シートを貼るとガラスが割れる？網入りガラスと断熱シートの関係性

お住まいの窓のどこかに、「網」の入ったガラスが取り付けられていませんか？それは、火事の際にガラスが飛散するのを防いでくれる、「網入りガラス」と呼ばれるガラスです。

網入りガラスには金属の網が入っているため、一見すると頑丈な防犯ガラスのようにも見えますが、実は耐久性が高いわけではありません。むしろこの網入りガラスは、使い方を間違えると普通のガラスよりも割れやすい性質をもっているのです。

本コラムでは、網入りガラス特有の破損原因である、網入りガラスと断熱シートの関係について解説します。網入りガラスが割れてしまう仕組みと対策を知って、お住まいの断熱に役立てましょう。

網入りガラスの特徴って何？

網入りガラスと断熱シートのトラブルにつながる関係性を解説するまえに、まずは網入りガラスがどんなものか知っておく必要があります。

網入りガラスとは、ガラスの中に金属製の網を封入したガラスのことです。ガラスの内部を無数に走る金属線は、なんだか鉄格子のようにも見えませんか？見た目からすると頑丈で割れにくい防犯ガラスというイメージがありますが、実は網入りガラスに防犯性能はほとんどないとされています。

網入りガラスに仕込まれている金属網は、ガラスを補強したり割れにくくするためのものではありません。この網は、火事の際にガラスが破損しても被害が広がりにくいようにするためのものです。

建物で火災が起こると、窓にはめられたガラスは火によって加熱されます。ガラスは200℃程度の温度までしか耐えられないため、高温にさらされると溶けてしまったり、割れてしまったります。

溶けたガラスが窓枠から落下したり、割れたガラスの破片が飛び散ったりすると非常に危険です。実際、飛散したガラスに触れてケガをしてしまうというのは、火事の二次被害として少なくないといわれています。

そういった二次被害を防ぐために、ガラスに金属の網を仕込んでおき、窓が溶けたり割れたりした際も網がガラスに支えられて落下しないよう工夫したものが、「網入りガラス」というわけです。

しかし、網入りガラスは補強された割れにくいガラスではありません。割れたガラスを保持し、破片や火の粉が飛散しないようにする、防火ガラスなのです。

熱を吸収するシートを貼ると熱割れする危険性

前述のとおり、網入りガラスは火災による被害を抑える効果をもった防火設備の一種です。とはいえ、網入りガラス自体が熱に強いというわけではありません。むしろ網入りガラスは、使い方によっては通常のガラスよりも熱によって割れやすい性質をもっています。

とくに網入りガラスに起こりやすい破損原因として、「熱割れ」という現象があります。ガラスはもともと温度差に弱く、耐熱ではないガラスのコップに熱湯を注ぐと割れることがあるというのはよく知られていることです。
これは、熱湯によって、ガラスの熱湯に触れた部分と触れていない部分とで温度差が発生し、熱で膨張したガラスが膨張していないガラスと押し合ってしまうからです。

網入りガラスは「ガラス」と「金属網」という2種類の異なる素材でできているため、さらに温度差が発生しやすく、熱によって割れてしまいやすいというわけです。そのため、熱膨張した金属網が冷えたガラスと押し合って、やがてガラスのほうが割れてしまうのです。

また窓の断熱対策として「断熱シート」をガラスに貼る場合も注意が必要です。
ガラスは透明度が高いため、通常は直射日光にさらされても光が通過しガラス自体が過剰に熱くなることはありません。しかし、断熱シートをガラスに貼ると、日光がシートに吸収されてガラスが熱せられやすくなります。

通常のガラスであれば、断熱シートが原因で熱割れを起こす可能性は高くありません。しかし、もともと熱割れを起こしやすい網入りガラスの場合、断熱シートによって熱せられやすくなると、相乗効果でより割れやすくなってしまうのです。

こういった、熱割れを起こす危険を避けるために、「網入りガラスに断熱シートは貼るべきではない」というのが窓ガラスや断熱シートのメーカーなどが出している見解なのです。

