床下や壁から何やら違和感のある音が。そんなとき、思い浮かべるのが家を支える部材をかじってしまうシロアリではないでしょうか。
シロアリの被害が出ているのであれば早めに対処したいところではありますが、確実にシロアリだ、という証拠がなければなかなか頼みにくい気持ちも悩みどころです。もしかして別の原因では?と考えるとだんだん後回しになっていって、依頼するころには大きな被害になっていることもあります。
今回はシロアリの出す音から、被害の確認方法と対策を考えていきましょう。
目次
シロアリが出す音にはどういうものがある?
まずはシロアリがどのような音を出すか、行動面から見ていきましょう。
木材をかじる音は聞こえない
シロアリは木材や段ボール・紙など、植物の骨格部分である「セルロース」を含むものを栄養源としてかじります。しかしセルロースは食物繊維とも呼ばれ、基本的に消化しにくい物質。牛の反すうやウサギの食糞など、微生物の力を借りることではじめて栄養になることも多いのです。実際人家に被害を与えるヤマトシロアリやイエシロアリなども微生物なしでは消化できません(ただしシロアリの大半は単独で消化可能)。
そのような「堅い」物質である木材なら、シロアリがかじると音が聞こえるように思えるでしょう。しかしごく小さい音のため、その音が部屋まで響くということはないのです。
ただし音自体は存在していることも事実。かじるときに出す「超音波」部分を検知し、シロアリを探す研究が進みつつあります。普及すれば、木材の内部に潜むシロアリを発見しやすくなることでしょう。
カタカタという警戒音
社会集団性を持つ虫は、巣に迫る危険を見つけたら外敵に威嚇しつつ速やかに全体へ共有しなければなりません。たとえばスズメバチの巣に近づいた場合、カチカチと顎を鳴らす音が聞こえることがあります。それでも立ち去らない場合、集団で攻撃をはじめるのです。
シロアリも外部から刺激(衝撃など)が加えられた場合、カタカタと音を出すことがあります。この音を出すのは顎が大きく発達した「兵アリ」という種類です。シロアリの大半は幼虫であり職アリですが、一部は闘いと栄養貯蔵に特化した「兵アリ」へと変化することが知られています。
聞こえたら要警戒!シロアリ被害の証拠となる音
シロアリが出す音以外にも、シロアリが住みついているときに聞こえる音がいくつかあります。この章ではそんな「被害の証拠となる音」を見ていきましょう。
木材がきしむ音
木材は寒暖差や湿度によって収縮するものであり、たとえ新築住宅であっても木材がきしんだ音は聞こえるのが通常です(むしろ新築からある程度は通常よりきしみやすい)。しかし特定箇所からのきしみ音が大きい・鳴る回数が異常に多いというときはシロアリの被害を疑ってみてもよいでしょう。
というのは家を支える木材がシロアリにかじられ、弱っているおそれが考えられるからです。たとえシロアリ以外の要因(水が漏れていて、木が腐っているなど)でも点検が必要になるため、一度確認してみましょう。
床が鳴る
二条城の二の丸御殿や寺院などの床はうぐいす張りといって、あえて床を踏むと床材同士がこすれ合い音が鳴るようにできているとされます。しかし通常の家、とくに現代住宅ではそのような施工はされません。それなのに床が鳴る、ということはシロアリの被害が考えられます。
とくに水回りの場合、床を支える部材が被害を受け緩んでしまい、音の原因となっていることも。床がへこむだけでなく、ゆくゆくは抜けてしまうおそれも高いのです。こうした床鳴りを聞いたときは一度シロアリ被害を疑ってみてもよいでしょう。
ただし新品のフローリングだと木材の収縮が大きく、それが床鳴りの原因につながっていることもあるので注意です。
空洞音
柱や壁の柱部分を叩いたところ、ほかとは違う軽い音がするというときもシロアリ被害が考えられます。シロアリは外気を嫌うため、木材の内部から食べていきます。そのため見た目には被害がないように見えても、実は被害にあっているということが少なくありません。
もちろん部材によって音の性質が異なります。単純に軽い音だからと判断せず、音を聴き比べていくのが重要です。
音だけでなく、ほかのサインも併用しよう
音はシロアリ被害を受けているという目安にはなりますが、ほかの要因も絡んでくるため「確実にシロアリがいる証拠」にはなりません。シロアリ被害は音だけでなく、次のような着目点を押さえて確認してみましょう。
蟻道を探してみよう
ヤマトシロアリやイエシロアリなど土壌性シロアリは外気に触れることを嫌うため、コンクリートなどを移動する必要があるときは自身の分泌物や土などを使い、細いパイプのようなものを作ります。それが「蟻道」と呼ばれるものです。とくに「生活する拠点」と「木材をかじる部分」が分かれるイエシロアリでは移動のための蟻道が目立つ傾向にあります。
木材に穴が開いていないか確かめてみよう
木材の内部をかじるとはいえ、入り口がなければかじることも困難です。木材の内部を食べられている場合は穴がないか、土などでその部分がふさがれていないかなどを確認してみましょう。ひび割れ部分に関しても同様です。
シロアリではない!?勘違いしやすい音は
シロアリと勘違いしやすい音として「何かをかじる音」があげられます。しかし先ほどお伝えした通り、シロアリが木材をかじる音はごく小さなもの。人間の耳まで聞こえてくることは考えにくいのです。では、その正体は何なのでしょうか。ほかの勘違いしやすい音とともに見ていきましょう。
かじる音はネズミの可能性が大!
