在来種のアリのなかにもヒアリに似た特徴を持っていることから、間違われる例も後を絶ちません。もしも住宅地にヒアリが現れたとき、定着させないためには「在来種を残すこと」も重要な部分になります。
今回はヒアリとアリの違いについて、詳しく解説していきましょう。
目次
ヒアリとほかのアリを見分けるポイント
アリは世界には3万種以上、日本だけでも300種類以上いるといわれており、それぞれ区別できる特徴を持っています。「フタフシアリ亜科・トフシアリ属」に属するヒアリも例外ではなく、次のような点をすべて満たすことで、日本にいる在来アリと区別することが可能です。
大きさとそのばらつき
ヒアリはやや小型のアリですが、働きアリだけでもその大きさは2mmから6mmと多様です。
日本の在来アリの中にも「兵アリ」(メジャーワーカー)と呼ばれる階級を持つ種類はいますが、オオズアリのように極端な大きさか、もしくはクロオオアリのように通常の働きアリ(マイナーワーカー)と同じ大きさであることがほとんど。ヒアリのように「大きさは違うが姿はほぼ同じ」という部分は、ヒアリを見分ける重要な手掛かりとなります。
背中周辺
ヒアリとほかのアリを見分ける残り2つの手がかりは、拡大鏡を使わなければ判別は困難です。そのチェックポイントのひとつが、アリの背中周辺にあります。
日本の半数以上の種は、ヒアリも含む「フタフシアリ亜科」に属します。この分類のアリの特徴として、足の生える胸部と腹部(正確には腹部前部と後部)のくびれ部分に、2つの山があることがあげられます。とくにヒアリはこの山が特徴的で目立つため、判断材料とされることが多いです。
加えてアリの多くは胸部(正確には腹部前部)に1対の突起を持っていますが、ヒアリにはこれがありません。
触覚
ヒアリと見られるアリの死骸や、細かいところまで写った写真がある場合は触覚についても合わせてチェックしてみましょう。
アリの触覚はアゴの上から前方に向かって「くの字」に生えています。そしてその先端が太くなっている種も多く、「こん棒部」と呼ばれます。さらに触覚は細かく動かせるよう、細かな「ふし」に分かれていることが特徴です。
ヒアリの場合、このふしが曲がる手前に1節、その後細かく7節に分かれた後、こん棒部が少し長く2節で構成されています。ヒアリに似た日本の在来アリはこの部分が3節でできていることも多く、見分けるための有力な手掛かりになるでしょう。
これらの手がかりを念頭に、一度ヒアリの写真をよく観察してみてください。
(ヒアリ。沖縄科学技術大学院大学webサイトより引用・縮小加工)
アカカミアリ・ヒアリの判別は非常に困難!
ヒアリとともに侵入が問題視されているアリとして、「アカカミアリ」という中米地域原産の種類があげられます。
ヒアリと同じトフシアリ属の在来種アリとしては「トフシアリ」「オキナワトフシアリ」の2種がいますが、どちらも体長は1mm前後と非常に小さく、さらに地面の上に顔を出すことはめったにありません。
一方「アカカミアリ」は以前から小笠原諸島・硫黄島や沖縄の米軍基地周辺で定着が確認されているトフシアリ属の外来種です。アメリカではヒアリと合わせて「Fire Ant」と呼ばれることからもわかるように、ヒアリとよく似ているのです。
そのため、ヒアリとアカカミアリの違いは次のような細かい点に限られます。
- アリ塚を巣にするか。ヒアリは大規模な群になると土を固めてアリ塚内に巣を作るのに対し、アカカミアリは地下に巣を作る
- 大型の働きアリ(ワーカー)は、アカカミアリの場合やや頭部が発達しやすい傾向。左右を二分割する溝ができることも 上あご部分の突起の数の違い。ヒアリは3つ突起があるが、アカカミアリは真ん中の突起がない
- 前足付け根の突起有無。アカカミアリには突起があるが、ヒアリにはない
ただしアカカミアリもヒアリと同じく特定外来種であり、日本本土に定着しないよう監視が続けられています。そのため「ヒアリらしきアリ」を見かけた時点で、速やかに行政へ届け出るようにしましょう。
在来種アリの特徴まとめ①ヒアリと間違えられやすいアリ
港湾地域でのヒアリ確認が報道されると、住宅地などでもヒアリらしきアリを見つけたというSNSなどの報告や行政への届け出が相次ぎました。しかしそれらほとんどはヒアリではなく、日本の在来種のアリでした(海外からの荷物の梱包内に、ヒアリの女王アリが紛れていた事例は存在)。
そのため、まずはとくにヒアリと間違えられやすい在来種のアリについて確認してみましょう。
シリアゲアリ属のアリ
(写真はハシブトシリアゲアリ)
