家が傾く!?液状化現象による被害や発生のメカニズムなど
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地震の影響を受けやすいものの一つとして、地盤が挙げられます。地震はいつ起こるかわからない予測不能の自然災害です。そんな、地震の影響は土地の液状化をももたらすことがあります。自分の家は大丈夫と思っていても、近くで液状化が発生すると影響を受けてしまうかもしれません。
しかし、液状化とは一体どのような現象なのでしょうか。詳しく知らない方のために、今回は液状化についてご紹介していきます。液状化現象について詳しく知ることで、もしものときの対策につながるかもしれません。
液状化現象とは?発生のメカニズム
液状化と聞いて記憶に新しいのは東日本大震災ではないでしょうか。甚大な被害をもたらした災害は、多くの人の記憶に深く刻まれています。この東日本大震災で起こった液状化は、過去最大の範囲といわれています。液状化は大きな被害をもたらし、震災後の地域の復旧活動や生活にも大きな障害となってしまったのです。
では、液状化現象はどんなメカニズムで起こるのでしょうか。液状化現象とは、地震が発生したときに地盤が液体状になることをいいます。
地盤は砂の粒子同士が接触していることで強さを保っています。しかしゆるい砂地盤だと地震により激しくゆられ、砂の粒子がバラバラなり、地盤が含む水分と砂とが分離した状態になってしまいます。時間がたつと砂の粒子はやがて水のなかに沈んでいきますが、代わりに水が地表へ顔をだすため、地面の裂け目などから泥水が噴出してしまうのです。
液状化現象の起こった土地は液体のような性質をもつため、一時的に地面が柔らかくなり建物などを支える力を失ってしまい、倒壊などの大きな被害をもたらすのです。
私たちが暮らしている土地は固いものではありません。多くの土地は川が運んできた土砂などが蓄積してできた土地です。そのため、地震などの強い衝撃が発生すると液状化が起きやすい土地で生活しているといえるのかもしれません。
家が傾く?液状化が及ぼす被害
地震などが起きると、水と土や砂とのバランスが崩れてしまいます。そうなると、地中で分離した水が行き場をなくし、液状化を引き起してしまいます。液状化が起こると、地中で空洞ができたような状態になってしまいます。そのため、建物を支える力がなくなってしまい、沈下を引き起こすことになるのです。液状化現象はほかにも、さまざまな被害をもたらします。
給排水管
生活にかかせない上下水道や管路が切断され、引き裂かれることもあります。また、この際できた切断部分から土砂が入り込んでしまうことがあり、近くで液状化が起こってなくても水道が流れてこなかったり、水道から土砂がでてきたりと影響をもたらします。
橋
河川敷は水分を多く含む地盤のため、液状化が起きやすい場所だとされています。広範囲に液状化が発生してしまうと、側方流動という現象が起きます。これは、河川側に地盤全体が大きく横に移動する現象です。側方流動が起きると、橋が落ちてしまったり、橋との接続部分が沈下してしまい、段差が生じてしまうこともあります。
ただ、現在はほとんどの橋で液状化対策がとれているため、橋に影響がでることは少ないようです。
交通障害
道路で液状化が起こってしまうと、土砂で道路が渡れなくなってしまうこともあります。また、道路の土砂などが蓄積されたり、マンホールから吹き出したりしてしまうことも考えられます。そうなると、緊急車両などが通れなくなったり、渋滞が起こってしまったりと交通障害が起きやすくなります。
このように液状化は家が傾くだけでなく、さまざまな影響がでて、生活に支障がでてしまうことが考えられるのです。
どんな場所で液状化は起こるのか
液状化は、どんな場所でも起こるわけではありません。液状化が起こるおそれが高い場所とはどこなのでしょうか。
一般に液状化しやすい地形として挙げられるのは、自然地形では「湾岸」「河口」「砂丘の縁辺」「沼」「旧河道」「河川沿い」などが挙げられます。人工地盤では、「埋立地」「沼や水田などの盛土地」「道路や鉄道といった砂を使った盛土地」が挙げられます。このような土地では、比較的液状化しやすいといわれています。