部屋の中で聞こえるほどの何かをかじる音、として考えられる一番大きな可能性は「ネズミ」です。ネズミというと天井裏では、と思うかもしれません。しかし狭いところにも入り込みやすく、床下や壁の中だといって安心はできないのです。
ネズミをはじめとするげっ歯類(げっ歯目・ネズミ目)はウサギなどと同様、一生歯が伸び続けるという特徴を持っています。そのため何かしらで歯を削る必要があり、家の柱などをかじることが少なくありません。また侵入口を作るために削っている、ということもあるでしょう。そのほか、害獣に分類されるイタチなどが侵入しているおそれもあります。
ネズミも食品などに危害を加えるおそれが高く、油断はできません。「家でネズミが出す音は?ネズミの見つけ方と駆除方法もご紹介!」も参考に、対策に当たりましょう。
ゴキブリの鳴き声?
「ジジジ」という音であれば、それはシロアリではなくゴキブリかもしれません。ゴキブリは自らに危険が迫った場合のほか、オス・メスの求愛行動としてはねを震わせ音を出すことがあります。
しかしオス・メスが求愛行動をしている状態というのはその後大量発生につながるおそれも出てくるでしょう。シロアリでなくても、駆除などの対処は必須といえます。ゴキブリの駆除に関しては「赤ちゃんゴキブリは大量発生のサイン!?巣穴を見つけて駆除をしよう」もご参照ください。
シロアリの対策はプロへ依頼を
もし音の正体がシロアリだった場合、できるだけ早く駆除したいものです。しかしシロアリは対処が難しく、自分での駆除(DIYでの駆除)は困難なものとなります。
なぜシロアリ対策は難しいか
ヤマトシロアリやイエシロアリは基本的に「土」から侵入してきます。一方でシロアリが潜むのは床下に限りません。とくに乾燥に比較的強いイエシロアリやカンモンシロアリ(中国から侵入したヤマトシロアリ亜種・山口県周辺に生息)では2階や3階にも巣を伸ばしているおそれがあるのです。
また土壌とは関係なく生息域を伸ばす「アメリカカンザイシロアリ」などもおり、「どのシロアリか判別しつつ」「そのシロアリに合った対策法を取る」必要が出てきます。
また害虫駆除というと殺虫スプレーのイメージが強いかもしれません。しかしシロアリは基本的に「弱者」、巣に危害が加えられると大半が逃げていく虫です。そのためかえって家全体にシロアリが分散してしまい、被害が大きくなるおそれが出てきます。
シロアリ駆除ってどうおこなうの?
ではシロアリ駆除をプロに依頼した場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。その内訳を決める要素が「工法」です。
シロアリの駆除方法としては、毒エサを設置して内部からシロアリの巣を根絶させる「ベイト工法」、床面や被害のあった木材に対し薬剤を塗って遮断する「バリア工法」という2つがあげられます。ベイト工法は使用する薬剤が抑えられるぶん定期的に点検する必要がある、バリア工法は比較的安く抑えられるものの確実に施工する必要があるなどそれぞれ一長一短です。どちらが適しているかの判断も含め、一度プロへ相談してみてください。
まとめ
日常生活を過ごすにあたり、敏感に感じるのが「音」です。しかしシロアリは鳴きませんし、木をかじる音もほとんど出しません。一方でシロアリ被害を受けた木材は音で見分けられることが多く、音がひとつの判断基準となるでしょう。その意味で「シロアリ」と「音」は全く無関係ではありません。
ただシロアリは静かに家をむしばんでいきます。家の構造を大きく弱めることにもつながりかねないため、被害の特徴となるものを見かけたらできるだけ早く対処してください。シロアリも初期対応次第で、被害の大小へとつながっていきます。自分で対処しようとして音を上げる前に一度、シロアリ駆除のプロに相談し、被害箇所を正確に特定していきましょう。
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