片流れ屋根は雨漏りしやすい?!原因は棟部分や劣化しやすい外壁かも

2021.7.15

片流れ屋根は雨漏りしやすい?!原因は棟部分や劣化しやすい外壁かも

日本の住宅に使われる屋根には、形状の異なるさまざまな種類があります。なかでも平屋の家に近年急速に普及しつつあるのが、「片流れ」と呼ばれる形状の屋根です。しかし、なぜ片流れ屋根が人気なのかはご存知でしょうか?

ご自宅の屋根を片流れ屋根にしようか検討している場合は、近年人気の理由や特徴的な形状ゆえのデメリットなどについて知っておく必要があります。

屋根を選択する際には、構造やそれにともなう特徴を知らなければ、雨漏りなどのトラブルが発生した場合の対処や、トラブルを未然に防ぐためのメンテナンスを適切におこなうことができません。

このコラムでは、片流れ屋根の構造やメリット・デメリットについて解説します。デメリットを解消するための対策もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

近年人気の「片流れ屋根」ってどんな屋根?

人気の理由を知るためには、まず片流れ屋根の構造について知る必要があります。片流れ屋根とは、一方向だけに傾斜が流れている非常にシンプルな形状の屋根のことです。

一枚の屋根板を斜めに設置することで居住空間を最大限に広げることができ、山形の屋根にある屋根裏のようなデッドスペースを減らすことができます。そのため、狭い土地でも居住スペースを狭めることなく家が建てられるのです。土地の形状にフィットしてバランスのよい見た目になるのもメリットのひとつといえるでしょう。

片流れの屋根は古い住宅にはほとんど使われておらず、多くの場合近年になって建てられた新築住宅です。したがって、片流れ屋根を使っている住宅は比較的築浅の新しい物件だととらえることもできます。

最近まで普及しなかった理由とは

これまで広く普及していた代表的な屋根の形といえば、山形の傾斜をつけてある「切妻造(きりづまづくり)」です。

切妻屋根は、複数の屋根板を山形に設置して頂点にカバーをかけるので、雨漏りしにくい構造となっています。カバーの部分は「棟換気口」と呼ばれ、風力換気システムも備えているため、湿気を屋根裏に貯めこまない構造にもなっているのです。

上記のように、一見メリットばかりの形状のようですが、この山形の屋根は末広がりのため、建設に広い土地を必要とすることが問題になりました。最近は土地が縦長であったりと幅が狭かったりということが多いので、山形屋根を採用すると、居住空間が広く取れないといったデメリットが目立つようになってきたのです。

このような理由から、デッドスペースが少なくて狭い土地でもデザインがフィットする片流れ屋根が普及するようになりました。

片流れ屋根の魅力的なメリット

前章でも簡単にメリットについて触れましが、片流れ屋根が選ばれる理由となる明確なメリットとはどんなものか、改めてご紹介しましょう。

【魅力1】太陽光パネルを設置しやすい

片流れ屋根の最大の特徴は屋根の上の面積が広くとれることです。この特徴によって、太陽光パネルの設置に最も適しているとされています。

電力自由化にともない、自分の家で太陽光発電をおこない、家庭で使う電気を自給自足するというライフスタイルが普及しました。余った電気を売却するビジネスモデルも生まれ、住宅の付加価値として太陽光パネルを設置することは、いまや珍しくありません。

その結果、大型パネルの設置場所が求められるようになっているため、片流れ屋根は強く支持を受けているのです。大型のパネルが設置できるよりよい屋根がなければ、需要もますます増えていく可能性があるといえます。

【魅力2】建築コストを安くおさえられる

片流れ屋根の特徴のひとつとして、屋根が平面をとるため屋根裏の空間が小さくなるという点があります。同じ量の建材で内部空間を広くとれるということになるので、建築コストの削減につながるのです。

つまり、同じ規模の住宅であれば、片流れ屋根にしたほうが安く家を建てられる場合が多いということになります。

【魅力3】シンプルなデザイン

近年の住宅事情を鑑みるに、古い日本住宅のような複雑な形状よりも、箱型でシンプルな住宅が好まれる傾向にあります。シンプルな住宅にマッチするのは、やはりシンプルな屋根ということで、デザイン性から片流れ屋根を採用するケースも増えているようです。

