耐震壁は耐力壁とどう違うの?揺れに耐える壁の仕組みや種類について

2021.4.30

耐震壁は耐力壁とどう違うの?揺れに耐える壁の仕組みや種類について

日本では地震が多発し、被害を多く受けています。だからこそ、地震についての研究や知識が昔から重ねられ、耐震基準や地震に強い構造などが生まれてきました。

建物の耐震壁もそのひとつで、被害の大きい地震の横揺れによる被害を抑えることができるものです。また、その「耐震壁」とは別に「耐力壁」とも呼ばれるものもあります。今回の記事では、耐震壁と耐力壁がどのように違うのか、そして住宅にどのように配置するべきかを探ってみましょう。

耐震壁とは?耐力壁とは同じもの?

地震の多い日本では、被害を抑えるために建物は一定以上の耐震基準を満たす必要があります。屋根や建物自体の重さや揺れたときの負荷に耐えるため、壁や柱にも厳しい基準が設定されているのです。

耐震壁は、その耐震性を確保するために産まれました。地震による建物の変形を防ぎ、柱のねじれや屋根の負荷を吸収する非常に重要なものです。

しかし、世の中で「耐震計算のときに考慮する壁」には、「耐震壁」だけでなく、「耐力壁」というものがあります。このふたつの違いはどこにあるのでしょうか。

耐震壁は、主にRC造(鉄筋コンクリート製)の建物に使われているようです。建築防災協会の「鉄筋コンクリート構造 計算基準・同解説」においては、変形に耐える壁のことを、耐震壁という言葉に統一して使われています。RC造の建物ならば風などによる変形のおそれが低いため、地震による揺れのみが対象となるので、「耐震」といわれるようになったと予測できます。

一方、耐力壁は主に木造の建物の場合に利用されます。また、建物の耐震基準を明記した「建築基準法」では、この耐力壁という言葉が使われ、耐震壁という表現は見受けられません。木造建築物の場合、地震だけでなく風などによる力も壁が耐えるため、「耐力」という名前になったのかもしれません。

つまり、一般的には耐震壁と耐力壁はほぼ同じもので、変形や負荷を耐えるという役割は変わりません。耐力壁の一種として耐震壁がある、もしくは使う建物が違うと呼ばれ方が違うこともある、と考えておけばいいでしょう。

耐震壁と非耐震壁の違いとは

先ほど説明させていただいたように、耐震壁は、地震の揺れによる建物の変形を防ぐものです。しかし、「耐震壁でなくても、普通の壁で耐えられるのでは?」と考える人もいるのではないしょうか。その考え方は非常に危険です。耐震壁を利用する場合とそうでない場合を比較して、どのように耐震壁が地震の被害を抑えるのかを見てみましょう。

まず耐震壁は、柱や梁でつくられた骨組みに四辺を固定されたような頑丈な壁のことです。たとえば、ネジや金具で壁の上下左右が柱や梁に固定されていれば、その多くは耐震壁だと予測できます。もし途中に窓があったり、床や天井に届いていないと、それは非耐震壁とみなされるようです。

これを立方体で考えてみると、耐震壁はひとつの面を支えるものとなります。耐震壁(面)のない辺だけの立方体では、簡単にかたむいたり、ねじれたりして壊れてしまいますが、耐震壁である面がいくつもあると簡単には壊すことができません。

地震によって建造物が壊れる大きな原因は、横揺れによるものです。縦揺れの場合は重力と同じ方向の揺れのため、普段からかかっている負荷が増減する程度ですが、横揺れは想定されていない方向からの負荷になります。地震によってかたむいたり、ねじったりする力は、その想定外の方向からの力であるため、その力に耐えるために耐震壁が利用されているのです。

まとめると、耐震壁と非耐震壁の違いは、横揺れに耐える力があるかどうかです。耐震壁が多ければ多いほど横揺れの負荷を抑えることができ、倒壊のリスクを抑えることができますが、非耐震壁ばかりでは横揺れに耐えられず、そのまま倒壊するおそれがあります。

