特殊な樹脂でコーティング!住宅を雨から守る「FRP防水」の基礎知識

2021.4.30

特殊な樹脂でコーティング!住宅を雨から守る「FRP防水」の基礎知識

「FRP防水」という施工方法について、ご存じでしょうか。

ベランダや屋上など、雨風にさらされる場所には雨漏りを防ぐために防水加工を施す必要があります。防水加工の方法にはさまざまなものがありますが、なかでもさまざまなメリットをもつ便利な防水方式として、FRP防水が挙げられます。

一般家屋のベランダなどはもちろん、身近な例ではプールの床面にも使われているFRP防水。そのメリットとデメリット、どんな施工を行うのかなど、これから防水をお考えの方に向けて、知っておくと役立つ知識を幅広くご紹介いたします。

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ベランダの防水でよく使われるFRP防水とは?

◆FRPってどんな素材のこと?

まずは大前提となる知識として、そもそも「FRP」という素材がどんなものであるかかんたんにご説明します。

FRPとは、「Fiber Reinforced Plastics」の頭文字をとった略称で、日本語に訳すと「繊維強化プラスチック」となります。その名の通り、繊維を入れることで補強したプラスチックのことです。

プラスチックは軽くて水をはじき、加工も容易と非常に扱いやすい素材ですが、反面強度面では木材や金属に比べると不安がありました。この弱点を補うために、ガラス繊維や炭素繊維などで骨組みをつくり、強度を引き上げたものがFRPと呼ばれる素材です。

FRPが使われている身近な例としては、自動車の内装や楽器といった強度と柔軟性を両立したい部品、あるいは水に触れるボートや家庭のキッチン周りなどによく使用されています。

木材や金属よりも水分による劣化が起こりづらく雨風に強いため、水にさらされやすい場所や、水を防ぎたい場所の素材として使われるのが一般的です。

◆FRP防水は塗膜防水の一種

水をはじくという性質から、FRPは防水用の素材としてしばしば活用されます。その最たる例といえるものが、本コラムでご紹介する「FRP防水」です。

FRP防水は、木材やコンクリートといった雨風で劣化しやすい部分に、FRPを含んだ塗料を塗ることで表面をコーティングし、防水性を向上させる施工方式です。

こうしたコーティングによる防水処理は塗膜防水と呼ばれています。木材やコンクリートの強度はそのままに、表面を覆うだけで防水が可能なため、さまざまな場所で活用されている防水施工です。

すぐにイメージできる身近な施工例としては、プールの底面に使われているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。プールで底に足を付けたときに感じるあのつるつるとした感触は、FRPで防水加工がされているためです。
ベランダの防水でよく使われるFRP防水とは?

FRP防水のメリットとデメリット

FRP防水についての基礎的な知識を前項ではご解説しました。次は、FRP防水に具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのかご紹介いたします。

◆FRP防水のメリット

・耐久性が高い
FRPの大きな特徴でもある、繊維で補強していることによる構造強度の高さは、そのまま塗膜の耐久性に直結します。とにかく頑丈なので、ベランダに室外機や物干し竿といった重量物を置きたい場合にも、傷やヘコミが生じにくく安定して設置を行うことができます。

・継ぎ目がない
塗料でコーティングする方式なので、継ぎ目のない美しい仕上がりになります。

・塗膜が剥離しづらい
耐久性にも通じる利点ですが、FRPコーティングは下地にしっかりと密着するため、長年使っても塗膜が剥がれにくいというメリットがあります。したがって、塗膜の寿命が長く、防水施工の張り直しが必要な時期を延ばすことができます。

・摩耗に強い
FRPの頑丈さは、衝撃や圧力だけでなく、摩耗に対しても発揮されます。日常の歩行によって生じる摩擦はもちろんのこと、車が往来する駐車場、スポーツの行われる競技場、重量のある機材を頻繁に搬入出する工場の床などにも採用されています。