シリアゲアリは「腹部のくびれ付け根」がほかのアリと比べ、かなり上側(背中側)にあります。そのため歩くときや威嚇する際には上に持ち上げて歩くという特徴があり、その名が付けられました。
また腹部はその形も特徴的で、後ろに向かって尖った円錐状をしています。このことから英語圏では「ハート形」にたとえ、「Valentine ant」と呼ぶことも少なくありません。
シリアゲアリの中でも「明るい黄色(女王アリは赤褐色)」をしているキイロシリアゲアリ、赤褐色をしているハシブトシリアゲアリがとくに間違えられやすいといわれています。
ヒメアリ属のアリ
ヒメアリは1.5mm程度と非常に小さく、屋内に侵入し巣を作ります。そのため見かける機会が多く、大きさ以外の特徴も似ていることから間違われることが多いようです。
ただしヒメアリは非常に増えやすく、外来種のイエヒメアリは腹部の針で人を刺すことがあります。毒こそありませんが、場合によっては駆除が必要になるでしょう。
アミメアリ属のアリ
アミメアリはつやのあるヒアリなどと異なり、頭部・胸部表面に「網目」が入ってざらざらした見ためである点が大きな特徴です。また腹部も尖っておらず、円状に近いのが見分けるポイントといえるでしょう。
なお、アミメアリは集団で生活しますが女王アリは存在せず、巣内に留まる働きアリが自ら卵を産んで育てます。またオスアリが生まれることはあるものの、生殖には関わりません。
オオズアリ属のアリ
(写真はオオズアリ)
オオズアリの特徴は「大きく発達した頭部を持つ兵アリ(メジャーワーカー)」を持つことです。
オオズアリ属のなかでも「アズマオオズアリ」は赤褐色で、ヒアリと間違えられることの多い種類です。
トビイロシワアリ・オオシワアリ
とび色とはタカ科のトビ(とんび)の持つ羽毛の色で、赤褐色に近い色をしています。トビイロシワアリは基本的に黒に近い見た目をしていますが、光の当たり具合などによっては赤褐色のヒアリと間違われることが少なくありません。またオオシワアリも明るめの色をしており、ヒアリと間違われることがあります。
「トビイロシワアリ」の特徴は縦に入る線状の模様です。一方オオシワアリは網目状の模様を持っており、どちらもあまり光沢がないのがヒアリと見分けるポイントといえるでしょう。
アメイロアリ
べっこう飴のような明るい褐色をしたアリが「アメイロアリ」です。そのなかでも頭部・腹部が暗めの色、胸部が明るめの色と分かれていることが特徴といえるでしょう。さらには光沢を持っているため、ヒアリと間違われることも少なくありません。ただし地域によっては全身が暗めの色をした群を見かけることもあります。
大きさはヒアリよりやや小さく、2mm前後。腹部が大きい点も確認のポイントになるでしょう。
そのほか似た色をした仲間に、1mm程度と非常に小さい「サクラアリ」がいます。
在来種アリの特徴まとめ②赤いアリ
ヒアリと間違われやすいアリ以外にも「赤い見た目」を持つ在来種のアリはいくつかあります。その中でも大型の「エゾアカヤマアリ」「ツノアカヤマアリ」「ムネアカオオアリ」をご紹介しましょう。
エゾアカヤマアリ
北海道を中心に東北などの山間部に分布する、やや大型のアリです。とくに北海道・石狩湾沿いに作られた巣は隣の巣同士が協力関係にあり、巨大なコロニーとして知られています。
またエゾアカヤマアリは巨大なアリ塚を作ることでも知られます。ただしヒアリとは材質が異なり、枯れ草などが積み上げられたものです。
ツノアカヤマアリ
頭部の後ろがくぼみ、左右1対の鬼の角のように見えることが特徴のアリです。女王は最初巣を作らず、クロヤマアリの巣にもぐり込んで働きアリ(ワーカー)を増やすことがあるという、変わった性質を持つアリです。
ムネアカオオアリ
その名の通り胸部が赤褐色、頭部と腹部が黒い色を持つ大型のアリです。働きアリでも体長は8mmを超えることから、ヒアリとの違いははっきりとわかるでしょう。
その他のヒアリと間違われやすい虫
ヒアリの侵入に伴ってアリに目を向ける人が増えたのか、あまり知られていない虫を「ヒアリではないか」と疑う人も少なくありません。とくに間違われやすい種が「アリグモ」です。
アリグモ
正確にはアリでも昆虫でもありませんが、その見ための珍しさから「ヒアリではないか」と疑われることが多い種類です。とくに幼体は明るい色をしていることから、間違えられやすいと考えられます。
その名の通り足が8本の「クモ」なのですが、前足をアリの触覚のように見せ錯覚させているのが特徴です。
ヒアリの敵は在来種って本当?
