私たちの生活でよく目にする鳩。だれしも一度は見たことがあるのではないでしょうか。道端や電線の上などで見かける分には穏やかでよいのですが、自宅に巣を作られてしまったりすれば一転、鳩は「害鳥」となります。
とくに近年、鳩は増加傾向にあることをご存じでしょうか。「数も多いし、人に害を与えるのなら駆除すればよいのでは?」と思われるかもしれませんが、鳩には簡単に駆除できない大きな“理由”があるのです。
この理由を知らなければ、最悪逮捕されてしまうこともあるため、しっかり知っておきましょう。この記事では、そんな鳩について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
鳩の天敵は意外と多い!
近年増え続けている鳩ですが、その天敵は意外にもたくさんいます。陸・空ともに多くの天敵が存在するので、ここではその一部を知っていきましょう。
鳩の天敵一覧
『陸』にいる鳩の天敵
・ネコ
・ヘビ
『空』にいる鳩の天敵
・カラス
・タカ
・フクロウ
・ワシ
上記のような動物たちが、鳩の天敵となります。
ワシやタカ、フクロウは肉食です。また、鳩同様よく見かけるカラスは雑食なので、肉も食べます。地上では、ネコが最大の天敵といえるでしょう。このように、鳩の天敵は意外にも世の中に多く存在するのです。
人間も鳩の天敵だった
私たち『人間』も、昔は鳩の天敵であったことはご存じでしょうか。食用のイメージの薄い鳩ですが、鳩の中には食べられる種類もいます。
私たちがよく見かける鳩は大きく分けて「ドバト」と「キジバト」の2種類です。とくにキジバトは、江戸時代までは食用として一般的に食べられていました。最近では食べられる機会は減ったものの、一部のお店では、キジバトを出しているところもあります。
ちなみに、公園などでよく見かけるキジバトやドバトを含む鳩は、病原菌がたくさんついているため食べられません。そういった点では、日常的に鳩を捕獲して食べる機会などないため、最近では人間は鳩の天敵となり得ないでしょう。
しかし、その一方で中国やヨーロッパなどでは現在でもドバト、キジバトともに食用として食べられています。日本では食用の鳩はあまりなじみはありませんが、鳩も食べる場合があるという点では、人間も鳩にとっては天敵なのでしょう。
人間のせい?天敵が多い鳩が減らない理由
天敵の多い鳩が数を増やし続けている理由、それは「街中に住みついているから」です。街中に住みつくことは、鳩にとってふたつのメリットがあります。
街中は天敵が少ない
前章であげたワシやフクロウなどを、街中や住宅街で見かけることはほぼありません。これだけでも、街中にいれば多くの天敵と遭遇しなくて済むということがわかります。
人間が住む地域にいる天敵は、せいぜいネコ・カラス程度のもので、ほかにはほとんどいません。また、そのカラスとネコも以前ほど鳩を狙わなくなりました。なぜなら、わざわざ鳩を狙わなくても、ほかにエサがあるからです。
カラスや野良ネコが、街中のごみをあさっている様子を見たことはあるでしょうか。街中には、カラスやネコにとって簡単に入手できるエサであふれています。そのため、苦労して鳩を狩る必要がなくなってしまったのです。
天敵のいない街中で、鳩はどんどん繁殖を続けました。その結果が、今のこの状況なのです。
エサ・住みかが豊富
鳩は基本的に植物や穀物を食べる生き物ですが、街中では人間が落としたり、こぼしたりした食べ物のかけらなどを食べて生きています。中には鳩にエサを与えてしまう人もいるため、鳩がどんどん人慣れしてなかなか街から離れない、という問題にもつながってしまうのです。
また、鳩はおもに薄暗く、囲まれた狭い場所に巣を作って住んでいます。街中や住宅街は家と家の間やベランダ、軒下など、鳩の巣に絶好の環境がそろっていますよね。
天敵も少なく、エサも豊富で住むにも困らない街中は、鳩にとって非常に住み心地のよい場所といえるでしょう。
日本に生息している鳩の種類
全世界にいる鳩は約300種類いるそうですが、その中でも日本に存在する鳩は野生だけでおもに6種類存在します。鳩は種類によって住んでいる地域が違いますので、自分が住んでいる地域の鳩は、どんな鳩なのか確認してみることで、鳩退治の参考になるかもしれません。
鳩の種類
カワラバト(ドバト)
