私たちの生活になくてはならないもののひとつが、電気によって動く電化製品でしょう。電化製品の登場によって家事の負担が大幅に減少し、生活は数十年前より見違えるほど便利になりました。今となっては、電気なしには生きていけないといってもいいでしょう。
しかし、電気は扱い方を誤ると大変な事故を招くということを忘れてはいけません。たとえば、プラスとマイナスの配線を直接つなげると「ショート」という現象が起こるのですが、これによって火災が発生し、家屋が全焼してしまう危険性が考えられるのです。
「ショートってどういう意味なの?どうして直接つなぐとショートが起こるの?」という方も、中にはいるのではないでしょうか。そこで今回は、ショートの原因とその予防を紹介します。ショートによる電気火災は他人事ではないので、気をつけるようにしましょう。
目次
大電流の恐怖!ショートはどうして発生する?
ショートとは、電気抵抗をもつ物体を介さずに直接プラスとマイナスの配線をつなぐことで発生する現象のことを指します。「短絡」とも呼ばれているこの現象が発生すると、電子機器の故障やデータの消失、異常発熱による電気火事につながると考えられるのです。
どうしてショートは発生するの?
では、どうして直接プラスとマイナスの配線をつなぐことが危険なのでしょうか。それは、電気抵抗が限りなく低くなることで回路に大きな電流が流れるからです。これについては、電圧・電流・抵抗の関係を示す「オームの法則」で説明することができます。
オームの法則の公式は「V(電圧)=I(電流)×R(抵抗)」であり、この公式を使って電流の値を求める場合は「I=V÷R」となります。仮に電圧が2V、抵抗の値が0.01Ωになる場合、流れる電流の大きさは200Aとかなり巨大なものとなってしまうのです。
そして電線やケーブルには「許容電流」という、流すことができる電流の最大値が決められています。この許容電流を超える電流が流れるとケーブルの温度が大きく上昇し、被覆を溶かすどころか発火まで起こりかねません。最終的には、それが原因で電気火災にまで発展してしまうのです。
ちなみに、 電池のプラス極とマイナス極を直接つなぐと、内部で電池が破裂するという現象が起こることがあります。これは乾電池がショートを起こしたせいで発熱し、電池内でガスが発生したのが原因です。
ショートでブレーカーは作動する?漏電とショートの関係
現在では、ブレーカーには漏電とショートを防ぐ機能が付いています。そのため、電気回路に異常が見られると安全装置が起動し、ブレーカーが作動します。しかし、ここで気をつけないといけないのが「漏電とショートは全く別のもの」だということです。
漏電はショートとどう違う?
漏電とは、その名の通り「電気回路において電気が漏れること」を指します。そのため「電気回路の電線の中身が接触したことで大きな電流が流れる」状態のショートとは別物になります。しかし漏電は発生しているかどうか気づきにくいので、そういう意味ではショートより厄介かもしれません。
ショートが発生すると大電流が流れるので、それを探知したアンペアブレーカーが電気を遮断します。一方で漏電の場合は、漏電に反応する漏電ブレーカーが作動します。漏電の場合は家屋の配線に異常があることもあるので、すぐに漏電改修の業者に相談するのをおすすめします。
トラッキング現象にも要注意
電気火災に関しては、ショートや漏電以外に「トラッキング現象」にも十分な注意が必要となります。トラッキング現象とは、長い間挿しっぱなしになったコンセントや電源プラグの間にたまったホコリに湿気が加わることで放電が起こり、最終的には火災につながる恐ろしい現象です。
トラッキング現象で恐ろしいのは、ブレーカーが対応できないという点です。というのも、わずかな電流でも発生するため、ブレーカー側が探知できないのです。家に誰もいない状態で電気火災が発生することもあるので、コンセントは定期的に掃除してホコリを取っておくようにしましょう。
恐ろしい電気ショート。どんなときに起こりやすい?
