日本では、チャバネゴキブリやクロゴキブリのほかに、サツマゴキブリというゴキブリが一部の地域であらわれます。このサツマゴキブリには羽がなく、その見た目や動きが三葉虫に似ており、ゴキブリらしくないということからペットとして買われたり漢方薬として利用されたりしています。
しかし、ゴキブリである以上はサツマゴキブリも不快害虫であり、健康被害をもたらすことがあるので、その特性について知っておきましょう。
サツマゴキブリの生態
サツマゴキブリの見た目は、体の表面が黒く胸の部分が黄白色、体調25~40mmの大きさで、羽が退化しており私たちがよく知るゴキブリのように素早く走り回らないというのが特徴です。
よく言われているのが「サツマゴキブリは三葉虫に似ている」ということですが、ゴキブリは6本足の昆虫であるのに対し、三葉虫は複数の足を持つ節足動物です。また、ゴキブリは陸生生物なのに対し、三葉虫は海生生物なので、やはりサツマゴキブリと三葉虫は似て非なる生き物だということができます。
サツマゴキブリは生殖方法も独特であり、一度排出した卵を体内のポケット状の器官に再び取り込んで、体内で保護しつつ孵化させます。これはウォンバットやカンガルーのような有袋類のイメージに近いといえます。
サツマゴキブリは四国、八丈島、小笠原諸島、九州南部、南西諸島に分布しています。本州や北海道に住んでいる人はサツマゴキブリをほとんど見たことがないかもしれません。このように、暖かい地方に分布するゴキブリなので、冬の寒い時期には冬眠するのもサツマゴキブリの特徴です。
また、森林の落葉下、石の下、朽木の下などの野外に生息することが多い種類のゴキブリで人と家の中で遭遇することは稀ですが、沖縄などでは床下に住み着くことがあるので注意が必要です。
サツマゴキブリは不快害虫
サツマゴキブリは私たちがよく知るチャバネゴキブリやクロゴキブリとは少し見た目や生態が違うとはいえ、不快害虫であることには変わりありません。
まず、サツマゴキブリの見た目はグロテスクで不快感を与えるものであり、サツマゴキブリが集合しているさまはさらに恐怖感を与えるものになり得ます。この点は、やはりゴキブリに羽が生えていようがいなかろうが変わりません。
また、体表面や足などに様々な細菌や雑菌を付着させており、その中には食中毒や小児麻痺、感染症などの病気を引き起こす病原菌もあるので健康被害をもたらすことがあります。食品の中にサツマゴキブリが混入していれば、異物混入事故になってしまいます。
それだけでなく、サツマゴキブリの死骸や糞はアレルギーの原因物質であるため、それらを吸い込んでしまうとぜんそくを引き起こすことさえあります。
サツマゴキブリを飼育する人も
サツマゴキブリは、前述のとおり、羽が退化しており私たちがよく知るゴキブリのように素早く走り回らないので、一見するとゴキブリのようには見えないこともあります。そこで、その見た目に惹かれてサツマゴキブリをペットとして飼育する人もいます。
サツマゴキブリ1匹あたりの値段は約1,000円前後で、ペット用のゴキブリとしては少し高価になります。
また、サツマゴキブリはチャバネゴキブリやクロゴキブリほど繁殖力が高くないので増殖の心配があまりなく、野菜やペットフードなど様々なものを食べるので飼育しやすいといわれています。サツマゴキブリを飼育するのに適した室温が22~23度と、人間が快適に感じる温度に近いこともサツマゴキブリが人気な理由かもしれません。
もちろんサツマゴキブリをペットとして飼育するのは個人の自由であり、虫かごなどに入れて逃げないように管理して飼育している分には問題ありません。しかし、サツマゴキブリを飼育するときもほかのペットと同じように、ほかの人に迷惑をかけないように責任をもって飼育しましょう。
サツマゴキブリが漢方薬に!?
サツマゴキブリのように羽がなく見た目がゴキブリらしくないゴキブリは、ときとして漢方薬として利用されることがあるようです。
たとえば、サツマゴキブリのメスを乾燥させたものは「庶虫(シャチュウ)」という漢方薬とされています。この「庶虫(シャチュウ)」にはゲンゴロウを用いることもあります。
「庶虫(シャチュウ)」の効用は、血の巡りを促進する血液凝固抑制剤であり、口内炎や乳汁不通などに使用されることがあります。ただし、医薬品として正式に許可が下りているわけではなく、その効果についても保証があるものとは限らないので、使用には注意が必要です。
まとめ
ゴキブリといえば、私たちが家の中で見かけるチャバネゴキブリやクロゴキブリのイメージが強いので、サツマゴキブリのように主に野外に生息し一部の地域にしか分布しないゴキブリは馴染みが薄いかもしれません。
しかし、ゴキブリである以上は不衛生で害をもたらすことがあるので、ペットや漢方薬として利用されることがあったとしても直接手で触れるようなことは避けるべきです。もし触れてしまった場合はしっかり手を洗いましょう。
また、サツマゴキブリは駆除の依頼こそ少ないものの、床下などに家の中に住むおそれが全くないわけではないので、万が一住みついてしまった場合は早急に駆除することをおすすめします。
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