アンカーボルト、というものがどんなものかご存知ですか?「ボルト」という言葉から、なにかの部品であることは分かるかもしれません。
アンカーボルトというのは建築で使用される小さな部品で、耐震工事などをおこなううえで大きな役割を担っているものです。
この小さな部品が、地震から家を守ってくれることにつながります。このコラムでは、そんなアンカーボルトとはどんな部品なのか、また、どんな種類があるのかを、わかりやすくご紹介していきます。
目次
アンカーボルトの役割
アンカーボルトとは、簡単にいうと家の基礎と柱、基礎と土台などを連結させる部品です。
たとえば、鉄骨や木材で作られた柱と、鉄筋コンクリートで固められた基礎は異なる素材ですが、より強固な家をつくり上げるためにはこの異なる素材同士をしっかりと連結させる必要があります。鉄筋コンクリートの中に鉄骨や木造の柱を埋め込む方法もありますが、それでは家の柱を支えるには不十分です。そんなとき登場するのが「アンカーボルト」です。
地震が発生したとき、建物の地盤や建物を構成している材料すべてに地震の揺れや、揺れによって建物が曲がる力が加わります。地震によって建物に力がかかると、アンカーボルトには基礎と柱、もしくは基礎と土台をつなぐ部分に引き抜こうとする力が発生するのです。建物と基礎を引き離す力に耐えられなければ、建物は基礎や土台から切り離され、倒壊してしまいます。
地震の揺れによる建物と基礎が引き抜かれる力に耐えて倒壊を防ぐことが、このアンカーボルトの役割なのです。
アンカーボルトの種類
アンカーボルトとは、1つの形状ではなく種類によってさまざまな形を成しています。また、施工の方法もさまざまです。それぞれの種類について解説していきましょう。
材質
アンカーボルトの種類には大きく分けて、金属系アンカーと接着系アンカーに分類されます。
金属系アンカーは建物を構成している鉄筋コンクリートに穴をあけて、アンカーボルトを入れ込み、鉄筋コンクリート同士をつなぎ合わせるものを指します。金属系アンカーは、アンカーを入れ込むことで先端が広がる仕組みです。先端が広がることによって鉄筋コンクリートから抜けづらくなり、地震による引っ張り力に耐えることができるのです。
接着系アンカーボルトとは、建物の構造体に穴をあけ、その穴に接着剤を詰め込みます。穴をあけた部分にアンカーボルトを差し込み、構造体と基礎や土台を接合するものです。接着系アンカーボルトを入れ込むことで、穴に入れた接着剤で固定され、地震による引っ張り力に耐えられるようになります。
施工方式
金属系アンカーの施工方式はさまざまな施工方式がありますが、ここでは芯棒打ち込み式と内部コーン打ち込み式の2種類についてご紹介します。
芯棒打ち込み式はアンカーを入れ込み、上からハンマーなどで打ち込むものです。土台や基礎に打撃によってしっかり埋め込んだあとに、ナットの締まり具合を確認します。
内部コーン打ち込み式では、アンカーボルトを少し叩いて、基礎や土台に仮で固定しておきます。アンカーボルトを入れ込むための打ち込み棒であるハンドホルダを利用して、アンカーボルトがしっかりと埋め込まれるまで打ち込みます。
一方、接着系アンカーは金属系アンカーと違い、穴の中に接着剤や接着の役割を果たすカプセルを入れ込み、アンカーボルトを固定する施工方式がおこなわれます。そのため、ドリルなどを利用して穴をあけてから、穴の中を掃除して接着剤やカプセルを入れ込みます。アンカーボルトを穴の底まで入れ込み、接着剤が乾けば完成になります。
ABR/ABM規格のアンカーボルトの性能はお墨付き!
