断熱材グラスウールの真実!~誤解したままではもったいない~

2021.4.30

断熱材グラスウールの真実!~誤解したままではもったいない~

冷暖房の効率を上げ快適な生活を実現するために、家の断熱構造は必要不可欠なものとなってきました。そのため新築時はもちろんのこと、リフォームなどの一環で断熱材を入れることも増えてきています。

ところで断熱には、壁の内側に断熱材を配置する「内断熱」と、壁の外側に断熱材を取り付け、その外側に外装材を張る「外断熱」の2種類があることはご存知でしょうか。そのなかでもグラスウールは「内断熱」で使われる代表的な断熱材のひとつ。

しかし近年では「グラスウールはあまり良くない」という話も耳にします。その話ははたして本当でしょうか。

今回は断熱材のひとつ、グラスウールについて詳しく解説します。断熱材の特徴を理解し、適切な施工方法を知ることが大切です。

グラスウールっていったいなに?

そもそも断熱材・グラスウールとはどういう物質なのか、その製造方法から性質を知っていきましょう。

ガラスを溶かして繊維状に加工したもの

グラスウールの原料は二酸化ケイ素(ケイ酸塩)を主成分としたガラスです。窓ガラスや飲料びんなどと同じ成分のため、私たちにとってもおなじみの存在といえるでしょう。

このガラスを高熱で溶かし、遠心力を使って細い繊維状にしていきます。これを建築資材として使いやすいよう、接着剤を使いシート状に固めたものがグラスウールです。

アスベストとの違い

同じ繊維状の無機物としてよく知られたものに「アスベスト」(石綿)があります。

アスベストは鉱石として自然生成されたもので、ガラスと同じくケイ酸塩を主成分としています。ただし同じ繊維状でもアスベストは結晶(固体)であり、細かく割れやすくなっていることが特徴。細かく割れることで肺に侵入しやすい大きさとなり、かつ分解されないため、「肺線維症」(じん肺)や悪性中皮腫(胸膜などのがん)といった病気の原因につながるとされています。

一方ガラスは固体のように見えますがガラス状態として区別され、結晶を作っていません。そのためグラスウールは折れてしまうことはあっても、より細かく割れてしまうことは少ないという特徴をもっています。こうした性質から、グラスウールは肺に侵入するまえに押し戻されることが大半。肺に入ったとしても体液に溶ける、人体の自己防衛機能で排出されやすいという違いがあるのです。

断熱材グラスウールの真実!~誤解したままではもったいない~

断熱材の断熱の仕組みはどれも同じ!

グラスウールに限らず、断熱材の効果は「空気を含むこと」が重要です。ここでは断熱材に共通する特徴について確認してみましょう。

乾燥滞留空気の断熱性を利用

真夏の屋外が暑いと感じるのも、冬の屋外が寒いと感じるのも「空気の温度」を私たちが感じ取るからです。すると空気は温度変化が大きいと感じがちですが、意外と空気は熱を伝えにくい性質をもっています。

実際に熱の伝えやすさ(熱伝導率)を調べてみると、空気は身近な物質のなかでも熱を伝えにくい存在であることがわかるのです。

物質 状態 熱伝導率【W/m・K】
乾燥空気 気体・0℃ 0.0241
固体・0℃ 2.2
液体・10℃ 0.582
固体・0℃ 83.5
ステンレス 固体・0℃ 26.0
アルミニウム 固体・0℃ 236
固体・0℃ 390~403
乾燥木材 固体・18~25℃ 0.15~0.25
ガラス 0.55~0.75
ゴム(シリコーン) ゴム状態・常温 0.1~0.2
コンクリート 常温 1

※熱伝導率:厚さ1mの板の裏表で1Kの温度差(=1℃の温度差)があるとき、1㎡の面を通じ1秒間に流れる熱量。

ただし空気は熱が加えると密度が変化し、対流を起こして熱を伝えるという性質も併せ持っています。そのため「その場に留める」ことが必要となり、空気を多く含んでその場に固定するための「断熱材」が開発されるようになりました。

断熱材は防音材としてもはたらく

音は波の一種のため、違う状態の物質の間は伝わりにくく、吸収されてしまいやすいことが特徴です。そのため空気の層を持つ断熱材は遮音性を併せ持ち、防音材としてはたらく場合も多くなっています。