都市部などでよく見かけることが多い鳩の一種です。鳩胸が盛り上がっているのが特徴で、灰胡麻や黒胡麻、モザイクなどいろんな柄のレパートリーがあります。ほとんどの人が「鳩といえば」このドバトを想像してしまうほどにはオーソドックスな種類になります。
キジバト
木の実などの穀類を食べますが、ドバトと同じように都市部などに進出してきている傾向にあります。こちらも都市部にいる鳩の中でもオーソドックスな鳩の1匹で背中に鱗模様があるのも特徴のひとつです。また、鳴き方も特徴的な鳴き声をするので、鳩の鳴き声を聞いたことがある方はこのキジバトの鳴き声かもしれません。
シラコバト
国の天然記念物に指定されている貴重な鳩の1種類です。埼玉の県鳥にもなっていて、埼玉県越谷市を中心に生息しています。一度絶滅するのではないかと危惧された鳩です。薄くきれいな灰褐色の色をしているのも特徴のひとつです。
アオバト
暗めの黄色がかかった羽毛を持つ鳩の中でも異色を放つ鳥の種類です。山地に生息しており、ドングリや果物などを食べる鳥です。また、海水を飲みに海岸に現れることもあるそうです。都市部では見かけることが少ない種類の鳩です。
キンバト
八重山諸島や宮古諸島など狭い地域にしか生息していない天然記念物に指定されている鳥です。羽の色は肩羽がきれいな金緑、頭部の毛色は青灰色といった不思議な配色の鳥の種類です。
カラスバト
太平洋側に生息する天然記念物の、うち1種類です。体長が日本に住んでいる鳩の中でも大きいのが特徴で、繁殖力もドバトなどと比べればとても弱く、個体数が減少している鳩のひとつです。
鳩と一括りにしてしまうと天然記念物に指定された鳥まで害を及ぼしてしまう危険性がありますので気を付けましょう。
また、天然記念物に指定されている鳩は山地などに暮らしている種類もあるのでその分、都市部の鳩より鳩の天敵が多く、減少してしまうひとつの原因なのかもしれません。
鳩の勝手な駆除は絶対NG!知らないと危険な「鳥獣保護管理法」
「鳩の天敵が街中にいないなら、自分で駆除すればよいのでは?」
そう思うのはもっともですが、どうしてもそれができない理由があります。その理由が、「鳥獣保護管理法」です。
鳥獣保護管理法とは、日本国が定めた鳥獣を保護するための法律です。この法を違反した罰は重く、最悪1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金が科せられます。
この法律の保護対象には、鳩も含まれています。そのため、勝手に鳩を駆除すると、この法により罰せられてしまうのです。
また、この法律で罰せられる行為は駆除だけではなく、鳥獣への傷害や過度におどろかせる行為も含まれます。不用意に鳩に接触しようとするとこの罪に問われてしまう可能性があるため、勝手な対策は絶対にしないようにしましょう。
卵やひな、巣も駆除禁止!
また、鳩はよく、家屋のベランダなどに巣を作ります。ベランダに巣を作られてしまうと非常に迷惑なため、鳩がいない内に壊してしまおうと考える方もいるかもしれませんが、これはいけません。
鳥獣保護管理法は、鳩の卵やひななどにも適用されます。正しい方法を取らずに捨ててしまうと鳥獣保護管理法に違反してしまうおそれがあるため、鳩対策の行動はくれぐれも慎重におこなうようにしてください。
キジバトは狩猟鳥獣
一般的に見かけることの多いドバトとキジバトの中でも、キジバトは鳥獣保護管理法において捕獲などをしてもよいこととなっています。これを『狩猟鳥獣』と呼びます。
しかし、だからといってむやみに捕獲や駆除をしてもいいというわけではありません。狩猟をおこなう際は、以下のことに気を付けてください。
【狩猟鳥獣についての注意点】
・該当区域を管轄している自治体へ許可申請を出すこと
・狩猟できる期間や捕獲個体数が決められている
・狩猟禁止の区域があること
・道具を使っての捕獲はその道具に応じた狩猟免許を所持していること
・捕獲の際には周りの安全を確保すること
つまり、公園にいるキジバトなどは素人が簡単に駆除などできないように決められているため注意しましょう。
天敵の“置物”も有効?自分でも安全にできる鳩対策とは