片流れ屋根のデメリット

片流れ屋根は現代の需要に沿った屋根の形状ではありますが、メリットだけに目を向けてしまうと肝心のメンテナンスをおろそかにしてしまうおそれがあります。

ほかの形状の屋根ではあまり気にならないようなデメリットもあるので、そちらも確認しておきましょう。

日照を得られる時間帯が少ない

屋根には重要な役割が2つあります。それが以下の2点です。

1.日光を吸収して家の中を温める
2.屋根裏にこもった湿気を飛ばす

日光をしっかり吸収するためには、屋根の斜面が太陽の方向を向いている必要があります。山形の屋根であれば、斜面は正反対の方向にそれぞれ一面ずつ向いているため、午前も午後も日光をしっかり吸収することが可能です。しかし、片流れ屋根は斜面が1方向にしか向いていません。そのため、十分に日光の当たる時間帯はほかの屋根の半分以下になってしまうのです。

屋根に日の当たらない時間帯は、代わりに家の壁が日光を受けることとなります。すると、暖められた壁から放出された湿気が冷たいままの屋根へと吸収されるのです。屋根に日が当たらないと、吸収された湿気は屋根から出ていくことができず、屋根が常に湿った状態になってしまいます。

過度な湿気は木材に対して大きなダメージとなります。湿気を逃がせないまま何年も経過すると、しだいに屋根が劣化し、雨漏りなどのトラブルの原因へとつながることがあるのです。

自然な換気が起こりにくい

一般的な住宅のほとんどは、屋根裏に換気口を設けることで、自然風による換気をおこなっています。そして、自然な換気がおこなわれるには、空気の入る場所と出ていく場所の二つの換気口が必要です。

しかし、片流れの屋根は一面が屋根、反対側が壁なので、構造上一方向にしか換気口をつくることができません。そのため、自然換気が起こりづらく、屋根裏に湿気がこもってしまい、屋根材の劣化の原因となります。

ただし、送風ファンを設置して湿気を逃がすことで、強制的に換気をおこなうようにすることは可能です。屋根材が長持ちするように、できる限りの対策はしっかりとおこないましょう。

雨どいへの負担が大きい

屋根の上に雨が降った場合、雨水は傾斜の先の雨どいへと流れていきます。両側に傾斜のあるほかの屋根であれば、二方向に分散して流れていくはずの雨水が、片流れの屋根では一方向にしか流れていきません。つまり、同じ雨どいに流れ込む雨の量が倍近くに増えるということになるのです。

小雨程度であれば問題ないかもしれませんが、台風や低気圧で頻繁に大雨の降る時期だと、これがかなりの重量差となります。長年大量の雨水を受け止め続ければ、それだけ雨どいには大きな負担がかかるでしょう。

結果的に、片流れ屋根の雨どいはほかの屋根より壊れやすく、また寿命も短くなる傾向にあるといわれています。

雨漏りしやすい

屋根と壁との間には、通気性を確保するためにある程度の隙間が開けられています。両側に傾斜のついた屋根は、両方向に張り出した屋根の先が「ネズミ返し」の役割を果たすことで、雨水の侵入を防いでくれるのです。

しかし、片流れ屋根の場合はネズミ返しの役割を果たすものが一方向にしか出ていません。そのため、片流れの屋根は傾斜の上側から雨水が屋根を伝って隙間に侵入しやすく、壁からの雨漏りが起きやすい構造となってしまっています。

そして、壁にしみ込んだ雨水は屋根の中にこもってしまいがちなので、これも屋根の劣化につながるのです。

雨漏り被害はとくに注意が必要です!