たとえばグラスウールを5cmほど敷き詰めた場合、中高音域を流心に5dB程度遮音性が改善されるという研究結果があります。もちろん遮音向けに開発された素材よりも効果は限定的ですが、騒音対策として導入を検討する価値はあるでしょう。

グラスウール以外の断熱材の例

断熱材はグラスウール以外にもさまざまな種類があります。その一例をご紹介します。

【ロックウール】

ガラスではなく岩石(正確には鉄鉱石から鉄分を除いたもの)を高熱で溶かして繊維にし、固めたものです。グラスウールと同じ無機質の断熱材であり、実際に似た性質を持っています。また鉄骨などに吹き付けて使われることも多いのが特徴といえるかもしれません。

【発泡プラスチックフォーム】

プラスチック(合成樹脂)の原料を化学反応させて固める際、発泡剤を混ぜることで内部に無数の空気を閉じ込めたものです。合成ゴム(ウレタンゴム)を原料にしたウレタンフォーム。いわゆる「発泡スチロール」であるポリスチレンフォームやフェノール樹脂(ベークライト)を原料にしたフェノールフォーム。ペットボトルなどと同じ「エチレン」を原料にしたポリエチレンフォームなどがあります。断熱性は高めですが、価格も同様に高くなることが難点です。

発泡プラスチックフォームには2つの施工方法があり、事前に工場で板状にしたものを施工箇所に合わせて切る方法が従来からおこなわれてきました。一方最近では液剤をスプレーにして施工箇所に直接吹き付け、その場で空気を含ませて固めることも少なくありません。

【セルロースファイバー】

古紙などの木質繊維を細かく加工し、空気を含ませたものです。木質繊維の持つ調湿性を受け継いでおり、結露防止の効果も併せ持っています。ただしグラスウールと比べると若干防火性に劣るのが難点といえるでしょう。

なお断熱材として使用する際にはホウ酸などを使用して燃えにくく、虫がつきにくく加工するのが一般的です。

【インシュレーションボード】

木材を水とともに高熱で繊維状にほぐした後、再度固めたものです。セルロースファイバーと同じく、調湿性を兼ね備えていることが特徴です。

【羊毛】(ウール)

羊の毛を加工したもので、木質繊維系断熱材と同様、保湿性も兼ね備えています。

ほかの断熱材と比べたグラスウールのメリット

ではなぜ、グラスウールが断熱材の中でも代表的な存在となったのでしょうか。それには次に取り上げるメリットが関係しています。

低価格

グラスウールの原料となる二酸化ケイ素は石英などとして岩石中に多く含まれており、かつ安定した物質です。また建物解体や空きびんなど不要になったガラス、そしてグラスウール自体も回収して再利用できることもあり、ほかの原料よりも低価格に調達できることがグラスウールの強みです。

さらには同じ断熱材でも、厚みを持たせれば断熱性能は高くできることも低価格であるメリットのひとつです。たとえば同じ断熱性能で比較する場合、石油を原料とするウレタンフォームと比べて3分の2の価格で済むといわれています。

ウレタンフォームと比べれば同じ厚みでの断熱性能は劣りますが、価格面でカバーすることができるのです。グラスウールの設置は壁の内側のことが多いため、厚くしたからといって目立つこともありません。

不燃性

グラスウールはウレタンやセルロースとは異なり、燃える素材ではありません。固める際に混ぜられる接着剤こそ燃える素材ですが、500℃前後でも溶けだすのはわずかであり、熱変形にも強いことが知られています。

耐久性

ガラス(ケイ酸塩ガラス)は化学変化を起こしにくく、結露の影響を受けなければその断熱効果は長持ちさせることができます。

また木造住宅で問題になりがちなのがシロアリの被害です。シロアリは木材に含まれるセルロースを求め、柱などを食い尽くしていきます。その過程で柔らかいウレタンフォームなどはシロアリの通り道となり、穴が開けられることも少なくありません。

一方グラスウールでは繊維自体が固いことから、シロアリ被害のリスクは低いといえます。


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グラスウールでよく聞く不安を解決!

断熱材として使われている場面が多いからか、グラスウールには不安の声が寄せられることが少なくありません。

グラスウールは体に悪い?