ショートが起こると大きな火花が発生し、そこから電気火災につながることがあります。日常でのショートの原因は「電気コードを踏みつけたことによるコードの破損」や「劣化による絶縁性能の低下」などが挙げられます。
どんなときにショートは起こる?
電気コードは、2つに分かれた銅線の束が絶縁体に覆われている構造であることが多いです。古い電気コードを使用していたり、家具が電気コードを踏みつけたりしている状況だと、絶縁体が破損して銅線同士が接触してしまいます。その結果突然ショートが起き、電気火災にまで発展するのです。
中でもドライヤーは、使用した後にコードをねじって保管したりコードをつけっぱなしにしたりしがちです。そのせいでショートや電気火災が発生するケースもあるので、「最近ドライヤーを使用した後焦げ臭いような臭いがする……」という場合は、危険なのですぐに買い換えましょう。
ほかにも、プラスとマイナスの配線が一体化したダブルコードをニッパーでまとめて切ろうとした場合、ニッパーを介してプラスとマイナスが直結した状態になります。もし電気が通っている状態で切ってしまった場合、ショートの発生は避けられないでしょう。
ショートさせないために知っておきたいこと
ショートによる電気火災を発生させないためにも、以下のような対策を取っておくのが大切です。いずれも難しいことではないので、常に気を配っておくようにしましょう。
コードを踏みつけない
先ほども触れましたが、机や椅子などで電気コードを踏みつけていると、コード内の絶縁体が破損してショートの原因になります。そのため、電気コードが家具の下敷きにならないよう配慮しましょう。とくに移動式の椅子は、移動の際にコードを踏んでしまうことが多いため、なるべくコードから遠ざけるようにしてください。
電気コードを束ねない
電気コードを束ねた状態で使用していると、コード同士が互いを暖め合うことですぐ高温になります。それによって絶縁体が劣化してしまい、ショートが発生する原因となってしまうのです。そのため、電気コードは必ずほどいてから使用するようにしてください。
タコ足配線をしない
テーブルタップを使ってひとつのコンセントで複数の電化製品をつなげる行為を「タコ足配線」と呼びます。タコ足配線によってコンセントが使用できる電流を超えてしまうと、コードが高温になって絶縁体が劣化し、発火につながるおそれがあります。過剰にプラグを差したりしないようにしましょう。
電池同士を接触させない
電池同士が重なった状態のまま放置されていると、ショートが発生して発熱や破裂などを引き起こすことがあります。中でも、ボタン電池は複数個まとめて保管しておくとショートが発生しやすいです。そのため、セロハンテープを張って絶縁状態にするなどの対策をしておきましょう。
コードをステップルなどで打ち付けしない
電気コードを釘や「ステップル」という道具を使って固定すると、被覆が破損してショートを起こす危険性があります。ステップルで固定してよいのはVVFケーブルをはじめとする硬いケーブルだけです。もし釘やステップルで打ち付けてある電気コードがあれば、早めに外して点検をしましょう。
コンセントを抜くときはプラグ本体をもって抜く
コンセントを抜く際は、コードを握って引っ張らないようにしましょう。そういった抜き方を続けていると、コードの中の銅線が切れてショートの原因になります。必ずコードではなくプラグをもって抜くようにしてください。ただし、濡れた手でプラグに触ると感電のリスクがあるので、乾いた手で作業するようにしましょう。
まとめ
ショートが起きる原因はさまざまですが、予防をしっかりとしておけば防ぐことは十分可能です。また、もし停電が起きた際に分電盤を見にいったら漏電ブレーカーが落ちていて、「ショートだと思ったら実は漏電だった!」ということも考えられるでしょう。
もし停電の原因が漏電だと発覚した場合は、速やかに漏電改修のプロに依頼をしましょう。漏電もショートと同じく火災につながる恐れがあり大変危険です。電気の問題は、早めの対応や対策が重要となります。漏電やショートによる電気火災は、未然に食い止めるようにしましょう。
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