従来のアンカーボルトは、阪神淡路大震災が発生した際にボルトとネジの部分が破損してしまい、建物が倒壊してしまうという事例が多く報告されました。
せっかく耐震性の強化のためにアンカーボルトを使用しても、効果を発揮しないのであれば意味がありません。そこで開発されたのが「ABR/ABM規格」のアンカーボルトです。ABR/ABM規格のアンカーボルトとは、社団法人日本鋼構造協会がより建物の安全性を考えて、より強度に特化して考えた規格が定められたものです。
以前は、一般構造用圧延綱といわれる材料が使われていました。しかし、今までのものでは地震が発生したときにボルトが切り離されてしまったり、ナットが抜けて建物と基礎のつなぎが離れてしまったりすることがあり、安全性は不十分だと考えられました。
ゆえに、より地震による引っ張り力に耐えることができる新たな規格の建築構造用圧延棒鋼が使われるようになりました。これが「ABR/ABM規格」のアンカーボルトです。
ABRのアンカーボルトは、地震の揺れによってアンカーボルトに力が加わったときに、ボルトが変形してしまわないように作られました。
また、ABMアンカーボルトにはネジ山が細かく、ギザギザが多いものを使い、基礎や土台にしっかりかみあうように作られ、抜けにくい構造になりました。さらに、アンカーボルトの最後に取り付けるナットなどが簡単に外れてしまわないように、硬く締まるように加工されています。
このように、ABR/ABM規格のアンカーボルトは耐震性が高く、より優れたアンカーボルトとして、使用を推奨されるようになりました。
もしアンカーボルトに施工不良があったらどうなる?
もし、工事の段階でアンカーボルトに施工不良があった場合は、どのような問題が発生するのでしょうか?アンカーボルトが設置されている部分が不適切であったり、入れ込みの長さが正しくおこなわれていないなどの工事の不具合は、地震で建物が倒壊しやすくなるという悪影響を及ぼします。
アンカーボルトとは耐震を高める大切な部品なので、正しく設置されているかどうかは以下のことに気をつけて見てみてください。
・埋め込みの長さと、基礎や土台から出ている長さは適切か
アンカーボルトが基礎や土台に埋め込まれているとき、どれくらいの長さが出ていなければいけないかが土台の厚みなどによって変わり、それは計算によって求められます。出ている部分が長すぎても短すぎても、アンカーボルトは本来の役割を十分に発揮できません。
・設置する位置が大きくずれていないか
アンカーボルトを設置する場所が土台や基礎の芯からずれていても、アンカーボルトが外れてしまう危険性があります。
・Zマーク、もしくはDマーク表示があるか
アンカーボルトには、「Zマーク」や「Dマーク」と呼ばれるものが記載されています。
Zマークとは、(財)日本住宅・木材技術センターの中で揺れによる弾性や耐性、破損の危険性がないとされるもの、確実に提供できるものにつけられたマークです。
また、Dマークとは各社のオリジナル商品で、Zマークの規格と同等以上で、安定して提供できるものにつけられたマークです。
ZマークやDマーク表示の金物を使用していないものも品質や性能が不十分とされます。アンカーボルトを選ぶ際は、ZマークやDマークに注目して選びましょう。
耐震性を高める「あと施工アンカーボルト」について
あと施工アンカーボルトとは、現在建っている建物の柱や梁、壁などのコンクリート部分に穴をあけて、アンカーを埋め込み、追加材を取り付けて耐震性を高めるものをいいます。あと施工アンカーを取り付けることによって、建物内や屋外に設けた機器の転倒を防止したり、設備上必要な配管を天井からつるしたりすることが可能になります。
また、強度がアップすることから、今までより耐震性を高めることにつながります。あと施工アンカーボルトには、通常のアンカーボルトと同じように金属系アンカーと接着系アンカーがあるので把握しておきましょう。
あと施工アンカーボルトの取り付けで注意しなければならない点は、新築では使用してはいけないということです。新築の物件では、建物が雨風や災害を受けたときに生まれる建物を維持しようとする「許容応力度」という力の限界値と、材料そのものが持つ外的な力に耐える「材料強度」を算出しなければいけません。
しかし、あと施工アンカーは、建築基準法による許容応力度や材用の強度などの規定が定められておらず、許容応力度が計算できないということになり、新築では使用できないとされています。
また、あと施工アンカーを使用することが認められている耐震補強や改修は、耐震改修促進法という法律の中で設計法が提示されています。この設計法は、すでに建設されている建物に対して適応されるため、やはり新築に対するものではありません。
まとめ
アンカーボルトとは、建物の耐震性を高めるためには欠かせない部品です。アンカーボルトを使用すれば、大きな地震によって家と地面が離れようとする力に耐えることができます。アンカーボルトを使用する際は、必ず品質や性能の優れた規格のものを使用しましょう。
また、既存の建物だけに使用できるあと施工アンカーボルトも、機器が転倒しないようにしっかり取り付けたりすることができる優れものです。アンカーボルトを上手く利用して、耐震性の高い家づくりをしていきましょう。
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