前章で4つのデメリットを挙げましたが、なかでもとくに注意が必要なのが雨漏りです。雨漏りが発生すれば、屋根材はもちろんのこと、家を支える柱や生活に必要な家財などさまざまなものが被害にあうおそれがあります。

生活を脅かすトラブルが発生しないように、雨漏りしやすい場所や被害を軽減することができる対策についてご紹介しましょう。

雨漏りしやすい箇所

片流れ屋根で雨漏りしやすいのは、おもに以下の2ヶ所です。

・傾斜の上の部分
・屋根の側面

これらには、部材同士の間に隙間ができやすいという共通点があります。傾斜の上部は破風板と野地板、屋根の側面は屋根と外壁の間です。

住宅はいくつもの部材を組み合わせて建てられます。すべての部材をパズルのようにぴったりつなげることは難しいので、できてしまった隙間をふさぐなどして対策をすることが大切なのです。

対策方法

隙間をふさぐ方法としておすすめなのが、透湿ルーフィングで隙間をカバーすることです。ルーフィングとは、野地板と瓦やガルバリウムなどの屋根材の間に敷いて使用する防水シートのことで、透湿ルーフィングはそれに通気性が追加されたもののことをいいます。

水を防いで湿気を逃がすので、雨漏り防止だけでなく湿気による屋根の劣化も防止することができるのです。

一般的に屋根の先端でカットしてしまうところを、隙間を覆うように外壁にまで長さを伸ばすことで水の侵入を防ぐことができます。また、隙間ができてしまう2ヶ所に追加で透湿ルーフィングを張ってもらうのもよいでしょう。

業者によってはシーリングで隙間をふさいでおくという場合もありますが、10年ほどすればシーリングが劣化して割けたり剥がれたりするおそれがあります。

透湿ルーフィングの寿命は50~60年といわれているので、より長く雨漏りに有効な対策をしたいという方は、透湿ルーフィングでの雨漏り対策を依頼しましょう。

片面だけを短くした山形の屋根にリフォームする方法も

どうしてもほかの形状の屋根に変えたいという場合はリフォーム工事も可能です。まったく別の形状の屋根にリフォームすることはもちろん、山形屋根の左右の長さを変えることで形状を片流れ屋根に近いものにすることもできます。

流したい面を長くとり、反対側の屋根を短くします。すると、山形の屋根と同じように通気口がつくれるため、家は傷みにくくなり、片方にのみ斜面が流れ、比較的片流れ屋根に似た形状の屋根に仕上げることができるのです。

山形屋根のメリットを取り入れながら片流れ屋根のスタイリッシュさを再現できるので、大きく形を変えたくないという方には、上記のようなリフォームおすすめです。

建築技術は常に進化し続け、片流れ屋根のデメリットを解消する技術も着々と進化しています。片流れ屋根が普及したての頃に建築したのであれば、最新の技術でカバーすることで雨漏りなどのトラブルや家の傷みを防ぐことはできるでしょう。

屋根のリフォームにかかる費用は、変更する屋根の種類によって変動します。ここでは、代表的な2種類の屋根の形状へのリフォーム費用の目安をご紹介します。

名称 金額
切妻造(二枚屋根) 約200万円~400万円
寄棟造(四枚の屋根で傾斜をつくる形状) 約300万円~600万円

※掲載金額は税抜き価格を提示しております。(2020年7月時点)

屋根のリフォームは決して安い金額でおこなえるものではありません。ご覧の通り金額の幅も大きいので、リフォームを検討する際はまず業者に家を見てもらって見積りをとるのが無難でしょう。家の大きさとのバランスも無視できないので、その家その家に合ったスタイルの屋根を検討することが非常に大切です。

また、リフォーム工事をするときは、施工期間がどれぐらいなのかにも注意をはらいましょう。屋根の形状を変更する工事は、屋根を撤去しておこなうことになるため、工事中の家で生活し続けることは困難です。

月単位の工期になることもあるので、工事中に生活する借り住まいも事前に探しておくことをおすすめします。

まとめ

片流れ屋根は近年の住宅事情にマッチした、近代的な建築が可能な屋根です。太陽光発電のパネル設置やコスト、デザイン性など、ほかの屋根にはない魅力もあります。

しかし、日照時間の短さや自然換気の起きにくさ、雨漏りのリスクなどなどさまざまなデメリットも抱えています。

家は、屋根を含めて今後何十年も付き合い続けていくものです。どのような家を建てるかは慎重に選ぶ必要があります。本記事でご紹介した片流れ屋根のメリット・デメリットを参考にして、理想の家づくりをしてください。

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