人間の敵?「ヘボ」と呼ばれるクロスズメバチの生態と人間との関係
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スズメバチといえば攻撃的で危険なイメージが強くあるのではないでしょうか。ニュースでもスズメバチによる被害は多く報道されていますし、実際にスズメバチに刺された経験がある人もいるかもしれません。
そんなスズメバチの仲間のひとつに「クロスズメバチ」という名前のハチがいます。あまり聞いたことのないハチと印象を受けるかもしれませんが、実は北海道から奄美大島まで日本全国に分布している、私たちに身近なハチなのです。
今回は、そんなクロスズメバチの生態や特徴、その被害や私たちとの関係についてくわしく解説します。
『クロスズメバチ』の特徴
クロスズメバチには、どのような特徴があるのでしょうか。見た目や生息地、巣の大きさなどからみていきます。
・見た目
クロスズメバチの体長はおよそ1.1~1.8センチと小さく、ミツバチと比べても2倍ほどの大きさしかありません。スズメバチの仲間は黄色と黒色の体をしたものが多いのですが、このクロスズメバチは、黒い体に白い帯と斑点模様があります。ほかのスズメバチと比べて簡単に見分けられることもクロスズメバチの特徴です。
・生息地
北海道から奄美大島まで日本全土に分布し、平地から山地の幅広い場所を生息域としています。また活動時期が3月下旬~12月までと、ほかのスズメバチの仲間と比べてかなり長いことも特徴です。とくに8~10月は活発になり、クロスズメバチによる被害も多くなる傾向にあります。
・巣の場所
巣は雨や風をしのぐことができる土の中など、周囲が囲まれた空間に多くつくられます。そのため屋根裏や家の壁の中、樹洞などにつくることもあるのです。
・営巣規模
巣はおよそ25~40センチほどの大きさで、段ボールのような素材でおおわれています。下にいくにつれてふくらんでいるのが特徴です。
巣の中は8~12段の層に分かれています。そのため巣の中の個室を合わせるとおよそ8,000~12,000個になり、幼虫の子育てなどが盛んにおこなわれています。そのような巨大なコロニーを作ることから、ひとつの巣にはおよそ800~1,500匹のクロスズメバチが生活しているといわれるほどなのです。
クロスズメバチの毒性と性格は強い?
クロスズメバチというなんだか強そう、怖そうと感じるかもしれません。しかし性格は比較的温厚で攻撃性はほとんどないといわれています。不用意に近寄らなければほとんど危険はなく、針の毒性もほかのスズメバチと比べるとそれほど強くありません。
それでも、うっかり巣やクロスズメバチの体に触ってしまい、驚かせて刺されてしまう場合もあります。クロスズメバチを見かけた場合は、基本的に近寄らないようにして、走って逃げるなど驚かせる行動をとらないように注意しましょう。
また、腕など体にとまった場合にも同じように騒がず飛び去るのを待つようにしましょう。
クロスズメバチがもたらす被害
クロスズメバチは比較的温厚で攻撃性も低く、それほど怖くないハチですが、それでも巣にちょっかいを出したり、通りがかった際に身に着けていた香水の匂いに興奮したり、驚いて刺してくることがあります。
クロスズメバチに刺されたときには、その小さな体からは想像できないほどの痛みがあるといいますが、クロスズメバチの毒性は弱いので数時間経てば痛みや腫れは引いてくるといいます。
しかし、痛みや腫れが続き、体長に変化があるようならすぐに病院にかかるようにしてください。
「ヘボ」と呼ばれるクロスズメバチと人間の関係
長野県を中心とした海から遠い地方 では、クロスズメバチは昔から「ヘボ」「スガレ」などとも呼ばれてきました。そして貴重なたんぱく源とされ食べられてきたのです。「蜂の子」というと聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
この蜂の子であるクロスズメバチの幼虫は、ウナギの味とうりふたつといわれるほどおいしいといわれ 、肉まんや甘露煮、塩焼きとして食べられるそうです。一方成虫はエビのような味をしているようで、熱した油に入れて素揚げにしたり、つくだ煮にして食べるのが一般的となっています。
最近では蜂の子は缶詰や瓶詰で高級珍味として発売されていたり、イベントなどで屋台が出されるなど、し好品といった印象が強くなってきました。しかし昔は家庭で普通に食卓に並んでいたのです。
まとめ
クロスズメバチはスズメバチの中でも比較的温厚で攻撃性が低いことが分かりました。また長野県など海から遠い地域ではたんぱく源のひとつとして食べる習慣があり、味もかなりよいのだそうです。虫を食べることに抵抗がある人は多いと思いますが、機会があるなら食べてみてもよいかもしれません。
クロスズメバチの巣を見つけた場合、早急な駆除をおこなう必要性は低いといえます。しかし、家の中につくられた場合は生活に支障をきたす場合があるかもしれません。
ホームセンターなどに売っている市販の殺虫スプレーを用いて自力での駆除も可能ですが、怪我を防ぐためにも専門の業者にお願いしてみるのがよいでしょう。
※対応エリアや加盟店によって変わります