網入りガラスに貼れる断熱シートはある！おすすめシートご紹介

網入りガラスに断熱シートを貼ると、熱割れを起こす危険性が高まってしまいます。では、破損を避けるためには網入りガラスの断熱を妥協しなければならないのでしょうか。

まだあきらめるには早いかもしれません。網入りガラスに貼っても熱割れを起こしにくい断熱シートもあるのです。以下に、網入りガラスに貼ることのできる断熱シートをご紹介します。

◆窓断熱シート マジックミラー フィルム

こちらは網入りガラスにも貼れることをうたった断熱シートです。シートは外側からだと外の風景を反射し、内側からだと通常通り外が見えるマジックミラー仕様になっています。日光の熱を85％カットすることで、窓が過剰に熱せられないようにする仕組みです。

◆Homein ステンドグラスシール

ステンドグラスのようにカラフルで立体感のある模様のついた断熱シートです。日光が当たるとキラキラと虹色に輝き、窓に彩を添えるデザイン性の向上も期待できます。こちらも網入りガラスに貼ってOKなタイプのシートです。

◆セキスイ 遮熱クールネット

ガラスや網戸に貼ることのできる、ネットタイプの断熱シートです。表面がネット状になっているため風を通し、ガラスに熱がこもるのを防いでくれる効果があります。そのため、熱によって割れやすい網入りガラスに張り付けるのに向いている製品です。

太陽光を反射して熱を防いだり、風通しをよくして熱を逃がすなど、網入りガラスに断熱シートを貼るためのさまざまな工夫を凝らされた商品が販売されています。網入りガラスに断熱をおこないたい場合は、こうした製品を選んでみるのもよいかもしれません。

断熱性を重視するなら複層ガラスに交換がおすすめ！

工夫された商品が多数売られているとはいえ、網入りガラスを断熱シートで断熱しようとすると、どうしても熱割れの危険性はついて回ります。また、断熱シートはおおむねガラスよりも寿命が短いため、定期的な張替えが必要になる点も無視できません。

お住まいの断熱性を根本的に向上させたいのであれば、断熱シートを使うよりもガラス自体を断熱性の高いものに交換するのが確実です。

窓ガラスを複層ガラスに交換することも考えてみましょう

「複層ガラス」とは、2枚のガラスを重ね合わせたガラスのことで、「ペアガラス」とも呼ばれています。ガラス同士の間にある空間には空気や特殊なガスを詰めてあったり、真空になっていていたりして、この空間自体が断熱材として働いています。

複層ガラスを取り付ける一番のメリットは、断熱シートを利用した場合よりもはるかに高い断熱性能が得られる点です。またガラスは耐候性が高いため、断熱シートより雨風に強く、長く使い続けることができます。

高い断熱性は、冷暖房の効率を良くして光熱費の削減につながるほか、結露を防止してカビの発生を抑える効果も期待できます。湿気による建材の劣化を遅らせて、家自体の寿命を延ばすことにもつながるのです。

複層ガラスへの交換には工事が必要となり、費用は決して安いものではありません。しかし、長期的な光熱費の削減と家の寿命の向上は、非常に魅力的なメリットです。お住まいの断熱を考えるなら、複層ガラスへの交換も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

まとめ

網入りガラスは火事の際に溶けたガラスが落下したり、割れたガラスが飛散するのを防ぐ効果のある防火ガラスです。二次被害を防ぐのには役立ちますが、網入りガラス自体が熱に強いわけではないという点には注意しましょう。

網入りガラスに断熱シートを貼ると、熱がこもって割れてしまう可能性があります。網入りガラスに貼っても熱割れを起こしにくいよう工夫された断熱シートもありますが、お住まいの根本的な断熱を考えるなら複層ガラスへの交換がおすすめです。

省エネを考えるうえで重要となる断熱は、確かな技術のあるプロに任せるのが安心確実かもしれません。

ガラス修理・交換を依頼できる業者や料金

依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「ガラス修理・交換」をご覧ください。