電気は私たちの生活するうえでも欠かせないもの。ですが、もし電気の使い方を誤ってしまうと、電気機器の故障はおろか、死亡事故の原因にさえなりかねないことを忘れてはいけません。
たとえば、毎日何気なく使っているコンセントは、使い方を間違えると火事を引き起こすことがあります。ある条件が揃うとコンセントから火花が発生し、やがて勢いよく発火するのです。
コンセントによって起こる火事を防ぐためには、私たち自身の予備知識が必要になります。そこで今回は、コンセントから出る火花の原因、そしてその予防法について解説していきましょう。
目次
プラグを清潔にしないと起こる「トラッキング現象」
コンセントから火花が出る原因としてまず考えられるのが、長い間コンセントにプラグを差しっぱなしにしていると起こりやすい「トラッキング現象」でしょう。火花の発生を繰り返した後に大きな炎をあげるため、火事の原因になることも少なくないとされています。
恐ろしいのは、このトラッキング現象はいつ発生するのかわからないという所です。たとえば電子機器を起動させなくても起こるため、出掛けていた間にトラッキング現象が起きて自宅が全焼した、なんて事態も想定できてしまうのです。
なぜトラッキング現象が起こる?
トラッキング現象が発生するのに必要なのは、「ほこり」と「湿気」の2つです。コンセントとプラグの隙間に溜まっていたほこりが湿気を帯びることで、プラグの刃の間に電流が流れるようになり、火花が何度も起こるようになるのです。
この連続する火花によって、プラグ表面の樹脂部分はどんどん炭化していきます。やがて樹脂部分は炭化していき、電気を通す炭によって構成された「炭化導電路」を形成します。この炭化導電路に電流が流れることで、コンセントから勢いよく発火するのです。
トラッキング現象が起きやすい場所は、普段は掃除しないのでほこりが溜まりやすい冷蔵庫や洗濯機などの裏側、水を多用するために湿気が多いキッチンや洗面所などでしょう。また、近年では加湿器の利用によって湿度が上がっている場合も多いので、注意が必要です。
トラッキング現象を防ぐにはどうすればいい?
コンセントから火花を出す危険なトラッキング現象ですが、これが起こらないようにするには、どんな点に気を付けるべきなのでしょうか。この現象を未然に防ぐのはそれほど難しくないので、以下に挙げる対策をしっかりやっておくのをおすすめします。
接続部はきれいにしておこう
トラッキング現象を防ぐうえで一番手軽なのは、コンセントやプラグを掃除することです。プラグをコンセントから抜き取り、ほこりを吸い込んでしまわないように用心しながら、乾いた布や掃除機などでプラグをきれいにしましょう。
しかし、プラグは掃除しやすい一方で、コンセントは隙間が小さくて掃除が難しいかもしれません。そういった場合には、ガスなどの気体を噴射するエアダスターを使用するのがおすすめです。噴射の勢いでほこりを吹き飛ばすことができるため、手軽に掃除ができます。
保護カバーを活用しよう
トラッキング現象を防ぐには、ほこりの侵入を許さないのが重要です。ですので、プラグには保護カバーを装着しましょう。ホームセンターなどで安価で手に入るので、日ごろ掃除する機会の少ない洗濯機や冷蔵庫などのプラグに装着することをおすすめします。
また、トラッキング現象はプラグを差しっぱなしにすることで起こります。普段使わない電気機器があるなら、それの電源プラグはコンセントから引き抜いておくと安全です。このとき、使ってないコンセントにはコンセントカバーを付けるのもよい対策になるでしょう。
「タコ足配線」のやりすぎには要注意
数多くの電気機器を使うようになると、電力を供給するためのコンセントもその分だけ必要になります。そのため、コンセントの差込口を増やすテーブルタップが普及するようになりました。テーブルタップを用いたこの配線は、「タコ足配線」と呼ばれています。
このタコ足配線は、場合によっては火災の原因になりかねません。というのも、1つのコンセントが同時に使用できる電流の量は決まっているからです。タコ足配線によって電気機器を接続しすぎると、高熱を帯びたテーブルタップやコンセントから火花が出るおそれがあるでしょう。
コンセントの限界を把握しておこう
タコ足配線で注意すべきなのは、電子機器を何個使用しているかではなく、合計でどれだけの電力を使っているかです。たとえ電気機器を1つしか使っていないとしても、流れる電流がコンセントの許容範囲を超えた時点で、それ以上プラグをテーブルタップに差すのは危険なのです。
一般的に、1つのコンセントが流せる電流の限度は「15A(1,500W)」だとされています。テーブルタップを使用するときは、電気機器の消費電力を確認しておき、決められた量を超過しないようにしましょう。なお、古い配線だと超過一歩手前でも発火のリスクがあるため、15Aを一回り下回る量に抑えると安全です。