ヒアリについて心配するあまり、現段階でアリ駆除の対策を考えている方もいるかもしれません。一方で「ヒアリの敵は在来種」という話を耳にした方も多いのではないでしょうか。駆除対策を取るべきか取らないべきか、その根拠となるのは「アリの縄張り意識」です。
アリの持つ縄張り意識
生存競争で勝ち残るため、自分がエサを取るための「縄張り」を持つ動物や昆虫は少なくありません。社会集団性を持つアリも例外ではなく、群れの持つ縄張りにほかのアリが巣を作ろうとすると排除しようとする傾向にあります。
一方でツノアカヤマアリの女王はクロヤマアリなどほかの種の巣に侵入し、自分の働きアリを増やしてから出ていくことがあります。またトビイロシワアリの働きアリに世話をしてもらうヤドリアリなどもいます。
積極的に狩りに行くわけではない
在来種のアリの抵抗はあくまで「生存競争」の範囲にとどまります。そのため遠くの巣まで襲いに行くとは考えにくく、一度定着すればそれ以上の抵抗は望みにくいといえるでしょう。むしろ攻撃性の高いヒアリが在来種を駆逐するおそれもあり、ベイト剤などのアリ駆除対策で対策する必要がでてきます。
なお日本の在来種のアリの中には、他種のアリの巣を乗っ取る「オオハリアリ」や「サムライアリ」などもいます。しかし襲う種はそれぞれ決まっており、現段階でヒアリを対象とすることはないと考えられます。
必要以上の駆除はヒアリを定着しやすく
ただし「ヒアリ予防のためにアリ駆除をする」のは逆にヒアリを定着しやすくするおそれが高いといえます。
女王アリの死亡リスクがもっとも高いのは、生まれた巣から飛び立ち、単独で巣作りをはじめるときです。単独で巣を作り始めるこのリスクを回避するために飛行をおこなわず、元の巣の近くで働きアリを共有する「アルゼンチンアリ」などもいるほど。
しかしヒアリが確認されていない地位で駆除をしてしまうと、もしヒアリの女王が飛んできた際、巣作りを妨害するほかのアリがいないという事態に陥ります。そのため女王アリにとっては敵が少なく、安心して働きアリを増やすことができるのです。
ただしアリはカイガラムシやアブラムシなど農業害虫を保護したり、屋内に侵入して貯蔵していた食料に被害を与えるといった面もあります。アリの害に悩まされている場合は、ヒアリが確認されていなくても継続したアリ駆除で対策する必要が出てくるでしょう。
もしもヒアリを見かけたら
ではもしも身近でヒアリらしきアリを見かけた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。この章では推奨される対応をご紹介します。
2019年11月時点では、住宅街で見かける可能性は低い
ひとつ覚えておいて欲しいのが、現在のところヒアリの定着は港湾部に限られ、住宅地で見かける可能性は低いという点です。そのため新たな報道発表があるまでは「ヒアリではないかもしれない」という認識を持つことが必要といえるでしょう。
ヒアリの見分け方については1章にて詳しく説明しました。まずはこれらの特徴を満たすか、今一度確認してみましょう。
少数なら殺虫剤で駆除できる
ヒアリは基本的に列を作ってエサを運びます。そのためヒアリらしきアリが少数しかいない場合、たまたま運ばれてきたという可能性も否定できません。
その際にはアリを逃がさないよう、市販の殺虫スプレーを吹きかけるなどの対応も可能です。処理した後は手で触れないようにしつつ小さな容器などに入れ、行政に確認してもらうことをおすすめします。
多数なら行政に連絡
一方でヒアリが列をなしている場合など、巣を作っていると考えられる場合は行政や専門家による状況の確認が必要です。殺虫剤などをかけると女王アリが逃げ拡散することも十分に考えられるため、触れないようにしつつ速やかに連絡を取りましょう。
まとめ
ヒアリに似た在来種のアリは意外と多く、ヒアリだと思っても無害なアリだったという例は少なくありません。ヒアリとアリの違いをしっかりと確認し、実際にはどの種類なのか見分けられるようにしていきましょう。
ただし在来種のアリでも家に侵入したり、農作物につく害虫を保護するなどで被害を与えることはあります。こうした被害にお悩みの方はアリ駆除のプロとも相談し、適切かつ継続した対策を取るようにすることが大切です。
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