とくにベランダの防水に使用する場合、洗濯物を干すために毎日上を歩くことも多いため、耐摩
耗性に優れたFRP防水が適しているとされています。

・塗膜自体の重量が軽い
FRPはプラスチックなので、重量が軽いという特徴があります。1m四方あたりの重量が3kgから5kg程度と、ほかの塗膜に比べても非常に軽量です。塗料の重量は意外と建築物にとって負担となるため、家自体の寿命を延ばす意味でもFRPの軽さは利点となります。

とくにベランダの場合、壁から張り出した構造になっているため重量による負荷がかかりやすい場所なので、FRP防水が適しています。

・短工期で済ませられる
防水塗装は塗膜がしっかり硬化してからでないと仕上げや次の工程に移ることができず、こうした硬化待ちの時間で総工期が伸びてしまいがちです。FRP塗料はほかの塗料と比べて硬化にかかる時間が短く、重ね塗りを行う場合でも1日から2日程度で済ますことができます。

◆FRP防水のデメリット

・柔軟性がなく亀裂が入りやすい
FRP塗膜はガラスや炭素といった硬質な繊維を骨組みとしているため、振動や衝撃には強いものの、伸縮性や柔軟性があまりありません。とくに木造建築の場合木材は湿度や温度によって膨張したり収縮したりします。FRP塗膜はこのサイズの変化に対応できず、ひび割れが生じてしまうことがあります。

ベランダ程度の広さをコーティングするのであれば、FRP塗料の伸縮性でも下地の膨張や収縮を吸収することが可能ですが、屋上など広いエリアに塗膜をつくる場合、このデメリットが大きく影響してきます。

したがって、防水施工をしたい場所の広さによってはFRP防水が適していない場合があります。また、地震などによって建物がゆがむと、そのゆがみを吸収しきれずにコーティングが剥離してしまうこがある点もデメリットとなります。

・紫外線に弱い
プラスチック全般に共通する弱点として、紫外線によって劣化しやすいというデメリットがあります。とくに野ざらしになる屋上などでは紫外線による劣化の影響が大きくなります。

ただし、トップコートという仕上げ塗りのコーティング剤を使うことで紫外線による劣化をある程度抑えることが可能です。トップコートは使っていくうちに摩耗していくため、定期的に塗りなおしをして紫外線への耐性を回復させる必要があります。

・施工中にニオイや繊維の飛散が気になる
FRP塗料は化学変化によって硬化しますが、このとき独特のツンとした刺激臭がします。個人差はあるものの気になる人は非常に気になるニオイなので、近所の人に迷惑になる可能性があります。

またFRPの骨組みとなる繊維が施工中に風に乗って飛散してしまうことがあり、硬質な繊維が衣服の中に入ることがあると、チクチクとした不快感をもたらす場合があります。ニオイも含め、近隣に住む方にあらかじめ理解を得ておく必要があるかもしれません。
FRP防水のメリットとデメリット

FRP防水の作業内容ってどんなもの?

FRP防水の施工がどのような作業工程を踏むのか、以下に順を追って解説していきます。これからご紹介するのは、FRP防水の中でも一般的な密着工法という方式についてです。

1.下地の処理
FRP防水施工は、ベランダなどの床面となる下地材に、FRP塗料をコーティングすることで防水を行います。そのため、まずは事前準備として下地材を床面に適した形状に加工するところから始まります。

下地材には木材や、サイディング板、コンクリートパネルなどが使われます。下地材に排水溝につながる穴をあけ、排水口をとりつけ、壁材との隙間をパテで埋めれば、あとは防水コーティングを施すだけとなります。

2.プライマーの塗布(下塗り)
プライマーとは、防水塗料と下地との密着をよくするための接着剤のようなはたらきをもった下塗り材のことです。

また下地が木材の場合、塗料の水分を吸ってしまってうまく化学反応が起きなくなることもあるため、あらかじめプライマーを吸わせておくと水分の吸収を防ぐことができます。プライマーを下地全体に塗布し、しっかりと下地に浸透させたら、次の工程にうつります。