テーブルタップは時間経過で劣化するものであり、もし劣化した状態のまま使い続けていると、火災の原因になるおそれがあります。そのため、いよいよ寿命を迎えたかな?と判断したときは、なるべく早いうちに新品と交換しておくようにしましょう。
テーブルタップに差し込んだプラグがグラグラしたり、テーブルタップを介して動いている電気機器の動作が不安定だったりするのは、寿命が近い証拠です。そのまま使い続けると火災を引き起こす危険性があるので、
ちなみに、近年ではトラッキング現象への対策を施してあったり、使わない電気機器への電力供給をカットできたりするテーブルタップも販売されるようになりました。火災が起きないか不安なときには、これらの対策グッズを購入してみるのをおすすめします。
ほかにもあります、火花の原因
コンセントから火花が発生する原因は、トラッキング現象やタコ足配線だけではありません。この項目では、さまざまな火花の発生原因をいくつか紹介していきます。
電源を切らずにコンセントを抜く
電気機器の電源を切っていないのにコンセントを引き抜くと、火花が飛び散ることがあります。とくにドライヤーやパソコンは流れる電流も大きいため、大きな火花が発生しやすくなっています。電気機器の故障を招くこともあるので、必ず電源を切ってからコンセントを抜くようにしてください。
コンセントに異物が混入する
もし、コンセントやプラグに髪の毛などの異物が付着していると、それが原因で火花が発生することがあります。とくに髪の毛は電気を通す性質をもつため、火花が発生するリスクがとても高いです。ですので、プラグをコンセントに差す際は、異物が付着してないか確認しておくようにしましょう。
落雷
落雷によって生じた高圧電流が電線などを通して建物に侵入することがあり、これを「雷サージ」と呼びます。この雷サージによって、コンセントから火花が散ることがあります。高圧電流を流し込まれた電気機器は故障する危険性が非常に高いので、もし雷が鳴り始めたら、電源プラグをコンセントから抜いておくのをおすすめします。
コード部分の異常
コンセント以外にも、電源コードから火花が発生することがあります。針金などで束ねていたり机などの重いもので踏んでいたりしていると、電源コードの断線や温度の上昇を招き、それが火花や発火につながるのです。プラグやコンセントだけでなく、コード部分にも気を遣うようにしましょう。
もしも火花が発生したら?
実際にコンセントから火花が発生したら、火花を出しているコンセントからプラグを引き抜きたいと思うものです。しかし、その状態のプラグを素手で触ると感電してしまうおそれがあるので、絶対にプラグには触らないようにしましょう。
もし火花が起きたら、その部屋のブレーカーを落としておきましょう。電力供給がシャットアウトされるので、さらなる事故を未然に防ぐことができます。その後、すぐに電気工事の業者に電話し、配線を診てもらうよう依頼するようにしてください。
焦げたコンセントは使用禁止
コンセントから火花が出て真っ黒に焦げてしまっても、慌てて自分で修繕することはやめましょう。コンセントをご自身で開けて修理をするのは、やけどを負ったり発火の原因になったりする恐れがあるため、大変危険なのです。
また、一度火花が出て焦げてしまったコンセントは発火しやすい状態になっているため、再度使おうとするのは火災のリスクを高めてしまいます。ですので、焦げてしまったコンセントには決して手を出さず、業者に交換を依頼するようにしてください。
電気工事はプロにお任せ
宅内配線のひとつであるコンセントを修理するには、電気工事士の資格が必要となります。もしも無許可で電気工事をおこなってしまうと、法律で罰せられてしまうおそれさえあるのです。コンセントに異常が起きたら、すぐに電気工事の業者へ相談しましょう。
また、コンセントにも寿命があり、その年数は平均で約10年だとされています。劣化したコンセントを使い続けることでも火花が出ることがあるので、もし10年以上使っているコンセントがある場合も、業者に依頼して交換してもらうのも推奨します。
まとめ
コンセントからの火花を防ぐのは、意外と難しいことではありません。長年掃除していない冷蔵庫や洗濯機などのプラグを掃除するなど、自分でできることから少しずつ取り組んでみることで、大惨事になるのを防ぐことができるでしょう。
しかし、不注意からコンセントから火花が出てしまい、プラグとコンセントが真っ黒に焦げてしまったという方もいるかもしれません。そういった場合は決してご自身で修理しようとせずに、電気工事の業者に頼むようにしてくださいね。
コンセント取替などの工事を依頼できる業者・料金
依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「コンセント工事・取替・増設」をご覧ください。
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