また震度5度以上で、揺れている時間が長ければ長いほど被害が大きくなる傾向があります。さらに過去に液状化している土地では、次地震が起きると再び液状化するといわれています。これを再液状化といいます。通常は、一度液状化すると再び起きないように地盤の締固めをします。しかし、地盤が沈下してしまうと半分の量の締固めしかできなくなります。
液状化が気になったら地盤調査
液状化を避けるためにも建設前に、地盤調査を行う方も多いかと思います。地盤調査には主に二つの方法があります。
スウェーデン式サウンディング試験
住宅メーカーが多く採用しているのが、スウェーデン式サウンディング試験です。この方法を使って調査をすると手軽でコストがかからないため、木造住宅の建設などによく使われています。
スウェーデン式サウンディング試験は、ドリル上の部品がついた鉄の棒を地中にねじ込むことで、地盤の調査を測定していきます。垂直にたてた鉄の棒に重りをのせ、荷重に対する貫入量を測ることができます。しかし、調査可能な深さは地中10mまでで、更地でないと難しい調査方法となっています。
5か所前後の場所で調べ、所要時間も一か所30分くらいなので、半日程度で終わるのが魅力です。また、費用も5万円前後のところが多く、地盤調査の中でも比較的安価となっています。
ボーリング標準貫入試験
ボーリング標準貫入試験は一般家庭ではなく、大きなビルなどを建設するとき用いられていることが多い調査方法です。
サンプラーという部品をつけたロッドを自然落下させ、地中にうめていきます。30cm地中にめり込ませるためにかかった打撃数を使用し、地盤を計測していきます。このサンプラーを使うことで、土を採取することもできるため、地中の土の性質を調べることができます。
土地の性質によって金額は変わってきますが、15万円~25万円程度が相場です。しかし、深く掘り進めなくてはならない場合はその分費用が高くなってしまうこともあるので注意が必要です。また、調査にはスペースを必要とするため、狭い土地での調査には適していません。
ほかにも表面波探査法など、地盤調査の方法はさまざまです。自分が調査する土地にあった方法を選ぶことが重要です。
住宅地盤における液状化対策
地盤が液状化すると、地盤の低下だけでなく、陥没などが起こるおそれがあります。その結果、住んでいる建物が傾斜したり、倒壊するおそれがあるのです。では、どのような対策をしたらよいのでしょうか。
地盤改良
まずは、地盤が液状化しにくいように地盤改良をすることをおすすめします。転圧機など使用し、地中の変化を表面に現れにくくします。また、支持力を増すために、木杭の密打ちをすることも重要です。木杭の密打ちをすると地盤の締固め効果が期待できます。
地盤を改良するほかにも、建物にも改良が必要です。液状化によって被害を受けにくくなるような建物をつくることで、地震にも強い家にすることができます。建物全体の平面形や立面形などを単純化するだけでなく、壁をバランスよく配置することも大切です。
まとめ
住宅を建てるときは、家の構造や内装などに気を取られがちです。しかし、地盤がしっかりしていないと、せっかく建てた新築の家も、地震によって液状化の影響を受けてしまう可能性があります。
また、液状化の影響を受けてしまうと、家が倒壊するおそれもあります。自然災害はいつ起こってもおかしくありません。家に影響をださせないためにも、しっかりとした地盤調査が必要となってくるのです。
地盤調査は素人では難しく、しっかりと調べることができないかもしれません。また、地盤調査は建物が完成してからでは遅いのです。
そのため、地盤に不安がある方やこれから新築を建てる方などは、しっかりとした業者に依頼し、地盤調査をしてもらうことをおすすめします。地盤調査次第で、どんな形の家が建てられるかが変わってくるかもしれません。
地盤調査を依頼できる業者や料金
依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「地盤調査」をご覧ください。
※対応エリアや加盟店によって変わります