3.繊維マット貼り
FRPの骨組みとなる繊維のマットを下地に貼っていきます。ガラス繊維マット、炭素繊維マットなどがありますが、一般的にベランダの防水用途として使われるのはガラスマットの方です。

4.プラスチック塗料の塗布
ガラスマットを下地に貼り終えたら、液状のプラスチック塗料を塗っていきます。このプラスチック塗料が防水性能のキモとなる部分のため、塗りムラがなく厚みも均一に仕上がるよう技術のみせどころとなります。

5.気泡抜き
プラスチック塗料が化学反応で硬化しきる前に、ローラーなどを使ってガラスマットに残った気泡を追い出していきます。この気泡抜き作業を怠ると、下地と防水塗料がしっかり密着しなくなり、剥離やひび割れの原因となってしまいます。

6.重ね塗り
耐久性と耐摩耗性を確保するために、防水塗料はある程度多層に分けて厚塗りを行います。一層目と同じようにガラスマットを貼り、プラスチック塗料を塗って、ローラーで丹念に気泡を抜いていきます。

7.表面仕上げ
防水塗膜の重ね塗りが終わり、塗料が十分に硬化したら、表面を電動やすりなどで磨きます。表面が滑らかになるまで磨いたら、塗膜を紫外線や汚れから保護するためのトップコートというコーティング剤を塗布して、FRP防水施工は完了となります。
FRP防水の作業内容ってどんなもの?

FRP防水を業者に依頼した際の費用相場

FRP防水を防水施工専門業者に依頼した場合、かかる費用については大きな変動幅があります。

塗料代、ガラスマット代、作業工賃は業者によってまちまちであるほか、下地材を自前で用意する場合や業者に用意してもらう場合、業者と作業場所との距離による出張費の変動、作業に関わる人数による人件費も大きく変動します。

したがって一口にこの費用で作業をしてもらえるということはできませんが、目安として以下にFRP防止施工の費用相場をご紹介します。一般的に、施工費用は施工面積に比例すると考えておきましょう。

◆小さめのベランダ(2平米)の場合  ……12,000円~16,000円
◆大き目のベランダ(4平米)の場合  ……24,000円~32,000円
◆大き目のバルコニー(10平米)の場合……50,000円~70,000円
◆かなり大きいバルコニー(16平米) ……96,000円~128,000円

さらに、トップコートを定期的に張り替えるメンテナンス費用がかかる場合もあります。

繰り返しになりますが、防水施工は一件一件施工条件の異なるオーダーメイド方式なので、定価というものが存在しません。施工を検討される際には必ず、事前に見積もりをとるようにしましょう。
FRP防水を業者に依頼した際の費用相場

FRP防水はDIYすることできる?

FRP防水の塗料は、ガラスマットも含めてホームセンターなどで市販されています。そのため、自分で防水工事を行うことも可能です。

ただし、防水という施工の性質上、ほんのわずかの塗りムラや隙間があるだけで、そこから水が入り込んで下地を劣化させてしまったり、雨漏りを生じさせてしまったりすることがあります。仕上がりには完璧を求められるため、プロの手腕に任せるのが無難かもしれません。

一方で、表面を紫外線や汚れから守るためのトップコートについては、自分で塗りなおしを行う人も多いようです。トップコートは5年程度で防護力を失うため、定期的に塗りなおしをする必要があります。

こちらは表面を掃除してコーティング剤を塗るという比較的簡単な作業なので、DIYの一環で行いやすいメンテナンスといえます。

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まとめ

FRP防水の特徴と作業工程について、これから防水をはじめる人に役立つ知識を幅広くご紹介してきました。

長年さらされることになる雨風を防ぐ防水施工は、建物の寿命を左右する非常に重要な工事です。大切なお家を長く使い続けるためにも、防水の方法はしっかり吟味し、後悔しない防水施工を目指しましょう。

防水工事を依頼できる業者や料金

依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「防水工事」をご覧ください。

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