建物を所有するのであれば、地震がきたとき倒れないものにしたいですよね。耐震性は、その建物の構造形式によっても異なり、そのなかのひとつであるピロティ構造は、耐震性が低いといわれています。
今回は、このピロティ構造について、なぜ耐震性が低いといわれているのか、そもそもピロティ構造とはどういったものなのかをご紹介していきます。ご自宅の耐震性について気になる方は、是非チェックしてみてください。
目次
そもそもピロティ構造とは何か
耐震性が低いといわれるピロティ構造は、どのようなものなのかを知ってしまえば簡単に見分けることができます。まずは、どういった建物がピロティ構造と呼ばれるのかについて確認していきましょう。
ピロティとは一階部分に壁のない構造
ピロティ構造とは、建物の一階部分が柱だけで支えられており、空洞になっていることをいいます。たとえば、一階部分が駐車場になっているような構造のことです。
一階部分は、上の階を支えなくてはなりません。一階が崩れてしまうとその建物はバランスを失い、倒壊へとつながります。そんななか一階部分が駐車場などの開放的なスペースになっていると、建物を支えるのは柱だけという状況になります。そのため、バランスを崩しやすく倒壊してしまう可能性が高くなるのです。
ピロティ構造は、駐車場を新たに設けなくても済むなどのメリットもありますが、上記のような欠点があるのです。
ピロティには2種類がある
耐震性が低いといわれているピロティ構造には、じつは2つの種類があります。それは、構造的なピロティと意匠的なピロティです。
構造的なピロティは、二階には耐力壁(地震に強い壁)が設置されており、一階部分は柱だけで支えられているといった構造です。二階が揺れに強く一階が弱いという構造は、地震の衝撃は一階に集中することとなります。そのため、一階部分は崩れやすくなってしまうのです。
対する意匠的なピロティというのは、二階と一階で耐震性が同じであることを意味します。一階部分は柱だけで、二階の壁には耐力壁が使われません。このような構造にすることによって、一階と二階の揺れへの強さは同じになり、地震がきても衝撃がどちらか一方に偏るといったことはなくなります。
しかし、これらの違いは見ただけではわからないことが多いです。お住いの住宅がどちらに該当するのかを知りたい方は、3章で詳しく解説する「耐震診断」を受ける必要があるでしょう。
ピロティ構造の耐震性について
ピロティ構造の定義はわかりましたが、一体なぜ耐震性が低いといわれているのでしょうか。この章では、ピロティ構造が建物のバランスを崩しやすい理由について詳しくご紹介します。
ピロティは地震に弱い傾向がある
ピロティ構造は、「一階部分が開放的なスペースで、柱だけで支えている構造」です。一階部分が柱だけということは、壁がないことも意味しています。このことを踏まえて、建物の耐震性を左右する要素についてみていくと答えがでてきます。
通常、建物における耐震性は、柱・壁・梁(はり:床や屋根を支える部材)の3つの要素が大きく関係するとされています。逆にいえることは、どこかひとつが抜けているだけでも耐震性は低くなっていくということでしょう。
建物のバランスをとるための壁が少ないと、柱だけでバランスをとらなくてはなりません。壁が少ないという構造上、必然的に耐震性が低くなっているのがピロティ構造なのです。
津波の被害は受けにくい?
ピロティ構造は、津波の影響は受けづらいという見解もあります。壁がない分水圧による負荷は少なくなるため、被害も抑えられることが考えられるでしょう。しかし、ここで問題になってくるのが、漂流物です。津波で流されてきたものが柱にぶつかれば、いくら水圧の影響を受けづらいといっても被害は発生してしまいます。
津波対策としてピロティ構造の建物に住む場合は、漂流物が衝突しても充分に耐えうる強度はあるのかをしっかりと確認しておかなければなりません。
家の耐震性が不安になったら耐震診断を
ピロティ構造の建物に住んでいる方は、ご自宅の耐震性について心配になるかもしれません。そんなときは、耐震診断を受けてご自宅の強度を知っておくことをおすすめします。
耐震診断の内容とは
耐震診断とは、建物の構造や状況を確認し、耐震性に問題はないかを判断する作業です。また、地震が発生した際の被害の程度を知ることができます。
お住いの住宅が強い揺れに耐えられるかどうかを確認したい場合は、業者に依頼して耐震診断を受けましょう。どのような箇所が弱っているのかを判断してくれるので、安心して生活していくことにもつながります。
耐震診断にかかる費用
耐震診断には、1㎡辺り1,000円~3,000円ほどの費用がかかります。作業料金は業者によって異なるので、あらかじめ問い合わせて確認をとるようにしましょう。
診断の結果によっては耐震補強に補助金がでることも
自治体によっては、補助金を出しているところもあります。それぞれの地域で設定されている基準に当てはまっていればお金を受け取ることができるので、気になる方は自治体に確認してみてはいかがでしょうか。
ピロティの耐震補強法
耐震診断をおこなって耐震性が低いと判断された場合は、耐震工事が必要になります。ピロティ構造での耐震補強工事は、具体的にどのようなことをおこなうのでしょうか。
柱に耐震用の素材を巻く
ピロティ構造の場合は、柱を強化する「柱巻き補強」という工法がとられることがあります。柱巻き補強は、補強材を柱の周りに取り付けることで、柱を強化して耐震性を向上させるという効果があります。
仕口ダンパーを使う
仕口ダンパーという装置を柱のつなぎ目に付けることで、揺れの衝撃を分散させることが可能です。パネルのような装置を柱の角に取り付けるだけの補強ですが、しっかりと強度を補うことができます。
壁を作る
ピロティ構造の耐震性が低い理由は壁がないことにあるため、耐震補強として壁を作ることもあります。しかし、この方法はピロティ構造本来の機能性や外観が損なわれることにもなるでしょう。
どの耐震補強を施すかは、建物全体の強度を踏まえて、どれが適切であるかを判断しなければなりません。まずは耐震診断を受け、ご自宅に最適な耐震補強はなんなのか、そもそも工事は必要なのかを確認してもらいましょう。
まとめ
ピロティ構造とは、一階部分が開放的なスペースで、柱だけで支えている構造のことを指します。柱に負荷がかかり崩れてしまえば建物も倒壊するため、耐震性は低いといえるでしょう。
しかし、そのピロティ構造は、意匠的なものと構造的なものに分かれます。これらの判別は素人では難しいので、業者に依頼をして判断してもらう必要があります。
耐震診断をおこなうことで、耐震補強工事が必要であるかどうかも確認することができます。自治体から補助金がおりることもあるので、業者に依頼する前に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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