渡り配線とは、電子回路に複数の器具を挟み込むことにより、照明などの操作を簡単にする回路の形です。渡り配線を活用することによって、照明器具をスイッチで操作できるようになるほか、複数の照明を一度に操作することが可能となるのです。
コンセントに渡り配線を利用すれば、増設のための工事が簡単になります。ですが、どうして渡り配線によって工事が簡単になるのでしょうか。そして、渡り配線によるデメリットはないのでしょうか。 今回のコラムでは、渡り配線を採用しやすいスイッチ周りの配線例と、そのコンセントへの利用について考えていきます。
目次
渡り線とは
渡り線は渡り配線や送り配線とも呼ばれ、主として照明やコンセントをスイッチによって操作する際に使われやすい回路の形です。
通常、配電盤からコンセントへは回路を分岐させる配線(バラ配線)を取ります。この配線を使うことで回路上の電流が1つのコンセントで使用している分のみとなり、回路で許容される電流を最大限利用することができます。
ただ器具自体で電源の切り替えができない場合、回路に直接つながっていると付け消しが簡単にできず不便です。とくに照明の場合器具本体は高所にあることが多く、手の届きやすい位置で操作しやすく工夫する必要があります。
渡り配線は回路に複数の器具を挟み込むことで操作しやすくまとめた回路の形です。例えば照明の回路にスイッチを挟めば、照明器具を直接操作しなくても付け消しの操作が可能になります。複数の照明を一度に操作したい場合も便利です。
また追加コンセントを渡り配線にすることで配線工事が既存のコンセントから追加コンセントまでで済み、工事が簡略化されることが期待されます。大電流を扱う機器を接続予定でなければコンセント追加工事の費用を節約できますし、逆にどういう工事で設置されたコンセントかを知っておくことで大電流機器の接続を防ぐことも可能でしょう。
ただ流れる電流の量は、その回路全体で使われる電気機器の量に関わってきます。そのため合計電流の量には気を付ける必要のある回路の形です。
電気機器×1とスイッチ×1の配線方法
電気配線工事には電気工事士の資格が必要になりますが、コンセントと渡り配線の関係を知っておくことで使用時や工事立会い時にどんな作業をおこなっているか理解しやすくなります。そのため一度確認しておきましょう。
電気機器1つに対しスイッチ1つを対応させた配線の場合、電気機器とスイッチの間の黒色の配線にスイッチを接続します。スイッチ操作で回路を開通・遮断することができるため、例えば天井にある照明器具を壁のスイッチで操作することが可能です。
電気機器×2とスイッチ×2の配線方法
電気機器2つにそれぞれスイッチを対応させる場合、スイッチは1つにまとまっている方が効率的です。そのためスイッチ間を渡り配線で接続することで配線を簡略化することが可能になります。
この場合、配電盤から1つ目のスイッチまで黒い電線を配線し、その黒い電線を1つ目から2つ目のスイッチへつなげます。もう一方の配線はそれぞれの機器に配線した後、途中で合流させて配電盤に戻します。こうすることで配線の総延長を節約しつつ操作がしやすい回路となるのです。
主に照明器具に使われる回路ではありますが、コンセントをこの渡り配線にすることで遠隔での電気機器操作が楽になります。
電気機器×1とスイッチ×2以上の配線方法
例えば階段の照明など、1つの電気機器を複数のスイッチで操作したい場合もあります。この場合3路スイッチを利用することで1つの電気機器を複数のスイッチで操作することができます。
3路スイッチの場合、スイッチ間をつなぐ配線が2本ありスイッチはこの2本の配線間を切り替えます。同じ配線を使うようスイッチを切り替えれば電気機器に電流が流れ、違う配線であれば回路は開通せず電気機器は動きません。
照明器具で使われることも多い配線ですが、コンセントにこの渡り配線を組み込んで利用することも可能です。
コンセント増設時の配線方法
コンセントを増設したい場合、配電盤からの回路を分岐させコンセントにつなぐという方法があります。しかしこの方法は天井裏などで配線工事をおこなう必要があり、手間がかかってしまいます。手間がかかるということは業者に依頼する場合も技術料が高額になることが予想されます。
一方、既設コンセントから渡り配線で新しいコンセントをつなぐという方法があるのです。工事部分が短く済むため費用が安くなりますが、使える電流量は既設コンセントで使える電流量の範囲内に抑えられます。電源タップも渡り配線の一種のため、この電源タップを壁に取り付けるものと考えれば理解しやすいでしょう。
渡り配線によるコンセント増設は電源タップ使用にも似ています。電源タップについては過去コラム「たこ足配線対策!電源タップにつないでよいのは最大何個まで?」でもとりあげているため、こちらもご覧になってみてはいかがでしょうか。
まとめ
渡り配線と聞くと耳慣れないことばですが、そのことばの定着以上に家庭の電気配線には使われていることの多い配線の形です。照明器具の操作だけではなくコンセント増設に渡り配線が使われることもあり、その仕組みを理解しておかなければ過電流による事故につながるおそれさえあります。
電気配線工事は電気工事士の資格が必要なため自身で作業するのは難しいですが、一度コンセントの配線がどうなっているか、コンセントを増設する際にはどのようにおこなうか、見直してみるいい機会かもしれません。
コンセント工事・取替・増設を業者に依頼する際は
依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「コンセント工事・取替・増設」をご覧ください。
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