耐震壁の種類

耐震壁とは、主に上下左右を柱や架材で固定されたつくりのものですが、その中でも多くの種類があります。木造に使われる耐力壁から、RC造の耐震壁まで、どのようなものがあるか一例を見てみましょう。

木造:筋交い

耐力壁とする壁に、X状に木材などを固定するものです。ななめに固定するため、上下左右すべてに接続されて耐力性が高くなります。安価になりやすいですが、壁が重くなってしまうため上層階では使いづらいという特徴があります。

耐震壁の種類

木造:石こうボード

石こうを主成分として板状に成形されたものです。これをビスなどで壁や梁に固定すると耐力壁となります。比較的安価かつ軽量で、負荷に対して強いので一般住宅などによく使われている素材のひとつです。

RC造:ラーメン構造

梁を設置するとき、柱の穴に通すようにするため、縦揺れにも横揺れにも対応できる構造です。この場合、梁から床に届く仕切り壁が耐震壁となります。木造のものと比べてより丈夫な設計になっているため、必要な耐震壁の数が少なく、リフォームで壁の位置を変えやすいことが特徴です。

RC造:壁式構造

柱や梁をなくし、すべて壁のみで作り上げた鉄筋コンクリート製の構造を壁式構造といいます。ラーメン構造と比べると、必要な壁の数が多く大きな部屋がつくりづらいですが、代わりに安価となっているようです。一軒家や小型マンションが壁式構造の場合が多いです。

バランスよい配置で効果を発揮!

耐震壁は、地震による被害を防ぐためには欠かせないものです。しかし、耐震壁を考えなしに設置すると、思うように被害を防げない場合があります。耐震壁を設置するときは、二つの要素でバランスをとらなければなりません。

東西方向・南北方向のバランスをとる

耐震壁は、水平方向の揺れを防ぐ力があるものです。しかし、水平方向の揺れとはいっても、地震は一方向にばかり揺れるわけではありません。ときには東西方向に、ときには南北方向になど、地震によって揺れ方は異なります。

耐力壁は、東西・南北どちらかの方向の壁にしか設置していないと、設置していない方向の揺れが来た場合家がねじれ、崩れてしまうかもしれません。家の東西と南北方向にバランスよく設置する必要があります。

バランスよい配置で効果を発揮!

外壁を中心にまんべんなく設置する

耐震壁を家の一部のみに集めると、家の中で揺れを吸収して小さく揺れる部分と大きく揺れる部分ができてしまいます。そうなると、そのふたつの境目に強烈な負荷がかかり、家が裂けてしまうおそれがあります。

できるだけ家全体の揺れを吸収するように、外壁を中心に東西南北のまんべんなく耐震壁を設置するようにしましょう。もし大きい部屋や吹き抜けがある場合は、そこを重点的に設置すると効率的な耐震補強が可能です。

耐震診断で家の耐震性チェックを

ここまで耐震壁について説明してきましたが、地震に強い家であるには耐震壁があるだけでは不十分です。柱や屋根、基礎など住宅には耐震性を語るうえで欠かせない要素がいくつもあります。

そのような耐震性に関係する重要な要素を考慮し、家全体の耐震性を評価するものが耐震診断です。もし、家の受けた災害歴や建築時期などによって耐震性が確保されているか不安ならば、一度受けてみてはいかがでしょうか。

この耐震診断は、家を破壊する必要のない検査項目ばかりですから、大掛かりな工事は必要ありません。また、費用なども自治体が補助金などをサポートしてくれる場合がありますので、積極的に耐震診断してみましょう。

まとめ

耐震壁は、耐力壁とほぼ同じもので、柱や梁に四方を固定されている板や建材のことです。地震が起きたときに揺れの負荷を吸収して被害を抑えることができます。

ただし、家にやみくもに耐震壁を増やしても耐震性が確保できないかもしれません。東西南北の方向や位置に注意して、かたよりなく設置することが大切です。

また、耐震壁は耐震性を高めるものではありますが、家の耐震性は壁だけの問題ではありません。業者に一度家の耐震性を診断してもらい、壁などの耐震補強の必要性を再確認してみるといいのではないでしょうか。


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