繊維状のガラス質、と聞いてアスベストを想像する方は少なくありません。しかし1章にて解説した通りアスベストとは製造方法や繊維の特徴が異なるため、人に対する有害性は非常に低いと考えられています。たとえばIARC(国際がん研究機関)の発がん性分類ではヒトや実験動物に対する十分な発がん性の根拠がない(グループ3)ことが示されています。アスベストが発がん性のリスクが認められている(グループ1)ことと比べれば、対照的といえるのではないでしょうか。

また近年問題になってきているのがフェノール系接着剤に含まれる「ホルムアルデヒド」などの有害物質です。たしかにグラスウールでは製造過程で接着剤を使用しますが、放出されるホルムアルデヒドは合板などと比べるとわずか。近年ではフェノール系接着剤を使わない製品も登場しています。

グラスウールは結露しやすい?

グラスウールに限らず、細かいすき間を多数持つ断熱材はスポンジのように水分を保持しやすい性質があります。水分を含むとそのぶん重量が増えるため、断熱材はたわんでしまうことが考えられるでしょう。

一方結露は湿った空気が冷やされ、空気中に留まれなかった水蒸気が液体に戻ることで生じます。狭い空間で空気が留まりやすく、かつ温度差の大きい壁内は結露しやすい環境であることはいうまでもありません。

しかしグラスウールは施工時、室内側に防湿素材のシートを張り込んで水分の侵入を阻止します。そのため正しい施工方法であれば、グラスウールの部分に水分の含んだ空気が入り込むことは考えにくいのです。

グラスウールは家を傷める?

グラスウールは結露しやすい、というイメージから「家を傷める」という話も出てきます。たしかに壁の中で結露を起こせば柱などは傷みやすくなり、家の寿命を縮めることにつながるでしょう。

しかし先ほど確認したように、結露の発生は壁内に湿気の多い空気があることが条件です。そのためきちんと施工をおこないすき間がないようにすれば、結露は発生しにくいと考えられます。

グラスウールは正しく使うことが大切!

グラスウールは水を保持しやすいことは確かです。しかしそれに対する対策も考慮されているため、断熱材としてグラスウールを施工してもらう際には次のような点を確認しておきましょう。

無理やり押し込んでいないかチェック

断熱材は詰め込めば詰め込むほど断熱性が上がるように思えますが、しっかりと空気を含み余分なすき間を作らないことが重要になります。

グラスウールは板状に成形されています。そのため折れ曲がらないように張ることが、一番の断熱効果を生むのです。またコンセントもそのまま固定すると壁とグラスウールの間にすき間があいてしまう原因となります。その箇所に穴を開け、固定していることを確かめましょう。

湿気対策は万全にしてもらう

水を含んでしまえばそのぶん空気の層が少なくなってしまうため、断熱性の低下にもつながります。そのため湿気が入らないよう対策が必要です。

たとえばグラスウールの固定にタッカー(建築用ステープラー)を利用すると防湿シートに穴があき、そこから湿気が入ってしまいます。そのためテープで固定してもらうなど、穴を開けない対策が必要でしょう。万が一穴が開いてしまった場合、コンセント設置やエアコン配管で穴を開けざるを得ない場合も湿気が侵入しないよう処置をしてもらうことが大切です。

また窓枠の横などは壁の構造上すき間が空くことも考えられます。その場合も単に断熱材やグラスウールを入れるだけでなく、防湿シートを張ってもらうなどの対策をおこなってもらってください。

断熱工事のプロへお任せ

グラスウールは安価で効果の高い断熱材ですが、施工時の注意点も多い素材のひとつです。そのため自分で施工するのは避け、断熱工事のプロに依頼するようにしましょう。その際は必ず見積もりを取り、工事価格とともに内容もチェックしてください。

まとめ

グラスウールは断熱材のなかでも安価なため、住宅に使われることの多い素材です。しかし施工方法を間違えると断熱性能が低下するおそれもあるため、正確な方法で施工してもらうことが大切になってきます。

断熱材選びや施工には知識や経験が大切です。断熱工事のプロに依頼して見積もりを取り、必要な手順が含まれているか確認しておきましょう。またできれば施工に立ち会い、しっかり工事がおこなわれているかもチェックしたいですね。

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