鳩を勝手に駆除したり、傷つけたりすることは法律により禁じられていますが、ただ寄せ付けないように対策を取るだけであれば罪には問われません。鳩への被害に悩まれている人は鳩対策グッズなどを駆使して鳩を寄せ付けないようにしましょう。
また、これらの対策はすでに巣を作られてしまった状態だとあまり効果がありません。あくまで鳩の被害が進む前やすでに鳩を追い払った後の再発生防止にやっておくと有効な対策です。今のうちから万全の対策を取っておくことで、鳩被害を防ぎましょう。
鳩の天敵を模した“置物”を設置する
鳩が多い場所や、巣を作られてしまいそうな場所に鳩の天敵の置物を置いておくと効果的です。鳩被害に困っている場所には一度、フクロウやカラス、ヘビなどの置物を置いてみましょう。
ただ、この方法は数度追い払うとその後慣れられてしまい、効果がなくなることが多いといわれています。あくまで簡易的な対策だとおぼえておきましょう。
防鳥ネットを活用する
鳩などの害鳥対策グッズは、非常にさまざまな種類のものが市販されています。代表的なものでは、鳩の飛来を防ぐ防鳥ネットなどが挙げられるでしょう。市販で気軽に買うことができ、対策も簡単にできる防鳥ネットは非常に魅力的です。
ただし、張り方が甘いと少しの隙間からむりやり入られてしまうことも。張るのであればしっかり、隙間なく貼ることを心がけてください。
防鳥ネットはアパートなどの集合住宅の場合、許可を取らなければ設置できないこともあります。設置前にはしっかり確認しておくようにしましょう。
鳩の足場を作らない
鳩はベランダの手すりに降り立つことが多いため、その部分に市販の防鳥剣山やテグスなどを設置しておきましょう。被害を受ける前や進行する前にこの対策を打っておけば、鳩が飛来しにくくなります。
鳩が飛来しそうな場所を清潔に保つ
鳩は一般家庭ではおもにベランダや軒下などに飛来し、巣を作ります。飛来を防ぐためには、そのベランダを鳩の住みにくい環境にしなければなりません。そのためには、ベランダや軒下にされた鳩の糞などをこまめに片づけて、鳩が巣を作りにくい環境を目指しましょう。
思わぬ狭い場所に注意!
鳩はときには室外機の裏など自分たちの身を隠せる場所に住みつくこともあります。こういったものの裏側などは気づきにくいため、知らない内に鳩が住み着いてしまい、出ていかなくなるなんてことも……。
とくにベランダや軒下などには極力ものを置かないようにし、どうしても置かなければならない場合はこまめに狭い部分をチェックするようにしましょう。
何度追い払っても戻ってくる…そんなときはプロに頼もう
鳩は自分のねぐら、巣に強い執着を持つ動物です。すでに巣を作られてしまっている場合だと、何度追い払ってもすぐに戻ってきてしまうことでしょう。
鳩は天敵もいない、住みやすい巣をそう簡単には手放しません。かといって鳩や鳩の卵を傷つければ鳥獣保護管理法に違反してしまうため、個人での対処はどんどん難しくなっていくでしょう。
鳩の対策は、鳩を傷つけずに『あきらめさせる』対策を取ることが大切です。安全に、本格的な対策を望むのであれば、プロの業者への依頼が賢明といえますね。
鳩対策業者の費用相場
鳩対策を業者に依頼する場合、その費用相場は3~8万円ほどかかるといわれています。この費用はおもに、施工する場所(ベランダや軒下など)の広さや被害状況などによっても大きく変わるため、依頼の際は一度見積りを取ってもらうようにしましょう。
まとめ
鳩の天敵にはタカやワシなど多くの動物がいますが、人の生活圏内ではカラスやネコ程度しかいません。そのため、鳩は天敵の少ない街中でみるみる数を増やしていきました。
家などに住みつかれてしまえば害鳥となってしまう鳩。不用意に接触してしまうと『鳥獣保護法』に違反してしまう可能性があるため注意が必要です。
鳩対策は個人でできるものもありますが、基本的には鳩の被害が少ないうちしか効果が出にくいというデメリットがあります。まだ鳩の被害にそれほどあっていないという方は、予防のためにも個人でできる対策を打っておきましょう。
また、すでに巣を作られてしまっている場合は、なかなか個人の対処では解決が難しい状態になっています。被害がすでに進行してしまっているのであれば、プロの業者に依頼して対処をしてもらいましょう。
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